インバウンド特集レポート
日本政府観光局(JNTO)の統計によると、ここ数年、秋に日本を訪れる外国人が増えている。理由のひとつは紅葉だ。桜と同様、日本を彩る魅力である紅葉は、なぜ外国人観光客の心をつかむのだろうか。
Part1では、アジアからの観光客増加により、訪日する外国人の平準化が進んでいること、また、桜だけでなく紅葉も日本の魅力として広がっていることを紹介した。では、具体的にどのような紅葉ツアーが外国人の人気を集めているのか、Part2(本編)で見ていく。
人気の紅葉バスツアーは河口湖
日本の旅行大手クラブツーリズムは、2009年から、YOKOSO Japan Tourという外国人向けの国内バスツアーを催行しており、10月下旬から11月にかけては日帰りの紅葉ツアーが人気という。
同社のツアー客の国籍のトップは香港で、次いで台湾、シンガポール、マレーシア、タイ、最近はインドネシアが増えているという。これらアジア客をメインとした約20万人のメルマガ会員がいて、リピーターも多い。
担当者によると「以前は中華圏の旧正月時期や4月~5月が圧倒的に多く、秋は閑散期だったが、ここ数年はすごい勢いで増えている」という。実際、10月~12月のツアー客数が年々倍々ゲームで、「2017年10月~11月の予約数は前年同月比200%前後、同12月は300%強」だ。
なかでも人気があるのが、英語や中国語のわかる添乗員が同乗する河口湖への日帰りツアーだ。
英名:Departure guaranteed! Mt. Fuji & 5-Storied Pagoda “Arakurayama Sengen Park”・Sagamiko Illumillion・Koro-kaki no Sato (Village of Dried Persimmons)・Autumn Leaves in Lake Kawaguchi
日程は以下の通り。
ホテルグレイスリー新宿(8:10発)→新宿ワシントンホテル(8:30発)→<首都高・中央道>→(10:00)シャトー勝沼(10:30)【買い物・試飲30分】→ころ柿の里(10:50)【散策】→信玄館(12:20)【昼食】→(13:30)新倉山浅間公園(14:40)【散策70分】→(15:00)河口湖(16:00)【紅葉鑑賞60分】→<中央道>→(17:00)さがみ湖プレジャーフォレスト(18:00)【イルミネーション鑑賞60分】→<中央道・首都高>→新宿(19:00予定)
ツアー料金は、大人8900円、子供8600円、幼児5000円だ。
担当者によると「メインビジュアルは新倉山浅間神社。五重塔と富士山と紅葉という外国人が好む風景の組み合わせがポイント。昼食に松坂牛のローストビーフとほうとう鍋をつけているのも人気の理由」という。
日本人向け紅葉ツアーを外国人にも展開、アジアを中心に一躍大人気に!
同じく旅行大手のHISも外国人向けバスツアーを催行しているが、同社のイチ押しツアーも英語添乗員付きの河口湖への日帰りツアーだ。
コースは以下のとおり。
新宿→昇仙峡(秋めく渓谷美を観賞)→影絵の森美術館(世界初の影絵美術館で光と影のアートを鑑賞)→富士山五合目(ラストシーズン!標高2,305mの絶景散歩)→富士河口湖紅葉まつり(幻想的な河口湖もみじ回廊ライトアップの観賞)→新宿
ツアー料金は7990円~8490円だ。
HISの担当者によると「ポイントは幻想的な河口湖もみじ回廊のライトアップ。訪日客に定番人気の富士山5合目や今後人気が出てきそうな昇仙峡、影絵の森美術館など最新のスポットを入れている」とのこと。ツアーのハイライトである「もみじ回廊」の滞在時間はたっぷり約1時間半あるという。
どちらのツアーも1万円を切る手頃な料金で、日本人が普通に参加しても十分楽しめる内容だ。実際、日本人と外国人が一緒にバスに混載するツアーもあるという。日本の旅行会社は、これまで国内客向けに格安でバラエティ豊かなバスツアーを企画してきた。それをそのまま外国客向けに提供したところ、アジア客にウケたという話なのだ。日本人が感じるお得感は、彼らにも伝わるのだろう。
ただし、クラブツーリズムの担当者は「欧米客への訴求は同じようにはいかない」ともらす。旅に対する考え方が違うせいなのか、今後の検討課題だという。
これまで、日本観光コンテンツの一つである紅葉のツアーについて紹介してきた。では、日本を訪れる観光客は、どのようにして日本の紅葉に関する情報を得ているのか、Part3で詳しく見ていく。
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