インバウンドコラム

ゼロコロナ維持の中国 ロックダウン解除の上海再び警戒も、端午節連休の国内観光客は大幅回復

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世界の国々が新型コロナウイルスとの共存を選び、規制緩和を進めるなか、中国の上海市では2カ月以上にわたる厳格なロックダウンが実施され、注目を集めた。この強固な体制に市民が不満を募らせるいっぽう、習近平国家主席は6月9日、「ゼロコロナ政策を揺らぐことなく堅持する」と発表し、新型コロナウイルスの根絶を目指して外出制限や大規模検査、強制隔離を続けている。今回は、再ロックダウンへの懸念が広がる上海、北京を中心に、中国の動きをお伝えする。

 

上海、2カ月ぶりにロックダウン解除も、再ロックダウンへの警戒高まる

中国・上海市では6月1日、2カ月以上続いていたロックダウンが解除された。これにより、一部地域を除き、上海市の人口の約9割に当たる約2250万人が自由に移動できるようになり、公共交通機関の基本サービスや、店舗の営業も再開された。

ただし、自宅の敷地や建物を出て他の場所へ出向く際は、72時間以内のPCR検査の陰性証明書や、体温検査、健康アプリなどの提示が求められるなど、新たなルールが導入されているという。また、中リスク地区になると毎回、48時間以内の陰性証明が必要になるが、結果が更新される時間が一定ではないため、実質毎日検査をしているような状態だそうだ。

 ▲上海街頭のPCR検査待ちの行列。検査は手軽に受けられる

ロックダウンが解除されたばかりの上海市中心部の閔行区(びんこうく)では、新型コロナウイルス感染のリスクを検知して管理するために、6月11日から再びロックダウンが導入された。このほか、6月11日からの2日間にわたり、人口の約半数にあたる市民1400万人以上を対象に大規模なPCR検査を実施した。検査を徹底するため、市内の大半が封鎖され、レストランは店内での食事の提供停止を余儀なくされたという。前回のロックダウンで食料の調達などに苦労した市民の間では、大規模な再ロックダウンへの警戒が高まっている。

なお中国ではロックダウン解除直後の6月3日(金)〜5日(日)に端午節の3連休に入り、上海市内の繁華街や観光地はにぎわいを取り戻した。連休中はショッピング施設やキャンプに関する検索が急増したという。一方で、端午節連休中の市外への旅客輸送量は前年同期比92.8%減の延べ11万1600人だった。連休中は上海市内で休暇を満喫した人が多かったようだ。

 

北京、クラスター発生で再び大規模検査。学校再開は延期

北京市では5月に1日当たりの新規感染者が数十人に上ることもあり、市全域でのロックダウンの懸念が広がっていた。しかし、大規模検査や的を絞った対策でロックダウンを回避し、6月6日には大半の地域で公共交通機関が運行を再開し、飲食店の店内飲食も1カ月ぶりに認められるなど日常生活を取り戻し始めた。また、5月1日から一時休園していたユニバーサル・北京・リゾートも、6月15日から入場者を75%に制限して営業を再開すると発表している。

北京市文化観光局によると、今年の端午節連休に市内の主要観光地を訪れた人は前年同期比57.6%減の延べ191万2000人で、観光収入は前年同期比51.9%減の1億3,197万4,000元(約26億円)だった。しかし、端午節連休後の6月6日には、北京市内の旅行会社による市民向けツアー旅行が再開され、この情報が伝わると同時に、中国の大手OTA「携程(シートリップ)」のプラットフォームでは、北京観光ツアーへのアクセスが2倍以上になったという。また、6月6日から12日にかけての北京市内観光の予約数が前週よりも14%増加するなど、観光回復の兆しがみられていた。

しかし、北京市内にある人気のバーで9日から13日までに200人以上の感染者が出るクラスターが発生したため、大規模検査を再開。6月13日には学校を再開する予定だったが、これを遅らせるなど、再び見通しが立たない状況となっている。

 

端午節連休の国内観光客数、パンデミック前の8割まで回復

上海や北京などの大都市では再びロックダウンの懸念が高まっているが、中国本土の1日当たりの新規感染者は100〜200人程度で推移している。中国の文化・観光部データセンターの試算によると、今年の端午節連休には、全国の国内観光客数が延べ7961万人となり、パンデミック前の2019年同期比で86.8%まで回復した。国内観光収入は258億2000万元(約5130億円)で、2019年同期比で65.6%まで回復している。ただし、いずれも感染者が少なかった昨年と比較すると10%以上の減少となっている。

端午節連休の観光では、端午節の伝統や風習に関するものが人気で、ドラゴンボートレースやちまきづくり、香り袋づくりなどの体験型イベントが多くの地域で開催されたという。また、新型コロナウイルス感染拡大以降、中国の消費者の間では短時間、近距離を特徴とする旅行スタイルが主流となっている。そのため、今年の端午節でも、民俗風習体験のほか、地元周辺でのレジャーやドライブ、キャンプ、ピクニック、果物狩りなどが人気だった。

 

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