インバウンドコラム

地域資源を活用した観光サービス・商品開発を目指す企業と旅行会社、メディアとのマッチング会開催。熱意ある中小企業が集結

2019.11.27

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11月20日(水)、独立行政法人中小企業基盤整備機構(以下中小機構)は、全国各地で観光関連のサービス開発や販路拡大に取り組む中小企業(セラー)と、旅行会社やメディアなどの企業(バイヤー)とのマッチング目的とした観光商談会を八芳園で開催した。

 

中小企業が旅行会社に、観光サービスや商品を提案

中小機構では、全国10箇所の地域本部を中心に、その地域が持つ資源を活用した観光サービスの開発に取り組む企業支援に取り組んでいる。観光サービス開発に意欲的な企業がいる一方で、中小企業であるがゆえに旅行会社との接点を持つ機会がなく、消費者目線のある商品の磨き上げや、実際の販売へ繋げることが課題の一つになっている。

そこで今回の商談会では、旅行会社や観光関連のメディア、Webサイト運営企業など消費者や旅行者との接点がある企業10社を呼び、商品開発にとり組む中小企業が接点を持つ機会を提供した。

商談会の企画、運営をする中小機構企業支援課の瀬崎氏に今回のゴールについて伺ったところ、「理想は、商談会を通じて、参加されたバイヤーである旅行会社のツアープランに組み込まれるなど、商品造成ができればいい。ただし、参加している中小企業の方の状況もそれぞれ。すでに商品があって販売をしている企業もあれば、商品づくり真っ只中の企業もある。そういった場合、企画段階の商品のアイディア出しやアドバイスをもらうことで、商品の磨き上げにつながるなど、気づきや行動のきっかけにしてもらえればいい」と話す。

 

日本に一つしかない観光コンテンツを持つ企業も参加

セラーは、募集に対して手を挙げた13社が集まった。観光事業に取り組んでいる、あるいは参入予定の企業が多く、意気込みが感じられた。商談は、希望をもとにした事前マッチング形式で、30分の商談が6回にわたって行われたが、商談の時間を過ぎても話し込む様子や、商談後も名刺交換をして意見を交わす姿が至る所で見られた。

岩手県久慈市で琥珀を核に博物館運営から琥珀関連の商品開発や販売、レストラン運営など幅広い事業を手掛ける久慈琥珀株式会社代表取締役社長の新田氏によると、久慈は日本で唯一琥珀が取れる地域。世界中を見ても数カ所しかない。実際に琥珀の採掘体験ができる場所があるが、世界的に見てもこういった体験ができる場所は他にはないと話す。「琥珀という漢字が中国に由来することもあり、中国や台湾からの観光客が時折訪れ、博物館を見学したり、買い物をされています」と話す。今回の商談会では、琥珀博物館などの施設だけでなく、久慈は、2013年にNHKで放映された「あまちゃん」のロケ地として撮影などが行われたこともあり、町全体の魅力を紹介して観光客を増やしていきたいという。

 

外国人に人気のコンテンツとのかけ合わせでいまある商品を訴求

欧米豪などの富裕層を中心に、オーダーメードの訪日旅行企画や手配などを行うEmilia Travelの稲見氏は「観光地としての知名度はなくても、日本の地域にある興味深い観光コンテンツを知ることができた」と話す。

Emilia Travelの稲見氏が面白いと話した観光素材の一つが「たたら製鉄」だ。砂鉄と木炭を原料として鉄を作り出す日本古来の製鉄法「たたら製鉄」で栄えた島根県雲南市吉田町では、日本古来のたたら製鉄により近い体験ができる観光コンテンツがある。たたら製鉄の体験ツアーの催行を手掛ける株式会社吉田ふるさと村観光事業部の石原氏によると「たたら製鉄の本格的な操業体験ができるツアーは、製鉄業や製造業関連の企業の職員研修としてのニーズがある。また、小学生でも参加可能な、たたらの原理や技を手軽に体験できる1時間程度のプログラムも用意している」という。旅行会社との商談について伺ったところ「面白いという声もいただいた。外国人にも人気の日本刀の要素を加えながら商品化するのがいいというアドバイスもいただいた。今後、インバウンド向けについても検討していきたい」とのこと。

 

地域の代表として、地域の魅力も積極的に発信

今回参加した事業者の方は、観光地として最近話題になり始めた、あるいはこれから観光に本腰を入れて取り組む地域の事業者が多く、インバウンドの受け入れは未知数という地域も多かった。ただ、自分が運営する施設への誘客だけでなく、町全体の訪問者数を増やすことを目的に、町全体のパンフレットや、近隣の観光サービスも一緒に提案する姿も見られた。

インバウンドに限らず観光で人を呼びこむためには、多様な魅力を伝えること、また、そのためにも同業種異業種かかわらず地域が一体となって取り組むことが大切だといわれる。

参加した事業者の方は、すでにそのことを理解し、「地域の代表者」としての意識を持っていることが印象的だった。

観光は今日の取り組みが、明日、明後日の誘客につながるとは限らない。長期的な視点が必要。そのことを理解している参加者の方もいた。「10年後の観光のことを考え、今できることをする」そういう気構えで参加している事業者の方の話を聞くことで、観光施策を長期的な視点で見ることの大切さを実感できる商談会だった。

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