インバウンドコラム
台湾、感染拡大で防疫レベルを第3段階に引き上げ、外国人は入国停止
新型コロナウイルス感染症対策で、これまで「優等生」と評価されてきた台湾だが、5月に入って感染者が急増している。中央感染症指揮センターは5月19日、域内感染が5日連続で100人を超えたことを受け、台湾全域の防疫レベルを第3段階(レベル3)に引き上げた。感染拡大の背景には英国型変異株の影響があると見られており、5月19日から1カ月間、台湾の居留証を持たない外国人の入国を停止している。台湾の新規感染者数は、4月まで1日数人程度に留まっていたが、5月に入って急増し、5月23日には287人となった。
感染症指揮センター、防疫レベル4引き上げの条件を提示
レベル3に引き上げられた台北市と近郊の新北市では、外出時にマスクの着用が義務付けられたほか、勧告に従わない場合は3000〜1万5000台湾ドル(約1万1700円〜5万8000円)の罰金が科せられる。また、不要不急の外出自粛、屋外で10人以上、屋内で5人以上の集会が禁止となる。中央感染症指揮センターの陳部長は5月19日、防疫レベルをレベル4に引き上げる条件は、14日間に域内感染者数が1日平均100人以上増加し、その半数以上が感染経路不明だった場合と説明した上で、まだ引き上げる段階ではないとの見解を示した。最も厳しいレベル4に引き上げられると、出勤停止や休校、不要不急の外出禁止などの措置がとられる。
台湾全土で授業オンラインへ切り替え、台北市と新北市で店内飲食を禁止
感染拡大に伴う具体的措置として、台湾全土では15日から28日までの間、全国の娯楽施設(展示場、映画館、体育館、コミュニティーセンター、劇場、美術館など)が閉鎖。幼稚園から大学までの全教育機関の対面授業も19日から28日まで停止し、オンラインでの学習に切り替えている。台北市は15日より、ダンスホール、酒接待飲食店、バー、ナイトクラブ、カラオケ、サウナなどの営業停止を命じている。また、台北市と新北市は20日、市場や夜市などでの飲食を禁止し、24日には飲食店などでの店内飲食も全面禁止とした。
IT大臣オードリー・タン氏、行動・接触歴追跡システムを3日で開発
台湾当局はこれまで、行動歴や接触歴を追跡する対策として、入店時に名前や電話番号などの登録を義務付けるシステム「実聯制」を実施してきたが、各店がそれぞれに導入していたため、統一されたシステムがなかった。しかしIT大臣のオードリー・タン氏は19日、個人情報を店に提供することなく、当局のホットラインに携帯電話のショートメッセージ(SMS)を送るだけの新システムを開発したと発表。操作は「5秒以内で完了する」と紹介され、オードリー・タン氏がこの仕組みをわずか3日間で開発したことでも注目を集めている。
病床ひっ迫で、軽症者と無症状者を集中隔離施設へ移送
中央感染症指揮センターは5月16日、感染の急拡大を受け、台北市の陰圧機能がある病床が逼迫しているとし、軽症者は自宅で待機するよう求めた。また、台北市では2カ所の病院を新型コロナウイルス感染症の患者を受け入れる専門病院に指定した。市内の病院に収容されている軽症者や無症状者を集中検疫所(集中隔離施設)に移送し、病床の確保を図ると発表した。集中検疫所には24時間体制で医療スタッフを配置し、患者の状況を随時確認しながら看護を行う。新北市は17日に、仮設病院の設置を検討していると発表した。新北市、台南市などでは、簡易検査場に人々が殺到したため、増設する動きも出ている。
ワクチンの確保と、接種体制の構築が課題に
感染拡大が懸念される中、ワクチン接種が急がれるが、5月21日までにワクチンを少なくとも1回接種した人は約30万人と、人口(2357万人)の1.2%にとどまっている。台湾ではワクチンの供給量が不足しており、コロナワクチン供給の国際的な枠組み「COVAX」などを通じてワクチンの確保を急いでいる。一方で、台湾域内の製薬会社もワクチン開発を進めており、7月末までには供給が始まるという見通しを示しているが、順調に接種が進められるかどうかが今後の課題となる。
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