インバウンドコラム

東京五輪控え選手へのワクチン接種進む、豪州の選手団一足早く入国。”五輪開催”問題を報じる海外メディア

2021.06.02

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6月1日、五輪選手団の第一号、オーストラリアから入国

新型コロナウイルス感染症の影響で1年延期となった東京五輪。現在のところ7月23日からの開催が予定されており、海外からの五輪選手団がこのほど日本に初めて入国した。第一号となったのは女子ソフトボールのオーストラリア選手団で、6月1日に入国した後、群馬県太田市に滞在し、大会に向けた事前合宿を行う。選手やスタッフ全員が来日前にワクチン接種を済ませ、滞在期間中は毎日PCR検査を実施するという。また、選手は宿泊先のホテルと野球場の往復以外は外出を自粛する。

 

日本への渡航「中止勧告」に引き上げた米国、選手派遣の影響はないとの見解

米国務省は5月24日、日本国内での新型コロナウイルス感染症の状況が悪化したことを理由に、日本に関する渡航情報を4段階で最も厳しい「渡航中止の勧告」に引き上げた。一方、米国オリンピック・パラリンピック委員会は声明を発表し、東京大会への選手団の派遣に影響はないとの見解を示した。バイデン大統領も、日本政府の努力を支持するとしている。米大統領報道官は、米国からの選手団派遣に関して「厳しい手続きを経て渡航する限定的な枠」で日本に渡航すると述べている。

 

各国、地域で代表選手へ進むワクチンの優先接種

タイやブラジルなど、世界各国でも五輪代表選手への新型コロナウイルス感染症ワクチンの優先接種が進んでいる。

タイでは3月から代表選手の優先接種がスタートしているが、世界的に感染が終息していない中での大会開催への不安も広がっている。ブラジルでは5月12日から代表選手への優先接種が始まった。同政府は、東京五輪・パラリンピックに出場する選手やコーチら1814人に対し、接種を進めていくと発表しているが、一方で累計死者数が42万人を超え、感染の第2波が終息していない中での優先接種に批判の声も上がっている。フィリピンでも5月28日から東京オリンピックに出場する選手やスタッフへの優先接種が始まっている。

 

EU・イギリス首脳は五輪開催の支持を表明

EUの首脳は5月27日、東京五輪・パラリンピック開催への支持を表明した。海外メディアは、ワクチン接種をした日本人の割合がごくわずかであることや、日本国内の世論調査では五輪の中止を60%〜80%が望んでいるなどといった状況に触れた上で、日本とEUの両首脳が共同で「新型コロナウイルス感染症に打ち勝つ世界の団結の象徴として、安全・安心な形で五輪を開催することを支持する」との声明を発表したと報じている。

英国のジョンソン首相は5月28日、日本の菅首相と電話会談し、五輪開催を支持しているとの考えを示した。菅首相はこの電話会談で、安全・安心な形で東京五輪・パラリンピックを開催するとの決意を伝えている。中国の習近平国家主席は5月7日、IOC(国際オリンピック委員会)のバッハ会長と電話会談し、習氏は「IOCと力を合わせて東京五輪の開催を支援したい」と述べている。また、2022年の北京冬季五輪についても「着実に準備を進めている」とアピールした。

 

韓国の世論「五輪を中止すべき」が78%

一方、韓国では開催を中止すべきだとの声も上がっている。韓国の世論調査会社リアルメーターが5月24日に発表した意識調査によると、東京五輪を「中止すべきだ」と答えた人が78.2%に上った。一方、「開催すべきだ」は13.4%、「分からない」は8.4%だった。年齢や地域に関係なく、東京五輪を中止すべきだという回答が多かったという。

 

日本の”オリンピック開催”問題を報じる海外メディア

日本への「渡航中止の勧告」を出している米国では、もし東京五輪が中止になれば、同国が来年の北京冬季五輪ボイコットに乗り出すとの見方もある。その背景には、新型コロナウイルス感染症の流行拡大を防げなかった中国が「人類による新型コロナウイルス感染症克服の象徴」として五輪を開催することは適切ではないとのムードが高まっているからだ。

米『ブルームスバーグ』は、渡航中止勧告が、「五輪の開催に向けて、国民や国際社会の説得に苦労している日本にとって、新たな打撃になるだろう」と伝え、豪『オーストラリアン』紙も、「東京五輪を中止すべきでないと自国民に納得させようとする日本政府の希望に対する深刻な後退だ」と報道している。米国では、公衆衛生の専門家らがまとめた、東京五輪・パラリンピックでの新型コロナウイルス感染症対策が不十分だとする論文が医学誌に掲載された。論文には、大会の1年延長を決めた昨年よりも感染が広がっていると指摘し、日本のワクチン接種率は人口のわずか5%で、経済協力開発機構(OECD)加盟国で最も低いと書かれている。

 

IOC、五輪関係者にワクチンを無償提供

日本でワクチンを少なくとも1回は接種した人の割合は、5月27日時点で人口の約6.4%、接種を完了した人の割合は人口の2.4%となっている。先進国の集まりである経済協力開発機構(OECD)加盟37カ国中、最下位であることが海外メディアでも報じられている。そうした中、IOCは5月上旬、東京大会に参加する各国・地域の選手団に米ファイザー製のワクチンを無償提供すると発表。日本オリンピック委員会(JOC)は5月26日、6月1日から日本選手団らへの接種を本格的に始めることを明らかにした。

開催まであと2カ月を切った今、来日する約9万4000人の五輪関係者の感染対策をいかに講じていくかが課題となっている。

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