インバウンドコラム
アジアの観光大国タイでは、コロナ禍でいち早く国境を開放して外国人旅行者を受け入れ、経済を支える観光業の活性化を図っている。最近では、中国でゼロコロナが終了したことを受け、コロナ禍前には外国人旅行者の3割を占めていた中国人旅行者の受け入れ拡大も急いでいる。ここでは、タイのインバウンドに関する全体的な動きや、中国人旅行者の受け入れ状況などを紹介する。
タイ、2023年の外国人旅行者数を2500万人に上方修正
タイの旅行業界団体であるタイ観光評議会(TCT)は、新型コロナウイルス感染症対策の規制緩和や撤廃に伴い、2022年の外国人旅行者数が1180万人に達したと発表した。TCTの当初予想である1200万人には届かなかったが、タイ国政府観光庁(TAT)の当初予想1000万人を上回った。
また、TATは2023年の外国人旅行者数を約2000万人と想定していたが、中国が海外旅行規制を緩和した影響で、2500万人に上方修正した。2025年までには、コロナ禍前と同水準の4000万人に達する可能性があるとしている。また、タイ観光・スポーツ省は、2027年の外国人旅行者数の目標をコロナ禍前の2倍となる8000万人に設定したと発表している。
6月以降、訪タイ外国人旅行者から300バーツの手数料を徴収
今年は外国人旅行者の顕著な増加が見込まれる中、タイ政府は6月以降、外国人旅行者から300バーツ(約1170円)の手数料を徴収する計画を立てている。観光・スポーツ省によると、徴収した資金は、緊急事態が発生した観光客の支援や新たな観光地の開発などに充当するという。
タイ国営メディアNTTが1月15日、タイ政府観光庁が政府に対し、外国人旅行者の滞在可能期間の延長を2023年末まで延長するよう要請していると、報道した。
これは、「外国人旅行者の出費を増やすことで観光収入を増やし、経済を刺激するため」の一時的な措置で、当初は2022年10月から2023年3月末までの期間限定だったが、その期間を延長した形となる。この措置で、ビザなしで入国した渡航者は45日間(通常は30日間)、オンアライバルビザ(タイの空港で取得できるビザで、中国、台湾など18の国と地域のパスポート所持者対象)を取得した渡航者は30日間(通常は15日間)の滞在が可能になっている。日本人がタイへ渡航する際はビザなしで入国できるため、最大で45日間タイに滞在できる。
中国の国境開放に伴い再強化した水際対策を、数日後に撤回
中国が国境を開放したことに伴い、タイ政府は急きょ入国規制を再強化し、ワクチン接種証明書の提示を全ての外国人に義務付けると発表したが、これを数日後に撤回。観光業界から水際対策の緩和を求める声が上がったことなどを受け、政府が右往左往した状況が浮き彫りになった。アヌティン副首相兼保健相は1月9日、スワンナプーム国際空港で開催された中国人旅行者を歓迎する式典で「旅行者へのワクチン接種証明の提示の義務付けについて、一度公表されたが、その後保健省の委員会で撤回することを決定した」と発言している。ただし、中国、インドからの入国者に対してはコロナ感染時の治療費をカバーする保険への加入を義務付けている。
春節連休中の訪タイ中国人観光客は10万人に上ると予想
3年ぶりに国境を再開した中国からは、観光客が押し寄せている。コロナ禍前の2019年には、中国の訪タイ旅行者が約1100万人と、年間の外国人旅行者の3割を占めていたが、その後激減した。観光業が主力産業であるタイでは、経済の立て直しに向けて中国人観光客の受け入れ拡大を急いでいる。
タイ国政府観光庁(TAT)のユタサク長官は、今年の訪タイ中国人観光客が500万人を超えると期待感を示し、格安航空会社の中国便が大幅に増便されることが予想されると述べている。TATはまた、今年の訪タイ者数ランキングは1位中国、2位マレーシア、3位インドの順になる可能性があると発表した。タイ空港公社(AOT)は、直近の春節連休(1がつ18日~21日)でタイを訪れる中国人の入国者数が10万人に上ると予測している。
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