インバウンドコラム
中国政府は海外への団体旅行を一部再開したが、これに伴い、今年は中国の観光市場が急回復するとの予測が示されている。一方、日本政府は中国からの入国者に対する水際対策の緩和を発表したため、日中間の往来正常化への期待が膨らみつつある。今回は中国の観光市場の動きを中心に紹介する。
2023年の出入境旅行者数、前年比2倍の9000万人と予測
海外への団体旅行を解禁した中国では、出入境旅行が回復に向かうと見られている。中国政府系シンクタンク、中国旅行研究院が2月23日に発表したレポートによると、今年は外国から中国を訪れる観光客や、海外旅行に出かける中国人観光客が前年比2倍の延べ9000万人に上ると予想されている。コロナ禍前の2019年比では、31.5%まで回復する見通しだ。
コロナ禍前の2019年には、中国人海外旅行者数は延べ1億6600万人、観光消費額が2700億ドル(約36兆8000億円)に上り、中国が世界最大の観光客送り出し国となっていた。
中国の国内観光客数、前年比約80%増の45.5億人と予測
「ゼロコロナ政策」の大幅緩和により、中国国内の旅行も活性化している。中国旅行研究院によると、今年の国内観光客数は前年比80%増の延べ45億5000人と、2019年比で76%まで回復すると見込まれている。また、今年の国内観光収入は前年比95%増の4兆元(約78兆4000億円)となる見通しで、コロナ禍前の2019年比で71%まで回復するとの予測が示されている。中国旅行研究院は、第2四半期(4~6月)に観光市場が拡大し、夏休みには本格的に回復すると予想している。
国連世界観光機関(UNWTO)のズラブ・ポロリカシュヴィリ事務局長は2月23日、中国の杭州市を訪れ、中国国内の観光業が回復することで国内経済に波及効果をもたらし、中国のみならず世界経済にも大きな活力をもたらすと述べている。
2023年1月の航空旅客数、前年同月比34.8%増加。国際線の運航が続々再開
中国民用航空局(CAAC)は2月16日の定例記者会見で、中国の1月の航空旅客数が前年同月比34.8%増加したと発表した。中でも春節休暇が含まれる1月7日から2月15日までの航空旅客数は前年同期比で39%増加し、北京、上海、広州、深センなどの都市と人気の観光地である海南島三亜市を結ぶ路線の需要が高かったという。
中国の航空業界では、国際線の運航再開の動きが加速している。航空大手の中国東方航空は国際線の運航再開を進めており、2月末までに中国本土と東南アジア、香港、マカオ、台湾などを結ぶ国際線・地域線を週410便運航する予定だ。同じく大手の中国南方航空は12カ国への国際線48路線を運航再開・就航。LCCの春秋航空は、国際線・地域線24路線の運航を再開する予定だ。
ヨーロッパの航空業界でも、中国線の再開が続々と発表されている。英国のブリティッシュ・エアウェイズは4月23日から「ロンドン-上海」線を、6月3日から「ロンドン-北京」線の運航を再開し、同じく英国のヴァージン・アトランティック航空は5月1日に「ロンドン-上海」線の運航を再開する。このほかにも、スイス航空が3月3日から「チューリッヒ-上海」線を、KLMオランダ航空が3月26日から「アムステルダム-北京」線と「アムステルダム-上海」線の運航を再開する。
日本政府、中国からの入国規制を緩和。往来正常化を見据えた動きが活発に
日本政府は、中国からの入国者に対する入国規制を3月1日から緩和する。理由として、中国からの入国者の陽性率が低水準で推移していることを挙げている。これに伴い、入国者全員に実施している入国時検査に替えて、入国者の最大20%程度のサンプル検査を実施する。一方、陰性証明書の提出は引き続き義務付ける。また、現在は中国からの直行便の乗り入れを羽田、成田、関西、中部の4空港に限定しているが、検疫体制等を確認の上で、これら以外の空港への到着を認めるとともに、増便も認める。
中国は海外20カ国への団体旅行を解禁したが、その対象国に日本は含まれていない。しかし、すでに個人旅行ビザの発給は再開しており、中国各地で日本の魅力をPRするイベントが行われるなど、両国間の往来正常化を見据えた動きは着々と進められている。
広東省広州市では、2月18~19日に「広東ジャパンブランドフェア」が開催され、日本の商品や文化の魅力が発信された。今回で3回目となる同イベントには、鹿児島県や長崎県、秋田県、熊本県、沖縄県などが出展し、各地の魅力をPRした。
四川省成都市のショッピングモールでは2月18日~19日にかけて、成都市の消費者に日本の食を体験してもらう「サクラ・フード・フェスティバル」が開催された。成都市などで日本食品を取り扱う事業者に加え、北海道、広島県、徳島県、福岡県が出展し、地元の食品をPRした。期間中は想定より多い約1万2000人が来場し、サンプルの在庫が足りなくなるほど盛況だったという。
雲南省昆明市では2月11日~12日に「ジャパン・フェスティバル雲南」が開催され、延べ5万5000人が来場した。同イベントは日中間の文化や経済の交流を目的としたもので、中国に拠点を置く日系企業、自治体など、約20社・団体が出展し、自社商品や県産品をPRした。
湖北省武漢市では2月9日、ジェトロ主催の「湖北省日用品・化粧品商談会」が開催された。日本からは9社の企業がリアルで参加し、37社がサンプル製品を展示した。中国からは湖北省の貿易会社や日用品や化粧品を扱う事業者など、67人のバイヤーが来場し、対面とオンラインで商談が行われた。
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