インバウンドコラム
新型コロナウイルスで停滞していた世界の観光。その再開を、国連世界観光機関(UNWTO)が高らかに宣言した。香港の投資会社が世界200カ国の安全性のレポートによると日本は第5位と評価されている。米国ではロックダウンが解除された州でエアビーの予約が急速に回復しているという。世界の動きを紹介する。
UNWTO、ツーリズム再開のためのガイドラインを発表
国連世界観光機関(UNWTO)は6月4日、各国が少しずつ旅行制限の緩和を始める中、「The time has come to restart tourism!(観光を再開させる時が来た!)」と安全を重視した上での観光再開を提言した。
UNWTOは、新型コロナウイルスの危機から回復するための第一歩として、今後の観光業のあり方をまとめたガイドライン『UNWTO Global Guidelines to Restart Tourism(UNWTOグローバル・ツーリズム再開のためのガイドライン)』を発表。11)流動性の提供と仕事のの確保、2)安心とセキュリティに基づく信頼の回復、3)効率的な再開のための官民連携、4)責任ある国境の再開、5)調和性の取れた安全規格、6)新しいテクノロジーを通じた付加価値のある雇用の提供、7)ニューノーマルにおける革新性と持続可能性という、7つの項目を掲げている。
UNWTOのズラブ・ポロリカシュヴィリ事務総長はこのガイドラインを「観光を再開するためのグローバルな指標」であるとし、「観光を変革できるかどうかは私たちの手にかかっています。新型コロナウイルスによる危機は、サスティナビリティの転換点となるでしょう」と述べた。
世界200カ国の安全をランキング
香港の投資会社Deep Knowledge Groupは4日、250ページに及ぶレポート「Big Data Analysis of 200 Countries and Regions COVID-19 Safety Ranking and Risk Assessment」を発表した。世界200カ国・地域を対象とした同調査によると、「新型コロナウイルス安全な地域ランキング」1位はスイスで日本は5位となり、最も危険な国が南スーダンとなっている。このランキングは「Tier1(20カ国・地域)」「Tier2(20カ国・地域)」「Tier3(60カ国・地域)」「Tier 4(100カ国・地域)」の4つの階層に分けられ、日本は最も安全性の高い「Tier1」に分類されている。詳細はこちらの記事を参照されたい。
新型コロナウイルス安全な地域ランキング
1位 スイス
2位 ドイツ
3位 イスラエル
4位 シンガポール
5位 日本
6位 オーストリア
7位 中国
8位 オーストラリア
9位 ニュージーランド
10位 韓国
中国:国際旅客便を条件つきで緩和へ
中国の航空当局は現在、外国の航空会社1社につき1路線、週1便までの運航にとどめることを求めているが、乗客に対する新型コロナウイルスの検査で陽性者ゼロの状態が3週間続いた場合、週2便に緩和すると発表した。逆に1回の便で陽性者が5人出た場合は、翌週の運航を停止。10人以上出た場合はその後4週にわたって運航を停止するとの条件を付けた。
また、これまで国際便の運航が認められていなかった外国の航空会社に対しても、条件を満たしている場合は週1便の運航を認める方針を示した。
この緩和は、アメリカの運輸省が中国政府に対し、中国がアメリカの航空会社による中国便の再開を許可しない場合、6月16日より中国からアメリカへの旅客便を禁止するという強固な要求を公表した数時間後に発表された。
中国の航空当局はさらに、国際旅客便の受け入れ能力を備えた37都市(北京、常州、成都、大連、福州、広州、貴陽、哈爾浜[ハルビン]、杭州、合肥、呼和浩特[フフホト]、済南、昆明、蘭州、南昌、南京、南寧、南通、寧波、青島、泉州、厦門[アモイ]、上海、深セン、石家荘、太原、天津、温州、烏魯木斉[ウルムチ]、無錫、武漢、西安、延吉、長春、長沙、鄭州、重慶)も発表している。
外国の航空会社への運航制限緩和を受け、韓中の航空路線の回復にも期待感が高まっている。現在、韓国からは大韓航空、アシアナ航空、チェジュ航空がそれぞれ週1便運航しているが、今後は各社週2便に増やす計画を検討している。
大阪ユニバーサル・スタジオ、条件付きで再開
8日、大阪市にあるユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)が約3カ月ぶりに営業を再開させた。6月8日~14日の期間は大阪府在住で年間パスポートを持っている、事前予約した人に限る。15日からはすべての大阪府民、19日からは関西2府4県に住む人も入場できるようになる。いずれもオンラインでの事前チケット購入が必須となっており、マスクの着用を求める。
一方、韓国ではソウルの大型テーマパーク「ロッテワールド」を訪れた高校生に新型コロナの感染が確認され、7日は利用客の退場と営業終了の措置をとった。
イギリス:14日間の検疫スタートに不満の声
イギリスは、6月8日以降に入国する旅行者に対して14日間の検疫を開始した。しかし国内の航空会社3社(ブリティッシュエアウェイズ、ライアンエアー、イージージェット)は共同で政府に書簡を送り、この検疫措置は「イギリス市民およびイギリスに到着する海外からの訪問者に対して不均衡で不公平である」とし、「イギリスの観光業界に壊滅的な影響を及ぼす」と抗議した。さらに200社以上の企業が政府に書簡を送り、この措置を取り下げるよう求めている。
このルールは、スコットランドに居住する人や、フランス、ドイツから毎週イギリスに通う労働者などには適用されない。また、イギリスでは新型コロナウイルスによる死者数が4万人を超えているため、評論家は、イギリスよりも感染率が低い国からの旅行者に対して検疫を課すことが、どの程度有効であるのかという点に疑問を呈している。なお、検疫ルールの違反者には最高で1000ポンド(約14万円)の罰金が科せられるという。
アメリカ:エアビーの予約が急速に回復
オンライン旅行サイト世界最大手のExpedia Groupは、新型コロナウイルス感染拡大により打撃を受けたホテルや民泊などに対し、約300億円を拠出すると発表した。支援プログラムに参加する施設に対し、同社のプラットフォームで利用可能なマーケティングクレジットを還元したり、手数料を3カ月間10%引き下げたりするなどの措置をとる。
一方、3月に民泊のホストに対して約280億円の資金援助を行なったエアービーアンドビー(Airbnb)は、直近90日間の予約数が急速に回復している。アメリカの民泊データ分析企業「AllTheRooms Analytics」が発表した最新の予約データによると、アメリカでロックダウンを実施していない州や、早期にロックダウンが解除された州で予約数が急回復しているほか、ヨーロッパの一部の国でも改善の兆しが見られるという。AllTheRoomsのCEOジョセフ・ディトマソ氏は「カリフォルニア州やフロリダ州、ニューヨーク州などの大規模市場が再開すれば、2019年水準への回復が加速されるだろう」と述べている。
やまとごころでは、重点20市場における入国規制の状況を一覧にまとめています。
詳細はダウンロードしてご覧ください。
※最新版も更新されました
7/7 更新【新型コロナ:各国入国規制まとめ 】
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