インバウンドコラム
世界各国で新型コロナウイルス対策の入国規制が緩和される中、東アジアは遅れをとってきたが、ようやく6月に日本と韓国も外国人観光客の受け入れを再開した。新型コロナウイルス感染拡大前の2019年には、韓国で日本製品不買運動(ノー・ジャパン)が広がっていたにもかかわらず、韓国からの訪日客は中国に次ぐ2位。韓国は日本のインバウンドにとって非常に重要な市場となっている。今回は、旅行熱が再燃している日韓両国のインバウンド、アウトバウンドの視点から、現在の状況を見ていく。
韓国、約2年ぶりに観光ビザの発給を開始。6月8日からは全ての入国者を対象に隔離免除
韓国政府は6月1日から、個人観光客向けの観光ビザの発給を再開した。約2年3カ月ぶりに韓国への旅行が可能となり、日本各地の韓国大使館領事部にはビザを求める日本人の長い行列ができた。こうした中、韓国大使館は6月20日より一般ビザ発給の運用を見直し、1日あたりの申請者数をこれまでの200人から「300人」に拡充し、ビザ発給の所要時間をこれまでの2週間から「1〜2週間」に短縮した。
韓国保健福祉部は6月3日、全海外からの入国者に対し、6月8日からワクチン接種の有無や国籍にかかわらず、隔離義務を免除すると発表した。一方、入国後のPCR検査は引き続き実施され、検査で陽性となった場合は隔離措置が適用される。現在、韓国に入国する際は、渡航前48時間以内に実施したPCR検査または24時間以内の抗原検査による陰性証明書の提出が必要なほか、入国後3日以内にPCR検査を実施する必要がある。
韓国観光公社、日本のメディア関係者を招いて韓国視察旅行を実施
日韓両国が外国人観光客に対して門扉を開いたため、日韓航空路線は今後拡大する見通しだが、ビザ取得の問題のみならず、燃油サーチャージや航空券の価格上昇などもあり、韓国旅行を計画する人は限定的なようだ。韓国空港公社は、国際線の需要が新型コロナウイルス感染拡大前の水準に回復するのは、2023~24年になると予測している。
韓国観光公社(KTO)は日韓両国の出入国規制緩和を受け、日本全国から新聞やテレビ、雑誌などのメディア関係者約30名を招聘し、韓国視察旅行を行った。日程は6月15日(水)から19日(日)までの5日間で、コンセプトは「韓国の韓流及び新規観光コンテンツ」。韓流ドラマのロケ地を訪れたり、3年ぶりに開催されたK-POPイベント「ドリームコンサート」を鑑賞したりするなど、韓国観光の魅力を日本の関係者にPRした。
5月の訪日韓国人客、8800人。相互「ノービザ」に期待
2022年5月の訪日韓国人客は8800人で、前年同月比では826.3%増となった(JNTO発表の推計値)。韓国から日本へ入国する際は依然としてビザを申請する必要があるが、日本政府は6月10日から訪日観光客の受け入れを再開したため、今後はさらなる増加が期待できそうだ。
韓国では日本旅行熱が再燃しており、韓国大手旅行会社「ハナツアー」では、5月30日から6月5日までの日本行きパッケージツアーの予約数が、直前の1週間に比べて284%増えたという。一方、日本政府が「外国人観光客の受入れ対応に関するガイドライン」を発表したのは訪日観光客受け入れ再開の3日前となる6月7日だったため、韓国の旅行会社はガイドラインに沿って旅行商品を作り直す必要に迫られた。このほか、韓国へ帰国する際も渡航前48時間以内に実施したPCR検査による陰性証明書が必要となるため、ツアー日程に合わせて団体客を受け入れてくれる日本の検査業者を見つけなければならないなど、対応に追われているという。
日本政府は現在、入国者数の上限を1日2万人として、パッケージツアーのみを受け入れているため、日本旅行へのハードルは依然として高い。「ノービザ」での入国再開と個人旅行客の受け入れが解禁されれば、日本旅行への需要は急伸するものとみられている。
ちなみに、7月1日から、香港人は韓国へはビザなしで入国できるようになる。これは香港側が5月1日に非居住者のビザ無し入国を許可したためだ。ビザ免除は相互主義が基本のため、韓国は日本との間でもノービザ訪問の再開を希望している。
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