インバウンドコラム
東京五輪23日に開幕。第5波への懸念高まる中、異例の無観客で実施
日本では、今週23日に東京オリンピックの開会式が行われ、17日間にわたる大会が幕を開ける。
開催地の東京都では、新型コロナウイルス感染症の再拡大による第5波の兆候が見られる中、7月12日に4度目の「緊急事態宣言」が発令され、大会期間すべてが宣言の時期に含まれることとなった。しかも、宣言発令後も新規感染者が連日1000人超えを記録するなど、感染の急拡大に歯止めがかからない状況となっている。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で1年延期となった同大会は、開会式を含めほとんどの競技が無観客で行われるという異例の状況下で実施される。
そんな中、国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長は7日8日、フランクフルト発の定期航空便で羽田空港に到着。3日間の待機期間を経て、東京五輪組織委員会とともに最終準備に当たっている。都内では7月16日、中央区晴海の選手村と大会組織委員会の近くでオリンピックの中止を求める抗議デモが行われ、約120人が集結。参加者は「感染拡大を抑えることが優先だ」と訴え、「ストップ東京オリンピック」と抗議の声を上げた。バッハ会長を招いた歓迎会が行われた7月18日にも、会場となった迎賓館の周辺でオリンピック中止を求める人たちが集まり、「オリンピックより命を守れ」などと訴えた。
オリパラ経済効果、訪日客による需要創出は当初想定の1-2割との見方
7月17、18日に朝日新聞が実施した世論調査では、大会開催に「反対」が55%で、政府が主張する「安全、安心の大会」には「できない」が68%に上るなど、コロナ禍の五輪開催に対する国民の懸念が浮き彫りになっている。
ロイターは、2030年までに12兆円と東京都が見込んでいた東京オリンピック・パラリンピックの需要押上効果(レガシー効果)は、コロナ禍の大幅な規模縮小により前提が崩れたと報じた。最も期待された訪日外国人の増加による需要の創出は1、2割程度にとどまり、感染再拡大で大会運営に影響が出れば、レガシー効果はむしろマイナスになるとの見方が出ているという。
大会関係者の入国ピークを迎え、空港では「バブル方式」に懸念の声
東京オリンピック開幕まで秒読みとなった18日、成田空港では海外からの選手や関係者の入国がピークを迎え、これまでで最も多い約2500人が到着した。日本政府は、外国人選手や関係者と一般の人との接触をなくす「バブル方式」と呼ばれる対策や、水際対策を徹底する方針を示している。しかし、実際の空港では選手や関係者は、一般客が行き交うロビーなどを移動したり、同じエスカレーターを使ったりせざるを得ない状況にあり、その際にファンが近づいてサインをもらったり、マスクを外して写真撮影をしたりする姿も見られるため、“穴だらけ”の「バブル方式」に対する懸念の声が上がっている。
入国時の検査で陰性だった場合、選手や関係者は事前合宿先のホテルや選手村に入ることができるが、7月18日には選手村に滞在する選手2人が陽性となり、同日に新たなに陽性が判明したオリンピック関係者は計10人に上った。前日の17日には、選手村の1人を含め、関係者の計15人の陽性が確認されている。
オーストラリアの五輪代表選手団は、最新版「プレーブック」の規定を守らない人が多く、最も怖いのは新型コロナウイルスが選手村にはびこることだと指摘し、シンガポール選手団も、「あのプレーブックでは不十分だ」との見解を示した。また、中国選手団からは、セーリング代表が一般客との接触を余儀なくされているとして、滞在するホテルの感染対策が不十分だとする不満の声が上がっている。
海外メディア、五輪の強行開催に批判の声
東京オリンピックが首都圏で無観客での開催となったことを受け、アメリカメディアは「感染者の急増が計画を覆した」と日本国内の混乱ぶりを伝えている。オンラインメディアの「アクシオス」は14日、米公衆衛生学会の権威が発表した論文を取り上げ、「東京オリンピックが新型コロナウイルス感染症のスーパースプレッダーイベントになる可能性がある」と解説した。米紙『ワシントン・ポスト』電子版は17日、東京五輪についてこれまでのところ「完全な失敗に見える」と指摘し、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で国民に懐疑論が広がり、五輪への熱気が敵意にすら変わっていると報じた。また無観客開催が決まったことで経済効果も期待できないと報じている。
米CNN局は、無観客の決定について「一部のアスリートにとっては大きな失望となりそうだ」と報道。一方で、『CNN』電子版は、同局の医療アナリストであるウェン博士の「パンデミックの現状や、(日本の)ワクチン接種率の低さを考えれば、 (無観客の決断は) まさに正しい」との見解を掲載した。
仏『リベラシオン』紙は、「感染症が蔓延する中でオリンピックを迎える日本人の気持ちを想像すべき」とし、英『デーリー・メール』紙も、感染が深刻化している東京で開催が強行されようとしている五輪について「お金のためのオリンピック」とし、大会主催者を痛烈に批判した。
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