インバウンドコラム
好調な経済成長率を背景に、今タイ人は旅行に燃えている。
2月14日~17日にバンコクで開催された第12回Thai International Travel Fair 2013(以下TITF)ではその旺盛な旅行意欲と熱意あふれる好奇心に圧倒されるばかり。今、タイ人は日本旅行に何を求めているのか、どこよりも早いTITFレポートの中で解き明かしていこう!
目次:
1.朝10時から夜9時まで熱狂の旅行博
2.個人旅行が伸展! 出展者も驚く具体的な質問
3.タイ人の心をとらえるポイントは?
4.日本に対する憧れを実際の旅行に結びつける
1.朝10時から夜9時まで熱狂の旅行博
会場であるバンコク クィーンシキリット ナショナルコンベンションセンターには開場を待つ人が並び、10時の合図とともになだれ込んでいく。
国内旅行ブースのホール同様、海外企業が出展しているホールでは、資料を集め、アンケートやクイズに答えている。片隅では、集めた旅行チラシを見比べて、真剣に旅行を検討している。ステージはいつも満席で、出展者が趣向を凝らしたクイズにも簡単に答えてくる。夜9時の閉場ギリギリまで、ブースにつめかけて質問や問い合わせをしてくる人もいる。これは決してオーバーではなく、TITFでごく普通に見られた風景だ。
実際の基礎データをみてみると、2011年、2012年ともタイ人出国者数は約550万人。
そのうち訪日旅行者数は、2011年144,969人、2012年26万人(※推計値)と急激な伸びを示し、過去最高となっている。
しかし、日本に限ったことではなく、若者にK-POPが浸透した韓国は、ビザが不要なこともあり、2010以降から日本を大きく抜き去っている。2012年は約38万人と数字を伸ばしている。
やはり身近で価格も手ごろなアジア方面の旅行に人気が集まっているといえる。
特に2月のこの時期は、4月のソンクラーンの長い休日の旅行予定を検討している人が集まる。このTITFでは旅行の即売会も行われているため、具体的に旅行予定をたてる格好の場になっているのだ。まだ、集計値は主催者から発表されていないが、4日間にわたる来場者数は60万人とも言われている。(2012年実績)
2.個人旅行が伸展! 出展者も驚く具体的な質問
今回は海外、国内あわせて約800社がブースを出展、そのうち、日本ブースは過去最高の30社が出展した。
日本ブースは赤と白を基調に桜をモチーフとしたコンセプトデザインで統一されている。明らかにほかの海外ブースよりも人気で、人だかりができているところも多い。
実際に出展者にヒアリングしてみると、共通して下記のような声があがった。
①用意してきたチラシがすぐになくなる(そのため後半は抑えめにして配布)。
②賞品やプレゼントが細かいものでも関係なく、アンケートやクイズに真剣に答えてくれる(「面倒がって書かない」と旅行代理店からは聞いていたが)。
③実際の旅行に対しての質問が多い。特に交通アクセス。
「○○から○○へ行くのに、どれくらいかかる?」など。
質問に対して答えていると、滞留時間も長くなる。
④Facebookは子どももアカウントを持っているほど人気。
iPadで自社の「いいね」を押してもらうキャンペーンでも数が1日に100~500集まるところも。
この背景には、タイ人の個人旅行化がすすんでいることにある。
航空券やレイルパスを購入し、その日程や何をして楽しむかシミュレーションするために具体的で詳細な情報は、そのエリアを有する自治体や鉄道会社のブースできいてまわるという流れのようだ。
これからの旅行をたてるための情報収集にも余念がない。
例えば「この花をみるのにいつの時期がいいのか」という質問も多く見受けられた。
3.タイ人の心をとらえるポイントは?
