インバウンドコラム
中国衛生部と教育部の合同調査による最新データによると、中国には4億人の近視患者がおり、人口の33.33%が近視であるという。現在、レーシック手術による視力矯正のマーケットは急激に拡大しているが、直面している問題も少なくない。最近では海を渡って日本で手術を受ける人も増えているという。
<2015年10月15日>
目次:
視力矯正手術は医師選びが肝心
術前の説明と術後のフォローを徹底
中国からも口コミで来日
海外からの角膜移植手術も日帰りで
必要な人に正確な情報を
中国衛生部と教育部の合同調査による最新データによると、中国には4億人の近視患者がおり、人口の33.33%が近視であるという。現在、レーシック手術による視力矯正のマーケットは急激に拡大しているが、直面している問題も少なくない。
手術前に患者の適性検査を行わなかったり、無塵化していない手術室を使ったり、メインテナンス不良の医療機器を使う医師もいる。人間の角膜の中央の厚さは0.5ミリメートルであり、このような薄い角膜に手術をするのであれば、医療環境や医療器具に対する厳しい基準だけでなく、医師の心理的資質、医師としての能力、手術経験などにも高いレベルが求められる。
先日、累計1万3000件というレーシック手術件数を誇る医学博士であり、ハーバード大学で学んだ才女である南青山アイクリニックの戸田郁子院長を訪ねた。戸田院長は「レーシックが成功するかどうかの鍵は医師と病院の選択にある」と話した。(聞き手は本誌編集長 蒋豊)
視力矯正手術は医師選びが肝心
―― レーシック手術の歴史は新しく、臨床での応用はまだ30年ほどです。レーシックは永久に安全かどうかという疑問の声もありますが、レーシックの専門家として、どういうご意見をお持ちですか。
戸田
レーシックのメリットは大変大きく、適切な適応選択と確実な手術を行えば特別な問題というものもありません。
もちろん、今おっしゃったように歴史がまだ浅く、そういう意味では長期的な安全性と効果については100%認められたわけではありません。 そのあたりが、患者さんが気になさる部分かもしれません。
当クリニックでは18年前からレーシック治療を始めましたが、当時は理論上では大丈夫だと思っていても、それを支える治療データがまだありませんでした。我々はこの10数年間の治療を経て、経験や治療成果を蓄積し、それを海外の雑誌に発表するなど、レーシックで失明したり視力が低下したりするということはなく、安全であることを証明しています。
もちろん、レーシック手術が向いている人と向いていない人がいます。角膜が薄い人や高度の近視である人に手術をしても、効果が不十分で有る場合や、合併症が起こることがあります。 ですから、患者さんが手術を希望しても、まず検査して適性を調べ、十分に説明します。
例えば、手術後にドライアイになるということもありますが、それは一時的な現象で、術後の適切なフォローアップがあれば回復するなど、患者さんには術前に、術後の予測される合併症等を丁寧に説明し、分かっていただく必要があります。
レーシックはクオリティ・オブ・ライフを上げる手術ですが、手術ですからもちろんリスクがないということではなく、100%成功すると断言できる医師はいないでしょう。ですから、レーシックを受ける時は、技術があり、経験が豊富な医師を選ぶことが非常に重要です。
術前の説明と術後のフォローを徹底
―― 日本のメディアでは「レーシック難民」という新しい言葉を目にします。なぜこのような現象が起こるのでしょうか。貴クリニックは日本ではレーシックの草分け的な存在ですが、具体的にどのような特長がありますか。
戸田
実は、一部の患者さんでは手術前に十分な適性検査を受けておらず、きちんとした説明も受けていないため、自身の状況がよくわからないまま手術を受ける場合があります。
また、大きなレーシック専門センターでは手術後に患者さんの長期フォローアップをせず、患者さんが術後に問題があっても、医師と話す機会があまりないところもあります。
そうすると何か症状が出てくると別の病院に行くしかなくなるので、「レーシック難民」が生まれるのです。
当クリニックでは患者さんに対してまず、個別の状態に合わせてよくご説明します。オーダーメードの医療と私たちは考えているのですが、患者さんには、個々人の術前の目の状態によって術後の効果が異なったり、あるいは手術後に問題が起こる可能性があることを十分理解していただく必要があります。
説明不足と理解不足があれば手術後に問題が発生する可能性もありますので、事前にきちんと話し合い、説明しておくことがとても大切です。
次に、手術後の患者さんに対するフォローアップです。当院は1997年の開院以来18年間治療をおこなっていますが、最初の患者さんを含むレーシック手術の患者さんをフォローアップし続けています。30歳すぎで手術を受けた患者さんも今では50歳になっていますが、ずっとフォローアップしています。患者さんには1年間に1回は再検査をされるようアドバイスしています。
当院が開院した当初はレーシック専門のクリニックでしたが、長年の間に患者さんのニーズが増えてきましたので、診療分野を一般診療まで拡大し、眼のさまざまな病気や問題に対応できるようになっています。また同時に日本では数少ない日帰りでの角膜移植手術も行っております。
海外からの角膜移植手術も日帰りで
―― 貴クリニックは日本のクリニックでは最先端を進んでおり、角膜移植手術の患者も日帰り手術ができるとお聞きしたのですが、本当ですか。日帰り手術はどのようにおこなわれるのでしょうか。
戸田
