インバウンドコラム
タイ消費者に向けて、訪日観光PRと販売を目的とした「第14回VISIT JAPAN FITフェア」が2023年1月27日~29日の3日間 、3年ぶりにバンコク都内大型商業施設のサイアムパラゴンホールで開催された。日本からは観光関連団体、宿泊施設、交通事業者や関連サービス、タイから訪日旅行会社、航空会社、関連サービス企業など日タイ合計83団体・102ブースの出展となった。3日間で5万1610名が入場し、実際に1万1874名が会場で訪日関連の商品を購入。前回、2019年度実施の同イベントに近い盛況を見せた。
日本政府が個人旅行受け入れ再開して以降、タイ人の訪日は順調に増加しており、2022年10月は2019年同月比23.5%の3万4100人だったが、11月は同比37.1%の5万2000人、12月は同50.3%の8万3000人と、順調に回復している。春先に迎えるタイ人の旅行シーズンに向け、更なるタイ人訪日回復を促進するイベントになったのか現場の声を聞いた。
片道2万円、日本行きのお得な航空券を求めて長蛇の列
開催初日は、平日金曜日であったにも関わらず開場時間から会場全体に入場者が見られた。日本航空、ピーチアビエーション(関空-バンコク)、ベトジェット(福岡-バンコク)、エアアジア(東京・福岡・札幌-バンコク)などの航空会社ブースには、お得な日本行き航空券を求める長蛇の列ができた。関西へ就航したばかりのピーチアビエーションは、「バンコク-関空便片道4999B(約2万円)」プロモーションを行っていた。
訪日前提の詳しい情報を求めてPRブースに訪れるタイ人
鹿児島県観光連盟の川窪氏は「鹿児島の認知は予想以上に高く、鹿児島への訪問行程を持参して具体的な質問をするタイ人訪問者の比率が以前のPRブースより多い印象でした。今後、我々はPRと合わせて観光コンシェルジュ機能を持たなくてはいけないと思いました」と話していた。
▲鹿児島PRブース
人気観光地の札幌市の宗岡氏は「すでに来道を予定されている方も多く、訪日旅行への熱量を強く感じました」とタイ人観光客が成熟している状況を語った。
栃木県観光交流課の近藤氏は「タイ人にとっても日光や足利フラワーパークといった観光地はとても有名で、栃木の認知が上がっている印象です。タイの方から質問は、行き方や施設詳細や営業時間といった具体的なものが多いです。今回初めての経験ですが、タイ人スタッフの方と働くことも含めて楽しいPRのお仕事でした」と語る。
神戸・姫路観光ブースでは、来場者から「観光客の行かない高級神戸ビーフのお店」「有馬温泉への行き方と乗り物」「日本人が勧める温泉旅館」など、来訪前提としたタイ人の質問が相次いだ。
今回イベント主催をした日本政府観光局(JNTO)バンコクの土居所長は「訪日のポテンシャルが実に高くなっていることを感じることができた3日間のイベント」であったと総括した。JNTOの速報値によると今回来場の5万1610名は、2019年度比約92%となり過去の訪日ピーク時の勢いに迫った。
個人旅行が進むタイ、旅行会社は多様化するニーズに応える商品を展開
旅行会社のブースは、JRをはじめとする周遊パスやレンタカー、個人旅行関連の商材などを中心に販売していた。JRパスの販売ブースを訪れた来場者は「息子が留学で1年日本に滞在している。次の連休に一緒に日本国内を旅行する予定です」。また、別の来場者は「4月桜の時期に日本を訪問します。今からワクワクしています」と日本旅行への楽しみを語っていた。
個人旅行が成熟する中で、日本留学支援の母体を持つジェイエデュケーショントラベルは、アウトドア・サイクリング・キャンピングなどの目的型の訪日旅行、訪日教育旅行などのニーズに注目し、商品開発を進めている。ブースででは、目的型の訪日商品の販売を行った。日本のサイクリングコースを走る商品を今年の3月に向けて発売していくという。
▲目的型商品を販売するジェイエデュケーショントラベル
また、訪日トップエージェントのJプラン社は、他社のやっていない富裕層向けの訪日企画やディスティネーションを得意とするが、個人旅行の旅程を自由に作れる観光アプリをPlanIT社と開始する予定ということだ。行きたい観光地や宿泊施設などの入力をすることで、効率的な旅程を提案してくれるアプリということである。
▲個人旅行向けアプリを共同開発中のJプラン社のパタナ社長
まだ見ぬ日本を探して全国に足を運ぶ、2023年タイ人の訪日観光の行方
タイ訪日市場は、8割がFIT(個人旅行)で、7割以上が訪日経験2回以上のリピーターである。この傾向は今後一層進み、タイ人の旅行者は、ますます日本全国を個人で旅をし、まだ見ぬ日本をさがすであろう。「地域との人との出会い」「未経験の新しい観光」「明確な目的旅行」など、何回も訪日する理由が「日本の魅力」とともにある。
▲タイ旅行会社のブースには、お得な商品を求めて人だかりが
定型のフォーマットの旅行行程ではなく、「毎年行くお気に入りの温泉」「日本にいる家族や友人を訪ねる」「未知の体験」「マラソン大会に出場する」など、それぞれの志向にあった旅行スタイルで旅行をする人達が増えていくと予想できる。タイ人の訪日観光は、期間を経て新しいゾーンに突入している。
今後は、海外からのインバウンドの受け入れ体制と新しいスタイルの旅行者に合う観光ソリューションの構築が必要となる。今回のイベントは、その気づきの第一歩となった。
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