インバウンドコラム
タイ最大級の日本総合イベント「バンコク日本博2022」が9月2日~4日、バンコク大型商業施設のサイアムパラゴンホールで開催された。熱気に包まれた3日間のイベントに、日本への高い興味を持つタイ人約9万3千人が来場した。主催代表の長谷川卓生氏(ジェイデュケーション)は、「3年ぶりに開催となったリアルイベントは予想以上に反響が大きかった」と語る。
約200団体が出展、タイ最大規模の日本博
このイベントは、2002年の「日本留学フェア」から始まり、2008年「日本留学&日本企業フェア」を経て、2015年にトラベル、ショッピング、フードなど様々なカテゴリーの日本総合イベント「バンコク日本博」へと規模を拡大しながら続けている。イベントを主催するジェイデュケーションは、年間約500名のタイ人留学生の日本への送り出しとバンコクで日本語学校(在籍約450名)を運営している。2018年からは、タイ最大手の人材会社パーソネルコンサルタントと共同主催、また日本の政府機関・地方自治体・民間などの後援・出展を募り、日本を大々的にPRしている。
3年ぶりのリアル開催となったイベントは、トラベルブース33団体、飲食ブース21団体、ショッピングブース20団体、サブカルチャーブース7団体、留学関連ブース37団体、就職関連ブース28団体、ステージ参加者28団体、タイ人学生ブース16校、政府機関4団体、スポンサー4団体、特別設置ブース3団体、合計 約200団体が出展し、日本PRイベントとしてはタイ最大規模となった。
当初は心配されたタイ人来場者も初日から好調で、特に飲食ブースには来場者による長い行列も見られた。
▲飲食ブースでは、たくさんの日本食がふるまわれた
3年ぶりのリアルイベント、会場は過去最高の盛り上がり
日系企業の出展を行ったタイ現地PR会社KKMの鈴木研氏は、「予想をはるかに超える好反応で、今まで経験したイベントの中で最高の温度感であった」と語る。鈴木氏の運営するブースでは、配布用の商品サンプル5000個が3日間で瞬く間になくなったという。
▲来場者に配布されたサンプル
また、東日本自治体の訪日インバウンドPRを行ったASIACLICK高橋学氏は、「タイ旅行エージェントの協力を得て、FIT商材の造成販売を行いましたが、タイ人の方からの興味反応が非常に高く、有益な情報を得ることができました」開催時に、日本への個人旅行ができない状況であったことからも、訪日旅行商品の販売数は少なかったが、「このタイミングでの販売の試みは、実施する価値があった」と言う。
トラベルゾーンの参加は、日本政府観光庁(JNTO)、北海道、東北、中部、中部、中国、九州エリアと広域エリアでの出展があった。また期間中、BTOBのアクティビティーとして、日タイで約50社が参加する「訪日トラベル商談会」が実施された。
政府機関からアイドルグループまで、日本をPRする総合的なイベントに
今年の日本博では、オープニングセレモニーで日本大使とタイ政府外務省が参加し、公的イベントの要素がさらに強くなった。
開会式では、日タイ文化交流を通じてアジアから世界に日本のエンターテイメントを伝える試みとしてLDH JAPANとHIGH CLOUD ENTERTAINMENT(タイ)がパートナーシップ契約を締結することが、在タイ日本梨田大使より伝えられた。LDH JAPANは、日本のダンス&ボーカルグループEXILEをマネジメントする会社で、今回EXILE関連グループのBALLISTIK BOYZ、PSYCHIC FEVERのふたつのグループがステージパフォーマンスを行ったほか、同グループがタイで武者修行を行うことも発表された。
イベント最後のステージは、タイで人気絶頂のBNK48グループがミニコンサートを行い、満場熱気に包まれる迫力を3年ぶりに感じた。
学生による出展、若年層を巻き込むイベントに
バンコク日本博で、前身のイベントから約20年近く行われているタイの有名大学の有志が参加する「大学生ブース」は、例年通り非常に熱気があった。これは、バンコク日本博の基幹となるコンテンツで、今年は「日タイ修好135周年」をテーマに、アサンプション大学、シラパコン大学など16大学対抗でテーマを決めて日本をPRした。今回は温泉やお祭り、神社などタイ人から見た日本のイメージや憧れがブースに表現されていた。また、全国の高校生を対象とする「日本クイズ選手権」では、予選で1000名以上の高校生の参加があり、優勝決定選が会場で行われた。優勝者には、日本への短期留学の権利が贈呈された。
▲タイの学生たちも巻き込んでのイベント
なぜ、日本博を開催するのか? その目的と意義
バンコク日本博は「大学生ブース」に見られるようにタイの若者を「参加者」だけでなく「出展者」としても巻き込む形で日本を伝えてきた。主催代表の長谷川氏によると「ここ数年、日本人気も勢いに陰りを見せている印象があります。その中で、今回のバンコク日本博は、日本に思いを寄せるタイ人若者の絶大な熱気がまだまだあることが伝わってきた」と語る。
親日として知られるタイでの人気ぶりを見ていると、日本人気は長く続いており、今後もポテンシャルを感じさせるものの、最近はヨーロッパ諸国や中国・韓国なども人気を集め、距離を縮めているという。
長谷川氏は、「我々のミッションとして、日本との関係性をさらに深めて、日本と関わり合う人生を送ってもらうタイ人を増やしていきたい」「日タイの友好関係の未来は、私たちの手の中にある」とメッセージを伝えた。
現地に足を運ぶからこそ感じられるもの
日本は、海外からの受入れの最終緩和策を周辺国と同じ水準まで下げることを表明した。タイの本格的な海外入国規制緩和が、2021年10月から始まったことと比較すると、日本は1年遅れとなっている。今回のバンコク日本博の高い熱気が、このまま訪日インバウンドはじめ、様々な分野の経済活性化へと波及していくことを期待する。イベントで見せたタイ人の熱気は、日本への旅が難しいこの時期にみられる一時的なものかもしれない。
タイにおける欧州や韓国などの注目度合いを見ていると、タイにおける日本人気の優位性を何もせずとも維持し続けられる時期も、もう終盤に差し掛かっているのでは、と感じることがる。
日本では感じることが出来ない場の熱気は、現場にいるから身をもって体感できるものだ。日本入国の規制が緩和されているいま、まずは、国を越えて現地に赴くことが最重要なのかもしれない。
(写真提供:バンコク日本博2022)
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