中国と同様に日本も角膜提供者が少ないので、角膜移植は長い間特別な手術でした。しかし米国では、国の医療システムの違いもありますが、20年前にすでに角膜移植の日帰り手術という目標をクリアしています。
当院では患者さんの利便性を考え、積極的にこの手術を取り入れています。
一般的には、角膜移植手術を希望する患者さんはドナー角膜提供者を最短数カ月、長ければ数年待たなければなりませんが、私たちはアメリカ、オーストラリアなどのドナー角膜が豊富な国のアイバンクと提携して、直接角膜を調達しています。
手術したい時に海外のアイバンクに対して直接手術ができる形に処理するようオーダーしますので、具体的な手術日さえ決まれば手術前に角膜を調達できます。もちろん費用はかかりますが、最も早くて有効な方法だと思います。
中国からも口コミで来日
―― 日本の再生医療、低侵襲手術、カスタム医療などは世界のトップレベルであり、ていねいな医療サービスもまた有名です。近年、経済産業省では国際医療サービスを大々的に推進しています。もし中国人が日本に観光に来て、同時にレーシック手術や角膜移植を受けたい場合、貴クリニックでは受け入れ可能ですか。そうした患者さんはいらっしゃいますか。
戸田
当院には日本国内在住の中国人患者さんと中国大陸からの患者さんがいらっしゃいます。私もなぜ中国で当院が知られているのか不思議でしたが、患者さんが口コミで紹介してくれて伝わっているようです。
遠方からいらっしゃる場合、当院のレーシックには3日かかります。患者さんは手術前日に適性の検査をして医師の説明を聞き、次の日に最終検査と手術を受けて当日は近くのホテルに泊まっていただき、翌日にまた診察するという流れです。
北京から東京までは飛行機で3時間くらいですから沖縄とあまり変わりませんので、もし4、5日滞在できるのであれば、中国人観光客も手術を受けていただけます。
もちろん、なかには検査の結果、手術に不適応という場合も考えられます。この点は来日前に十分理解しておいていただきたいですね。一般的には10人のうち2人の患者さんは近視が強すぎたり病気があったりして、レーシックに不適応です。
わざわざ遠くから飛行機で来たのに、もし不適応だったら本当に残念な気持ちになるでしょう。ですから、来日前に中国で適切な検査を受けて近視の度数と角膜の厚さなどのデータを当院にメールで知らせていただければ、専門家が判断しますので、無駄足を省けると思います。
当院ではレーシック不適応の患者さんにはフェイキックIOLという眼内レンズ手術もおこなっています。眼内レンズ手術は患者さん自身が来日して検査を受ける必要があり、その検査データに基づいてレンズをオーダーしますので、レンズができるまで2カ月ほどかかります。レンズが届いたらまた来日していただかなければなりません。
レーシックの後はある程度観光やショッピングをしていただいて大丈夫ですが、手術直後はドライアイがあったり、フラップの接着も弱いので、無理をされないほうがよいでしょう。
フェイキックIOL手術は術後には激しい運動を避けなければならず、温泉にも入れません。ショッピング程度は可能ですが、人ごみで目をぶつけないよう保護用の眼鏡は必ずかけていただきます。
角膜移植手術には生体角膜と人工角膜の2種類が使われます。人工角膜は移植後にフォローアップのケアが必要で、1カ月に1回は通院していただきます。生体角膜であれば移植手術が終われば患者さんは帰国でき、中国の国内の眼科医でも術後のケアと検査ができます。
今までの中国人患者さんは英語が話せる方が多かったですね。英語ができれば当院では問題ありません。 中国語しかできない患者さんは通訳を連れていらっしゃいますが、通訳の方も一緒に手術室に入ることもできます。 レーシックの手術時間は15分ほどです。もし中国人患者さんが団体で手術を予約するということならば、割引も検討させていただきます。
ここ数年、当院で手術したいという中国人患者さんは年々増えています。よりよい受け入れのため、また、患者さんに安心していただくため、中国語のできるスタッフを配置したり、中国語ウェブサイトをつくることを考えています。
必要な人に正確な情報を
―― アメリカのハーバード大学に留学した医学博士であり、日本の「レーシック手術の母」とも言われる先生は日本で最も早くレーシックを始めた専門家ですが、これからの抱負をお聞かせください。
戸田
レーシックは非常に有益な手術であるのに、無責任な医療機関やメディアの偏った報道によって誤解を受け、手術の安全性も疑われています。私はそうしたネガティブな報道をきちんとリセットして、手術を必要とする患者さんに正確な情報を提供し、クオリティ・オブ・ライフを向上させるための選択をしていただきたいと思います。
そこで、私は他の専門家たちと共同で「安心LASIKネットワーク」をつくり、患者さんに安心、安全な選択をしていただくために、厳しい条件をクリアした約50カ所近くの信頼できる医療機関を紹介しています。特に海外の患者さんにとって正確でダイレクトな情報を得ることは重要と考えています。
また、さまざまな診療もしている眼科クリニックとして、私は地域医療に貢献したいと考えています。同時に中国の先端医療研究機関と専門家に当院の技術と経験を紹介したいとも思っています。
取材後記
インタビュー終了後、恒例の揮毫をお願いすると、「信頼が築く実績」と書いてくださった。この6文字は南青山クリニックの20年来の発展の総括である。このハーバード大学出身の医学博士はまちがいなく日本社会のサクセスウーマンであり、場を得たその有能ぶりと優雅さが成功に色を添えている。
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