「雪」や「富士山」を擁するエリアはもとより知名度がある。加えて、何度も日本を訪れてくれるリピーターにより訪問地も多様になってきているようだ。
出展者にきくと、従来人気のゴールデンルートに加え、2012年10月にタイ国際航空(TG)が運航している北海道、知名度のある飛騨高山・白川郷にいたる富山~金沢ルート、三重・紀伊半島などは実際の集客もあり、来場者の反応もいいという。震災からの復興が確認された東北地方も同様に人気で、FIT向けのモデルコース、食べ物情報などを作成して対応していた。
それに対して我がホームの九州は総じて知名度はまだまだ低いが、それも着実に変わりつつある。
「以前は名前も知らないという人も多かったが、“来月行くので交通アクセスを教えてほしい”や、別府や湯布院温泉の情報、ハウステンボスの花のみどころなどの情報をきかれることが多かった。商談会でのヒアリングでも旅行代理店3社が興味をもって聞いてくれた。会場内でも、多くの九州パッケージやレイルパスを利用するFITが販売されていて、九州にもチャンスの波がきているのを感じます」と九州観光推進機構の有吉さん。
今後本機構は、直行便が出ているASEAN諸国のプロモーションにさらに注力をしていくという。そういう意味でもタイは重要なマーケットに位置づけられている。
沖縄のブースでは、バンコクエアウェイズ、タイ国際航空(TG)とタイアップした旅行代理店2社による、チャーター便ツアーも紹介。TITFに合わせテレビCMを放映したこともあり、沖縄ブースに立ち寄る多くの人は、「沖縄!CMで観た!」と関心を示していた。(財)沖縄観光コンベンションビューローの担当者は「一見すると南国リゾートということで、プーケットやハワイに似ているという声もありますが、沖縄のエイサーや日本で一番早い桜祭りを始めとする季節ごとのイベントに併せたツアーなど、沖縄独特の魅力をPRすることで、タイの人に興味をもって頂いている。」また、ギブアウェイとして竹富島の「星砂」をプレゼントすることで、より関心が高まったようだ。4泊6日で5万バーツほどだが売れ行きは好調とのこと。
また忍者はタイ人には受けがいいようで、10年以上前からタイでプロモーションしている日光江戸村も多く集客しているし、三重では旅館で着替え、手裏剣投げなどができる忍者体験を組み込んだコースが人気を博しているそう。
タイは社員数も少ない旅行代理店がしのぎを削る市場で、新規ルートや商品開発に熱心な会社も多い。
会場では、訪日旅行を扱う旅行代理店のブースはどこも盛況。現地主要旅行会社のブースに足を運んだところ、どこも日本行きのツアーが最も人気。韓国や香港、台湾の選択肢もあるが、日本の人気は根強い。訪問先でいうとゴールデンルートがまだメイン。その他関西、北海道が人気。ただ、今後の市場拡大のために、九州や四国等未開拓のエリアを扱うツアーも出てきており、今後はより多様化していくだろう。
ツアールートの仕入れについては、日本国内ランドオペレーターを使うところ、自社で直接すべて手配するところなど、各社によって方法が異なる。日本の観光事業者は、タイの旅行代理店のターゲット層、注力しているツアールート、仕入方法など、さまざまな要素を理解し、効果的な営業を掛けることが重要となりそう。
タイ人のツボを一発で探りあてることは難しい。地道にやりとりや情報発信をしながら、心をくすぐるポイントを一個一個押さえていくことしかないのだろう?
B to B(旅行代理店)あるいはB to C(タイ人旅行者)にしても、TITFはそんなタイ人を知るのに最適の場だといえる。
4.日本に対する憧れを実際の旅行に結びつける
バンコクの街を歩いてみると、『日本』があふれている。マンガやアニメ、そしてデパートやファッションモールでの日本食のバラエティも豊富だ。
書店のガイドブックコーナーでは、完全に個人旅行に使える詳細なデータを示したガイドブックがたくさん並んでいる。
訪日旅行専門社「JPLAN」の創業者Patana Nitipatanapanya氏はこう語ってくれた。
「タイガーマスクや仮面ライダー、ドラえもんといった日本の文化が大好きで、訪日専門の旅行会社をはじめました。どうやったらそこに行けるのか、いくらぐらいかかるのか、という実際に旅行をするときに役立つ情報を発信してきました。そこがイメージできると日本への旅行はまだまだ増えると思います」
旅行代理店へのコース提案や、一般消費者への情報提供などまだまだタイ市場に対してやるべき打ち手がたくさんあると実感したTITF。数ある旅行見本市の中でも有効な場としておすすめしたい。
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