インバウンドコラム
タイの首都バンコクでは先週、アジア太平洋地域の21の国と地域が参加するAPEC首脳会議が開催された。その波及効果はタイのインバウンドにも少なからず影響があったようだ。今回は、アジア諸国の中でもいち早く入国規制を完全撤廃し、観光業回復に向けて舵を切ったタイの現在の動きを紹介する。
タイ政府、観光振興策の予算に340億円。観光客数は国内、インバウンド共に順調に回復
「バンコクポスト」紙によると、タイの観光・スポーツ省は今月、観光振興策の予算87億バーツ(約340億円)を政府に要求する計画となっている。このうち72億バーツは、国内旅行を促進するための「We Travel Together」キャンペーンの第5弾に割り当てられる。残りの15億バーツは、タイ政府観光局のマーケティング予算に充てられ、海外での活動に10億バーツ、国内市場に5億バーツが費やされるようだ。
タイでは国内旅行が活性化しており、タイのカシコン銀行傘下の総合研究所カシコン・リサーチ・センターは、タイ人の年間国内旅行者数を前年比2.8倍の延べ約1億5000万人と予測している。
一方、インバウンド客も順調に回復しており、タイ政府観光庁の発表によると、10月末時点ですでに約750万人以上の外国人観光客がタイに入国したという。コロナ禍前(2019年)の外国人観光客3980万人と比較すると大幅に下回っているが、昨年の約43万人に比べてすでに17倍超えとなっている。今年9月だけをみると、約130万人の外国人観光客がタイを訪れ、そのうち日本人は約3万6000人だった。
旅行プラットフォーム「トリップアドバイザー」が、日本を含む世界6カ国の旅行者を対象に実施した意識調査によると、2022年冬の日本人旅行者の人気観光地(海外)で1位となったのはタイのバンコクだった。
タイ政府観光庁、新しい観光体験でデジタルアートNFTを提供。アイテムゲットで割引も
タイの政府観光庁は11月14日から12月14日までの1カ月間にわたり、新しい観光体験 「アメージングタイランドNFTs(Amazing Thailand NFTs)」キャンペーンを開催している。観光客はYAKSアプリをダウンロードして、バンコクのチャイナタウン、ワット・アルン、ジャイアントスイング、サイアムスクエア、サムットプラカーンのムアンボーラーンという5つの主要な観光スポットに設置されたキオスクでQRコードをスキャンすると、デジタルアートNFTをランダムに入手できる。
同キャンペーンで3つの場所を訪れて3つ以上のアイテムを集めると、航空券、ホテル、飲食の割引や、その他の旅行特典を利用できるようになる。さらに、観光客はバンコクのスワンナプーム空港に到着すると、アメージングタイランドNFTのウェルカムアイテムを受け取ることができる。
タイ国政府観光庁ユタサック・スパソーン総裁は同キャンペーンを、「より持続可能な産業に向けた『新しい観光エコシステム』を構築する取り組みの一環」と位置付けている。
APEC首脳会議の影響で、MICE関連の宿泊需要が増加
タイでは11月18、19日にAPEC首脳会議が開催され、タイのホテル業界では宿泊客が増加したことから、MICE市場の拡大に期待が寄せられている。バンコクの高級ホテルなどでは、首脳会議関連の影響で、MICE関連の客も増加しているという。この影響で、今年第4四半期(10〜12月)におけるMICE関連の宿泊客は全体の約40%に上り、2019年の35%を上回った。
タイの航空会社、日本路線の増便やキャンペーンを実施
タイ国際航空は12月1日より、「羽田―バンコク」線の運航を現在の1日1往復から1日2往復に増便する。日本路線はこのほかに、バンコク・スワンナプーム発着で成田、関西、関西、福岡線を運航しているが、同日より千歳線の運航も再開する。また、同社は日本発の航空券を対象に、燃油特別付加運賃(燃油サーチャージ)を12月1日発券分より大幅に引き下げる。例えば、エコノミークラスでは、往復で現在の360ドル(約5万円)から250ドル(約3万5000円)となる。
LCCのタイ・エアアジアは、11月20日まで国内線及び国際線で運賃が20%OFFとなるプロモーションを開催し、同社唯一の日本路線である「福岡―バンコク」線が片道1万7000円程度で販売された。国内線も、2023年5月1日〜2024年3月30日のバンコク発着のチェンマイ線やプーケット線などが運賃0バーツの設定となり、空港使用料込みで400円程度で販売された。
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