インバウンドコラム

【海外メディアななめ読み】サステナブルに旅する12の方法、今いる場所で「境界」を超える旅の形

2021.02.05

清水 陽子

印刷用ページを表示する



2021年が明けてすぐ、「ナショナル ジオグラフィック(National Geographic)』が『新しい年にサステナブルに旅する12の方法』と言う記事を掲載しました。

「コロナが落ち着いたなら、旅人たちはすぐにでも世界に飛び立ちたい衝動に駆られるかもしれない。しかし、今こそ、マスツーリズムがこの惑星に与える影響を、立ち止まって考える時だ。我々は、もっとサステナブルに旅行することができるのか。我々は旅によって環境保全を促進することはできるか。その答えは、はっきりと『Yes』だ」。と始まります。

今いる場所も、頭の上には未知の世界が広がっている

12の方法のその1は「頭上の宇宙を探検しよう」です。「ずいぶんまた意外なところへ飛んだな」と思いつつ読み始めると「私は人生のほとんどを地球にフォーカスを当ててきたのだが」と始まり「突然、星たちに心惹かれた。そして月に魅了された。望遠鏡を通してiPhoneで、月の天体写真を撮っているのだがそう難しいことではない」「月を眺めることは、私に安らぎと驚きを与えてくれる」と続きます。確かに、一歩も移動しなくても、頭の上には未知の世界が広がっています。今いる場所で、夜空を見上げ、そこにある宇宙に思いを馳せると言う「旅」の提案です。具体的な「宇宙への旅」の方法として「2021年の見るべき10の天体イベント」のリンクが貼られていて、まずは2月11日、早朝の空に、金星と木星の接近が見られるそうです。初めは突飛な話に感じましたが、なかなか楽しそうでワクワクしてきました。

頭の中の「垣根」を超えてゆくと言う「旅」の仕方

「12の方法」をざっと紹介すると「2、アウトドアを愛する」「3、国立公園などの公有地を楽しむ」「4、ボランティア科学者になる」「5、エシカルに買い物をする」「6、家族のルーツを辿る」「7、近隣を旅する」「8、読書の視野を広げる」「9、バーチャルツアーを利用して炭素排出量を減らす」「10、子供達を探検家にする」「11、新しいスキルを身につける」「12、家族旅行に集中する」の12です。

これらの中で、私が共通して面白く感じたのは、「都道府県の境」や「国境」、今は超えられない「境」が多々あるけれど、体は移動せずに、想像力で興味の「境」を超えていこうという試みです。

「4、ボランティア科学者になる」では、「科学のバックグラウンドは不要で、学ぶ気持ちがあればいい」とし、「コスタリカの蜂の保全」から、「バリ島のプラスチック汚染清掃の取り組み」まで、世界中には様々なリサーチプロジェクトがあることが紹介されています。3000ものプロジェクトがリストアップされたサイトも紹介されていて、「家を一歩も出なくても貢献できる」ものもあるそうです。

「6、家族のルーツを辿る」もいい考えです。両親やおじいちゃんおばあちゃんの思い出話を聞いて、その故郷について調べてみると、移動が可能なった時、その土地に対する愛情とリスペクトを携えて、旅するきっかけになりそうです。

「8、読書の視野を広げる」では、今まで翻訳本を読んでいたならば、原典で読んでみるという「限界」の超え方が提案されています。言語によるものの見方や伝え方の違いを感じることができて、異文化のより深い理解に繋がるかもしれません。

百聞のあとの一見は、さらに価値あるものになる

「百聞は一見にしかず」は紛れもない事実で、旅の醍醐味です。けれども、想像力を使って、見えないものを見ようとする事でも、視野を広げることは十分にできます。ネットで調べていたこと、本で読んでいたこと、想像していたことが、実体験と繋がる時、更なる感動と学びが生まれそうです。「旅」は地球を壊すものではなく、人々の意識を変え、世界を良くするものになり得ると思わせてくれる記事でした。

とりあえず行ってみる旅から、自分の興味を掘り下げるための旅へ

先日「トラベル・アンド・レジャー (Travel+Leisure)」には、『すべてのタクシーがうどんタクシーだったら良かったのにと願う訳 』と言う、香川県の「うどんタクシー」を紹介した記事が「CNNトラベル (CNN TRAVEL)」には『ようこそ和歌山へ、日本で最も過小評価されているグルメの地』と言う記事が掲載されました。

「うどんタクシー」とは、タクシーの上の「うどん」が目印で、うどんを知り尽くしたドライバーが、名店や穴場店を「うんちくガイド」付きで紹介してくれるタクシーです。

「CNNトラベル」の記事では「東京が世界有数のグルメ都市だということを否定する人はいない。しかし、和食や和食を作り上げている材料の原点を深く追求すると、和歌山にたどり着く」と始まります。今回紹介した「12の方法」の「10、子供達を探検家にする」には、「自分と家族を感化するものは何かを見極めて、それを軸にして旅の計画を立てよう」と書かれているのですが、これからの旅行は、自分たちにとって価値あるものを、じっくり味わうものになって行くべきです。そんな気配が、「うどんタクシー」や「和歌山グルメ」を報じた大手海外旅行メディア記事からも伺えるような気がします。

最新記事