インバウンドコラム
東南アジア諸国の中でもいち早く国境を再開し、インバウンド誘致に戦略的に取り組んできたタイでは、観光業の回復が進んでいる。新型コロナウイルス感染拡大前の2019年、タイの外国人観光客は約3980万人で過去最高を記録し、国際観光収入は1兆9334億バーツ(約7兆1920億円)に達していたが、現在はどの程度まで回復しているのだろうか。ここでは、タイの現在の状況と今後の展望などについて紹介する。
タイ、入国規制緩和とキャンペーンで外国人観光客の誘致を促進
段階的に入国規制の緩和が進められているタイでは、ワクチン接種済みの外国人観光客が入国する際は、渡航前のPCR検査や入国後の隔離が不要となっている。ワクチン未接種でも渡航の72時間前に実施した検査による陰性証明書を提示すれば、隔離なしの入国が可能だ。7月1日からは、タイ渡航前に申請が必要だった「タイランドパス」も不要となり、外国人観光客にとってはより入国しやすくなった。
さらにタイ国政府観光庁は「Visit Thailand Year 2022」キャンペーンを打ち出し、外国人観光客の誘致に乗り出している。タイの観光・スポーツ省によると、1月1日から6月28日までにタイに入国した外国人観光客は約197万8000人で、国際観光収入は約1140億バーツ(約4240億円)だった。空路で入国する観光客はインド、シンガポール、マレーシア、ベトナム、米国が多く、陸路で入国する観光客は、マレーシア、ラオス、カンボジア、ベトナム、中国が多かった。2022年下半期には700万人以上の外国人観光客と、約1兆2700億バーツ(約4兆7238億円)の国際観光収入が見込まれるという。
MICE旅行者の回復も順調で、タイ会議・展示会事務局の発表によると2022年度(2021年10月〜2022年9月)のMICE旅行者は613万人で、MICEによる収入が284億バーツ(約1056億円)に上る見通しだ。
タイ国政府観光庁は2023年について、外国人観光客は3000万人に達し、国際観光収入は最大で2兆3800億バーツ(約8兆8460億円)に達するとの見方を示している。国内観光にも注力し、5つの地域ごとにテーマを設け、各地域の魅力を発信する観光キャンペーンを打ち出すという。
タイの団体ツアー客、およそ2年3カ月ぶりに日本各地を訪問
日本は6月10日より外国人観光客の受け入れを条件付きで行っているが、6月にタイを含むASEAN(東南アジア諸国連合)から訪日した旅行者は4万900人。そのうち、タイからは2500人だった。
現在は添乗員付きの団体ツアーのみ受け入れているが、日本の地方都市にもおよそ2年3カ月ぶりにインバウンド客の姿が見られるようになった。茨城県の大洗町やひたちなか市には7月7日、タイからの団体ツアー客76人が訪れ、県職員らが歓迎の横断幕やタイ国旗を持って迎え入れた。群馬県みなかみ町にも7月16日にタイからの団体ツアー客12人が到着した。福島県でも7月、タイからの団体ツアー客が同県を代表する観光地を巡った。九州には、タイの旅行会社の担当者やメディア関係者、合わせて13人が訪れた。日本の入国規制緩和を受け、タイの旅行会社では九州をめぐるツアーを企画するために大分県の別府や熊本県の阿蘇などを視察したという。
タイ国内、「BA・5」の流行で警戒強まる
タイ国内では現在、オミクロン株派生型「BA・5」が流行の兆しを見せており、当局は警戒を強めている。「BA・5」が1日当たりの感染者の半数近くを占めているバンコクの首都庁は、都内69カ所の公衆衛生センターを土曜日も稼働させ、金曜日と土曜日には予約なしで接種できるワクチンブースを設ける。また、都内2カ所に計500床を有する軽症者向けの仮設医療施設を開設した。また、7月22日には、観光地プーケットで国内初となるサル痘の感染者が報告されている。
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