インバウンドコラム
世界各国で新型コロナウイルスに関する入国規制の緩和が進む中、韓国でも日本からのビザなし入国を期間限定で認めるなど、規制緩和の動きが加速している。日本も9月7日から、ワクチン3回接種を条件に入国時の陰性証明を免除し、添乗員なしのパッケージツアーを受け入れるなど、緩和の動きは見られるが、現在のところ韓国を含めたビザなし入国や個人旅行は認めていない。今回は韓国における入国規制緩和の状況や、国内外への旅行需要などについて紹介する。
大規模イベントへの観光客誘致を視野に、ビザなし入国を10月末まで延長。
韓国政府は8月4日から8月末までの期間限定で日本、台湾、マカオの3カ国・地域からの観光客を対象にビザなしでの入国を認める制度を導入していたが、この措置を10月末まで延長した。さらに、9月3日からは入国者全員に義務付けていた入国前の新型コロナウイルス検査を撤廃。ただし、入国後24時間以内に韓国で受けるPCR検査は引き続き義務付けられている。
韓国政府はビザなし入国の延長について、この1か月間で観光客の増加に一定の効果があったためとしている。このほか、ビザなしの入国延長の理由には、9月と10月に様々な大規模イベントが控えていることもある。この2か月間で開かれる国際行事は、韓国文化祭り(9月30日~10月8日)、2030釜山世界博覧会の誘致を祈願するBTSのコンサート(10月15日)、釜山国際映画祭(10月5日~14日)、釜山ワンアジアフェスティバル(10月27日〜10月30日)、ソウル国際トラベルマート(9月27日~10月1日)など目白押しだ。
入国前の新型コロナウイルス検査の撤廃は、世界的に入国時の陰性証明書の提出を求めない国が多くなっていることや、新型コロナウイルス感染症による重症化率が減少していること、国内の観光業界などが強く求めていたことなどから、実施に踏み切ったという。
7月の訪韓外国人客数は、昨年の3.2倍に増加
韓国観光公社が31日に発表した統計によると、7月の訪韓外国人客数は26万3986人で、前年同月(8万3005人)の3.2倍に増加した。国籍別では、多い順から米国(5万3942人)、ベトナム(1万8867人)、フィリピン(1万8146人)、中国(1万7907人)、タイ(1万6808人)で、米国やタイはビザなしの渡航が以前から可能となっている。日本からの観光客は1万1789人で、前年同月の約13倍となった。
一方、7月に海外へ出国した韓国人は67万4022人で、前年同月の6.6倍となった。韓国のアウトバウンドは2019年実績では月平均230万人程度あったため、まだまだコロナ前の水準には遠いことがわかる。
さて、7月のアウトバウンド数のうち、訪日した韓国人旅行客数は2万400人で、訪日客数としてはベトナム(2万2700人)に次ぐ2番目の多さだった。ただし、コロナ禍前の2019年同月(56万1675人)比では、96.4%減となっている。
韓国の旅行大手ハナツアーでは、日韓両国の政府が水際対策を緩和したことで、10月以降の日本旅行の問い合わせが急増しているという。
秋夕連休、多くの韓国人が国内旅行を検討
韓国の旅行・レジャー情報プラットフォーム「ヨギオッテ」は8月26日、自社アプリのユーザー607人を対象に実施した調査の結果を発表した。それによると、今年9月9日〜12日の秋夕(中秋節)連休に旅行を計画している人の97.4%は国内旅行を検討していると回答した。その理由で一番多かったのは、「海外旅行をするには連休が短いため」で55.8%、次いで「新型コロナウイルスの感染再拡大」が33.2%、「海外旅行費用が負担になるため」が22.8%の順だった。昨年の秋夕に旅行に出かけたと回答した人は44.5%にとどまったが、今年の秋夕に旅行を計画していると回答した人は76.4%に達したため、今年は旅行者が増加する可能性が高い。同社の予約データによると、今年の秋夕連休の宿泊予約件数は、昨年比で81.7%増加したという。
韓国のLCCチェジュ航空は、インスタグラムで秋夕連休期間の計画を尋ねるアンケートを行い、結果を公表した。それによると、回答者4118人のうち、1699人(41%)は国内旅行を計画し、382人(9%)は海外旅行を計画していると答えた。同社の就航地の中で、秋夕連休に最も行きたい場所は、人気の高い順に、済州島、グアム、ダナン、サイパン、バンコクとなっている。連休中に飛行機を利用した旅行をためらう理由としては、新型コロナウイルスに関する防疫措置(32%)、高額な旅行費用(25%)、入国前のPCR検査など海外旅行時の入国手続き(19%)などが挙がっている。
韓国政府は8月31日、秋夕連休中(9月9日〜12日)までの4日間、全国の高速道路で通行料金を無料にすると発表した。今年は前年に実施した規制を大幅に緩和し、連休中の家族の集まりについては人数制限を設けず、休憩所やバス、鉄道内での飲食も可能としている。首都のソウル市は9月4日、秋夕連休に合わせて、9月7日〜13日に「秋夕総合対策」を実施すると発表。10日〜11日には地下鉄とバスの運行時間を延長するほか、9日〜12日には市内の全自治体で1か所以上の新型コロナウイルスの検査所を運営するという。
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