インバウンドコラム

【コロナ:世界の動きまとめ】日本、水際対策を強化。台湾 シンガポール間でもトラベルバブル構築へ。欧州、変異ウイルス感染拡大で第3波

2021.03.24

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3月19日より日本への入国に72時間以内の検査証明書

日本政府は3月19日より、新型コロナウイルス感染症拡大防止の水際対策として日本人を含む全ての入国者に対して、出国前72時間以内に実施した検査に付随する陰性証明書の提出を義務付けた。これまでは、陰性証明書を持っていない場合、検疫所指定の宿泊施設で待機が求められ、入国後3日目の検査で陰性となった場合には、一定条件のもと宿泊施設から出ることが可能だった。しかし今回の措置では、検査証明書を提出できない場合、検疫法に基づき日本への上陸が認められない。そのため、空港でのチェックイン時に陰性証明書を持っていない乗客の搭乗を拒否するよう航空会社に要請することが定められた。

入国後14日間の自宅等での待機と、公共交通機関の不使用、位置情報の保存などの措置はこれまで通り継続されるが、新措置の実施に伴い、厚生労働省は「入国者健康確認センター」を設置。センターでは入国者の位置情報確認と、ビデオ通話での状況確認を毎日行うほか、3日以上連絡が取れない場合は見回りを実施する。また、日本入国時には、位置情報やビデオ通話、接触情報に関する4種類のアプリ(OSSMA、Skype、Google Maps等、COCOA)のインストールが求められる。

JALとANAには搭乗者を1週間でそれぞれ3400人以下に制限し、海外の航空会社には1便あたり100人までに制限するよう要請した。

日本政府は今年1月8日に「特段の事情がない限り」入国拒否対象国・地域からの入国を認めないことを決定し、その措置は現在も続いている。

 

シンガポール航空、「IATAトラベルパス」導入開始

シンガポール航空は3月15日、ロンドン行きの一部フライトでIATA(国際航空運送協会)が開発した「IATAトラベルパス」の試験導入を開始した。期間は3月28日までで、渡航者はアプリ上で顔写真、パスポート情報、フライト情報、新型コロナウイルスへの感染検査結果、ワクチン接種記録などを一元管理することができる。同パスの実証実験はこれが世界初となる。

 

ANA、国際便での「IATAトラベルパス」の実証実験実施を発表

日本のANAも3月10日、「IATAトラベルパス」の実証実験を国際線で実施すると発表した。出入国時にアプリの画面を提示することにより、スムーズかつ非接触で手続きを進めることができる。同社のプレスリリースによると、現在ANAを含む13の航空会社が同プロジェクトに参画し、実用化に向けた準備を進めているという。

 

日本、ワクチンパスポートの導入を検討

日本の河野太郎規制改革相は15日、海外渡航で必要な場合に新型コロナウイルス感染症へのワクチン接種証明書の発行を検討する方針を示した。EUなどでは、ワクチン接種を終えた人に域内の自由な往来を許可する証明書「ワクチンパスポート」の構想が進んでいるため、今後日本から渡航する際に証明書の提示が必要になる可能性がある。河野氏は、国内での使用は「考えていない」とした上で、「国際的に必要な状況になれば検討せざるを得ない」と述べた。日本政府は、証明書を発行するための接種記録システムの開発を進めている。

 

EUと加盟27カ国、ワクチンパスポートの準備作業を始める

欧州委員会は3月6日、ワクチンパスポートの準備作業を開始し、3月末までに法案を提出する方針を明らかにした。EUと加盟27カ国は今年の1月にワクチンパスポートの基本部分に関する一連の指針で合意していたが、同パスポートに導入する情報の種類などの詳細はまだ決まっていなかった。EUは夏のホリデーシーズンに向けてEU域内の国境を徐々に再開していくことを目指しているが、同委のフォンデアライエン委員長は、現実に発行されるまでに少なくとも3カ月かかるとの見通しを表明している。

 

韓国、スマホに保存できるデジタル証明書導入の方針

韓国の「新型コロナウイルス予防接種対応推進団」は15日、新型コロナワクチンの接種を証明するデジタル証明書を導入する方針を示した。これが実現すると、ワクチン接種を終えた人は、紙の証明書と同じ効力を持つデジタル版の証明書の発給を受け、自身のスマートフォンに保存できるという。

