インバウンドコラム
新型コロナウイルスの入国規制を世界に先駆けて撤廃し、国境を再開した欧州各国では、すでに国際的な往来が日常化している。一方、日本を含む東アジアでは最近になって入国規制を緩和し、欧州からの観光客を誘致する動きが見られる。ここでは、日本の入国規制緩和後に訪日客がじわりと増えている、フランス、ドイツ、英国の状況を紹介する。
2022年9月の訪日客数、欧州は仏、独、英からのインバウンドが伸長
JNTOが10月19日に発表したデータによると、2022年9月の訪日客数は全体で20万6500人だった。コロナ禍前の2019年同月(227万2883人)比では90.9%減に留まっているものの、9月からは外国人観光客に対し、添乗員なしのパッケージツアーの受け入れを再開するなど、水際対策緩和の影響で、2022年3月に外国人の新規入国を再開して以来初めて20万人を上回った。
2022年9月の欧州からのインバウンドに関しては、フランスが5300人(80.0%減)、ドイツが5300人(76.7%減)、英国が4500人(90.9%減)、イタリアが2600人(80.5%減)の順に多かった。前月の2022年8月はフランスとドイツが3500人、英国が3900人、イタリアが1600人だったため、いずれも堅調な回復を見せている。10月11日からは観光目的の個人旅行による入国を再開し、1日当たり5万人の入国者数上限を撤廃したため、今後さらにインバウンドの増加を見込むことができそうだ。
エールフランス「羽田ーパリ」線増便、訪日観光促進に向けたフォーラムも
エールフランス航空は10月30日から来年3月25日までの冬ダイヤで、「羽田ーパリ」線を週3便から週5便に増便する。また、「成田ーパリ」線は週3便、「関西ーパリ」線は週3便運航する。JALは冬ダイヤで「羽田ーパリ」線をデイリー運航し、ANAは「羽田ーパリ」線を週3便で運航する。
JRなどが出資し、地域振興を手掛ける一般社団法人「北前船交流拡大機構」は、10月17日から20日にかけて、フランスで日本の食文化を発信するフォーラムや訪日観光の促進、日本食品の販路拡大などを目的とした活動を行った。18日には、江戸・明治時代に日本海や瀬戸内海の物流を担った北前船(きたまえぶね)の寄港地が交流する「第31回北前船寄港地フォーラム」をパリのルーブル美術館で開催し、北前船がかつて運んだ昆布だしなどの日本の食文化を発信した。このほかにも、パリ市内で日本の地方の観光地をPRし、訪日誘致につながる活動を行った。
日本の地方でも、フランスからの訪日客受け入れの動きが見られる。富山県は10月11日より、フランスで旅行ガイドブックを発行しているメディアを招き、県内の観光名所を巡る取材ツアーを行った。徳島県西部でも、コロナ禍前から海外からのツアー客を受け入れている観光団体が、10日9日よりフランスからのツアー客を受け入れた。島根県津和野町にはフランスからの個人旅行客が訪れ、町の観光名所をめぐる予定だという。
今後さらなる日仏の往来活性化が見込まれる中、フランス保健省は、新型コロナウイルスの流行の第8波に入ったと発表し、インフルエンザと時期が重なって医療機関のひっ迫につながる恐れがあると警戒を呼びかけた。一方、フランス政府はワクチンが普及していることを理由に、感染対策の強化は行わない方針を表明した。
ドイツと日本を結ぶ航空路線、冬ダイヤで相次いで増便
ドイツと日本を結ぶ航空路線も、増便が続く予定だ。JALは12月1日から「成田ーフランクフルト」線を1日1往復に増便する。ANAは10月30日から2023年3月25日の冬ダイヤで「羽田ーフランクフルト」線を増便し、週14往復を運航する。ルフトハンザドイツ航空は10月30日から「羽田ーフランクフルト」線を増便し、デイリー運航となる。
ドイツでは9月下旬から入院患者の数が急増し、新型コロナウイルスの規制が10月1日より再導入された。商業施設や飲食店、イベント会場でマスクの着用が義務付けられたほか、医療、介護施設ではマスク着用に加え、新型コロナウイルス検査による陰性証明書の提示も義務付けられた。教育機関と保育施設では、陰性証明書の提示が義務付けられ、小学5年以上の児童はマスクの着用も求められる。
英BA、羽田―ロンドン便を毎日運航へ
英国路線では、ブリティッシュ・エアウェイズが11月13日より毎日運航で「羽田ーロンドン」線を再開する。ANAは10月30日から「羽田ーロンドン」線を毎日運航し、同日より全便最新型のファーストクラスとビジネスクラスのシート搭載機で運航する計画となっている。JALは冬ダイヤで「羽田ーロンドン」線を週11便運航する。
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