インバウンドコラム
新型コロナウイルスによる感染が世界的に広がり、人や物の移動が滞り、経済的な影響も拡大している。そのような中、りそな総合研究所はコロナウイルスがインバウンド市場に与える影響を試算し発表した。
同研究所は2月13日「新型肺炎がインバウンド市場に与える影響」と題したレポートを発表、新型コロナウイルスが日本全体や関西圏に与える経済影響を試算した。その後、新型コロナウイルスの拡大の勢いや、それに伴う各種政策の発表を受け、前提条件や数値を見直したものを3月11日に発表した。今回は、それらのレポートについてみていく。
訪日客の落ち込み試算2~5月の4カ月から、6月までの5カ月に
りそな総合研究所が2月13日に発表した試算によると、全国で6244億円、関西(2府4県)では1905億円の影響が出るとしていた。当時の状況で想定しうる厳しい前提条件として、2月~5月の4カ月にわたる訪日客の落ち込みを踏まえた試算だったが、足元では3月に入って中国、韓国に対する入国規制が発表されるなど、想定以上に厳しい状況となり、さらなる悪化が懸念されている。
同研究所では現状を踏まえ、中国を中心とした減少率の引き上げのほか、訪日客が落ち込む期間を1カ月伸ばして2月~6月とするなど前提条件を見直し、3月11日に改めてインバウンド市場への影響額を試算し発表した。期間の伸長は、WHOがパンデミックを宣言するなど世界的な感染がここにきて拡大し、4月頃の終息に対する不透明感が強まったことが大きい。
2月の外国人入国者100万人割り込み、経済的インパクト全国で9813億円、関西は3042億円の減少と試算
また減少率の引き上げは、先日出入国在留管理庁が明らかにした「2月の外国人入国者数100万人を割り込み」という結果を織り込んだ。仮に100万人だったとしても、前年比では6割弱の減少となる。そのうち中国は前年の10分の1に減少、つまり9割の減少に見舞われたという。
これらの状況を踏まえた結果、全国では前回試算より新型コロナウイルスによる経済的影響を、当初の予定より36%増の9813億円、関西は同37%増の3042億円減少すると試算した。2019年の同期間の消費額に換算すると、特に関西での減少規模は51%とインバウンド消費が半減することになる。
費目別では、前回試算に比べて最も大きく増えたのは物販であり、他の費目よりも中国人客の占める比率が高いことが災いしたといえる。物販に属する業種といえば、百貨店やドラッグストアなどが挙げられるが、特にインバウンドが集中するエリアでの影響が懸念されるとする。
世界的な感染拡大が広がるなか、5月終息も不透明
今回の試算は、世界的な感染が5月頃には終息することが前提であるが、仮に日本での感染が落ち着いても、欧州や中東、米国などでの感染が続けば、当然ながら世界の観光市場が影響を受ける。さらに、新型肺炎の影響については、インバウンド消費の減少だけにとどまらない。大型イベントの自粛に加え、企業による宴会や会合の自粛、テレワークの実施、小中高校の休校などによって各種消費の減少を招くことになる。特に都市部の往来が減る悪影響は大きく、需要全体としては減少となるだろう。
また、中国の2月の製造業PMIはリーマンショック時の最低水準を下回っており、企業の生産活動への影響も出てくることが予想されている。3月以降の回復の動きも限定的とされ、金融市場では円高・株安の動きも加速している。企業収益のさらなる悪化の動きが加われば、観光だけにとどまらず経済活動全体として不況入りの可能性が一気に高まるのではないか、としている。
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