 

アメリカ、ワクチン接種推進でレジャー旅行需要が拡大

アメリカではワクチン接種が1億回を超え、移動制限の緩和などが相次いでいる。これに伴い、レジャー目的の航空便の予約が増加し、新型コロナウイルス感染拡大で打撃を受けてきた航空業界が最悪期を脱した可能性が示唆された。一方で、テレビ会議システムの普及でビジネス渡航需要は恒久的に回復しない可能性があり、米航空各社は生き残りをかけて、レジャー向けの路線に軸足を移しているという。米ブルームバーグ紙によると、米航空各社は米国の大都市からロンドンに向かう便や、米国のハブ空港とフランクフルト、東京、シドニー、サンパウロなどの主要ビジネス都市を結ぶ直行便を減らし、レジャー需要の高い国内の温暖な都市への直行便を増やす見通しだ。また、コロナ禍に米国の移民が母国へ帰ろうとする「ディアスポラ旅行」の需要も拡大しているという。これまでビジネス客を中心に受け入れてきた宿泊施設にも変革が求められることになりそうだ。

 

台湾、パラオとのトラベルバブル開始へ

台湾の中央感染症指揮センターは3月17日、パラオとの間で「トラベルバブル」を実施すると発表した。早ければ4月初旬にもツアー第1陣が出発することが明らかになった。相互に団体旅行を受け入れる方針で、個人旅行は引き続き禁止する。台湾とパラオは団体旅行者を乗せた航空機を週2便受け入れ、1便あたり110人までと規定。また、日程は入出境日を含めて最長8日間で、ツアーの内容は当局の許可を受けたものに限定される。これらのツアーは感染対策のために人手を確保したり、船やレストランの人数を制限したりすることでコストが高くなるため、旅行代金が最大で2倍以上になる可能性もあると指摘されている。

トラベルバブルを利用し海外へ旅行するには、(1)過去6カ月に海外渡航歴がないこと、(2)過去2カ月間に隔離措置や自主健康管理を受けていないこと、(3)過去3カ月間に新型コロナウイルス検査で陽性反応が出ていないこと、という3つの条件を満たさなければならない。

また、台湾はシンガポールとも「トラベルバブル」構築に向け協議中であることが明らかになった。台湾、シンガポールの両国は新型コロナウイルスの感染拡大を抑制できており、新規感染者は入国検疫で発見された症例が大半となっている。

 

タイ、ヨット内で隔離期間を過ごす措置が浮上

タイ観光庁はこのほど、旅行者が所有するヨットでプーケット島を訪れた場合、14日間の隔離期間をヨット内で過ごすことを推進する新たな措置を発表した。この制度を利用するには入国時にタイ当局による新型コロナウイルス検査を受けること、そしてその後体調に関するデータを追跡するデジタル装置を受け取り、常に装置を装着し、海岸から10キロ以内にいることが条件となる。医療関係者はこの装置を通じて入国者の脈拍や血圧、体温を確認するという。

タイ政府はこれまでにも、保健省が認可したゴルフ場で生活を続ける「ゴルフ場隔離措置」も実施し、3月7日には最初のグループ42名が隔離期間を終えてタイ国内を自由に移動できるようになった。

現在同国では、入国・帰国時に14日間の隔離が義務付けられているが、4月から一定条件をクリアすれば7日間に短縮する案が検討されている。

 

欧州、変異ウイルス感染拡大が深刻化

欧州では新型コロナの変異ウイルスにより、感染の第3波が起きているという。フランスは3月20日から首都パリを含む地域で4週間のロックダウンを実施し、イタリアも15日から首都ローマやミラノ、ベネチアなどの主要都市を含む全国半数以上の州でロックダウン措置を講じている。イギリス由来の変異ウイルスによる感染拡大が深刻化しており、フランスでは1日の新規感染者が3万5000人を超え、イタリアも連日2万人を超えている。カステックス仏首相は18日の記者会見で「感染力や毒性の強い英国型がフランス国内の新規感染の4分の3を占めている」と説明した。ドイツでも2月中旬から感染者数が増え、現在は1日の新規感染者が約1万人となっている。

 

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