インバウンドコラム

2022年国慶節連休、中国Z世代が目指したのはニッチな旅行先、国内旅行者数は前年割れ

2022.10.12

印刷用ページを表示する



中国では、建国記念日にあたる「国慶節」の大型連休が10月1日にスタートし、7日に終了した。ゼロコロナ政策に加え、5年に1度の共産党大会も控える中、2022年の国慶節連休には国内の新型コロナウイルス対策がより一層強化された。引き続き海外旅行に行けない中国の人々は大型連休をどのように過ごしたのか、その様子を紹介する。

 

国慶節連休中の国内旅行者数は2019年比で4割減

中国文化観光省によると、国慶節連休中の国内旅行者数は前年同期比18.2%減の延べ4億2200万人(推計値)だった。コロナ禍前の2019年同期比では約40%減となった。また、国内観光収入は前年同期比26.2%減の2872億1000元(約5兆8000億円)で、2019年同期比では約55%減となった。国慶節連休中の全国の鉄道、道路、水路、民間航空の予想旅客数は約2億5554万人で、1日平均では前年同期比36.4%低下し、2019年同期比では58.1%低下した。

中国の大手オンライン旅行会社「Ctrip(シートリップ)」のデータによると、国慶節連休中の地元での1人当たりの観光支出は前年比30%増加し、地元での旅行が観光市場の65%を占めたという。中国文化観光省の統計においても、今年の国慶節連休中の人気旅行先トップ3は、都市郊外の公園(23.8%)、都市周辺の農村(22.6%)、都市の公園(16.8%)だったことから、近場で旅行を済ませる人が多かったようだ。

 

国慶節連休中は、「文化旅行」「古鎮観光」「キャンプ」などが人気

海外旅行が困難な中、国慶節連休中は国内で楽しむさまざまなスタイルの観光が人気を集めたようだ。そのうちの1つが、美術館や科学館などを訪れる「文化旅行」。上海浦東美術館ではイタリアと英国の特別展が相次いで開催され、国慶節期間中の来場者数は平日と比較して3倍から4倍に増加したという。甘粛省山丹科学技術館では、体験型の展示やイベントが行われ、多くの子どもたちを引きつけた。このほか、古い街並みを訪れる「古鎮観光」や地域の特色ある民族文化などを堪能する観光、近郊での花見にも観光客が集まった。

ゼロコロナ政策の影響で近郊へのキャンプも人気が高く、「Ctrip(シートリップ)」の統計によると、国慶節の7連休中にキャンプ旅行の予約が前年同期比で10倍以上となった。そのうち、地元でのキャンプが80%近くを占め、市外や周辺でのキャンプが15%を占めた。キャンプの費用は1人当たり約650元(約1万3000円)で、今年の中秋節の3連休に比べて約30%増となった。

 

若者の間では「ニッチな旅行先」がトレンド入り

若者の間ではニッチな旅行先が人気を博し、検索のトレンド入りを果たした。旅行サイト「Qunar.com」が9月22日に発表したデータによると、7連休中のニッチな都市のホテルの宿泊予約数が、2021年同期比で3割増し、2020年同期比で7割増し、コロナ禍前の2019年比でも2割増しになったという。なかでも大都市と比べると低価格で宿泊できる高級ホテルの予約数が前年同期比で4割増しと、大幅に増加した。

Z世代の彼らは知名度の低い旅行先に着目し、計画を立てず、周りに影響されない自分たちらしいスタイルの旅行を楽しんでいるという。今年人気のニッチな旅行先には、海南省、新疆ウイグル自治区、陝西省、青海省、チベット自治区などが挙げられている。

 

観光地での足止めを警戒し、多くの人が地元旅行を選択

中国では、習近平国家主席が最高指導者として3期目入りを目指す共産党大会が10月16日に開幕するため、新型コロナウイルスの感染拡大に対する警戒心が一層強まっている。北京や上海などの大都市では、市をまたぐ移動を控えるよう呼びかけられた。これに伴い、旅行先で足止めを食う可能性を避けるために、長距離の移動を控える人多かった。もし旅先で感染者が出てロックダウンになった場合、居住地に戻れなくなる恐れがあるからだ。

実際に、中国各地では観光地を中心に新型コロナウイルスの感染が拡大し、部分的にロックダウン措置をとる都市が増えている。感染者が最も多かったのは内モンゴル自治区で、区都フフホト市は10月7日、住民に対して外出をしないよう要請した。新疆ウイグル自治区のウルムチ市なども住民に市外へ出ないよう求めている。中国・雲南省の観光地「シーサンパンナ」の空港では、市内で5人の感染者が確認されたことで厳格な移動制限が始まり、観光客が足止めをされて帰宅できないという事態が生じた。

 

最新記事