インバウンドコラム

観光事業者必読! 利益アップに欠かせない「高付加価値化」のポイント

2023.04.19

村山 慶輔

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ここ数年で急速に広がった「高付加価値化」の動きだが、2020年ごろから、観光庁の政策でも「高付加価値化」を目的とした事業が多く見受けられるようになった。

特に中小規模の事業者の割合が多く、生産性の低さが指摘される観光業では、利益アップはもちろんのこと従業員の待遇改善のためにも、観光事業者が一刻も早く着手すべきテーマでもある。サービスや商品を磨き上げ、付加価値を高めるべきことは、多くの方々が理解しているものの、具体的にどのように対応していけばいいか、悩んでいる人も多いかもしれない。ここでは「なぜ付加価値アップが必要なのか」「そもそも付加価値を高めるとはどういうことか」などの基礎を解説。取り組むにあたって、持っておきたい視点についても紹介する。

 

なぜ「高付加価値化」が大切なのか?

厚生労働省の発表によると、2022年の国内人口の自然増減数は78万人のマイナスとなっている。過去最大の減少で、前年比で17万人も多く減少した。これは人口75万人強の福井県と同規模の人口が消失したことになる。さらに、コロナ禍で婚姻数も減少しており、その結果、少子化がさらに加速することは明らかだ。

このように人口減少社会に入っている日本では、国内の旅行需要の縮小と働き手不足の2つは避けて通れない課題である。さらに、深刻な物価高騰も進んでいる。そのなかで観光業を持続的に発展させるためには、少ない人数でも効率的に稼ぐための仕組みを構築する必要がある。これを実現するのが「高付加価値化」だ。

付加価値とは商品・サービスに付け加えられた独自の価値のこと。独自の価値を磨き上げ、それを顧客に伝えていくことで、売上・利益を伸ばす。言い換えると、観光客の「数」だけでなく、「質」に焦点を当て、1人当たりの消費額を上げていく戦略が不可欠だ。

なお、ここでいう「高付加価値化」とは富裕層向けビジネスに限定した話ではなく、どんなビジネスでも当てはまる概念であることを認識していただきたい。仮に1泊1万円の宿があれば、それを1泊1万2000円にする。その2000円アップを実現することも立派な「高付加価値化」である。大切なポイントは、商品・サービスに独自の価値を加えることで、顧客に高い価値を感じてもらい、結果、高いお金を払ってもらうことだ。つまり、高くしても買ってもらえなければ意味がない。

 

高付加価値化「実践」のための3つのアプローチ

高付加価値化の手法については様々なアプローチがある。私はそれを「5つの切り口、26の施策」に体系化し、主宰する「観光バリューアップ実践会」の会員や全国の観光事業者に対して実践的な研修を行っているが、今回はわかりやすく3つの切り口に絞ってお伝えする。「取引単価を上げる」「取引点数を増やす」「正しく価値を伝える」だ。では、それぞれを具体的に見ていこう。

 

1「取引単価を上げる」

これは言葉の通り、1回当たりの取引単価を上げること。それを実現する1つの施策は「限定・特別感」だ。個人のニーズに合わせてカスタマイズするプライベートツアーはその筆頭になる。たとえば日本でもいち早くキャニオニングツアーを造成した、群馬県・みなかみ町でアウトドア・アクティビティを提供するキャニオンズでは、プライベートツアーの提供に注力することで、客単価アップを実現させている。

ちなみに、コロナ禍前より海外を筆頭に「貸し切り」というオプションが増えていたことにも注目したい。美術館や博物館、テーマパーク、公園といったところでも、「貸し切り」によって限定感を生み出し、高付加価値化が可能だ。たとえばバチカン美術館では、通常の開館前に貸し切りできる高単価のツアーを用意している。

 

2「取引点数を増やす」

1回当たりの取引点数を増やす、これが2つ目の切り口だ。具体的な施策の1つとして、「品揃え」に着目してもらいたい。アップセル(上位商品)といわれるより高い商品やサービスを提案したり、クロスセル(関連商品)と呼ばれる新たな商品やサービスの購入を促すことも大事である。たとえば体験ツアーであれば、時間(半日/1日/2泊以上など)や、難易度(初心者向け/熟練者向け)など、消費者の要望に合わせて設定したり、選択肢を設ける。関連商品としてグッズを販売したり、地域の飲食店や宿泊施設を組み合わせたプランを用意するといったことが考えられる。

 

3「正しく価値を伝える」

「高付加価値化」は商品・サービスに独自の価値を加えるだけでは実現しない。一番大切なことは「顧客にその価値が伝わるか」だ。価値が伝わらなければ買ってもらえない。つまり、どんなに価値を磨き上げても自己満足で終わってしまう。

では、何をすればいいのか。それは「正しく価値を伝える」ということだ。ここで例を挙げたい。りんごがあったときに、単純に「美味しいりんご」として売るのか、「日本一のリンゴの産地、青森県の木村さんが20年かけて開発した無農薬農法で作られたリンゴで、ミシュラン3つ星レストランでも使われている」と伝えるのかによって全く価値が変わるということだ。良いものを作って終わりではなく、そのストーリーまで伝えて初めて「高付加価値化」が実現するのである。

 

高付加価値化 = 値上げではない

3つの切り口について触れてきたが、「高付加価値化」は単なる「値上げ」ではないことも触れておきたい。というのも「値上げ」をすると顧客が減るので二の足を踏む経営者が多いからだ。

まず1つ目の「取引単価を上げる」は、「限定・特別感」を組み込んだプランを用意し、その価値に見合った価格で提供している。つまり「値上げ」ではなく、新たな選択肢を提示している。2つ目の「取引点数を増やす」においても、コアとなる商品やサービスの価格はそのままに、別の商品やサービスを組み合わせることで客単価を上げている。3つ目の「正しく価値を伝える」においては、商品やサービスが持つ本来の価値を最大限伝え切るということ。日本人はいいものを作り込むことは得意だが、その価値を伝えることに情熱を注ぎ、工夫を凝らすことが大切だ。

 

「人」によって価値を生み出し、持続可能な観光の一歩に

今後長い目で見ると、あらゆるサービス業は2つの方向性に向かう。1つは人的なサービスを重視した「高付加価値化」。もう1つは人的サービスを極力排除した「省人化」。いずれの方向を選ぶかは経営判断ではあるが、前者の「人」こそ観光の醍醐味であると考えている。そのためにも、「高付加価値化」を自分ごととして、何ができるのか、何から具体的に進めていくべきなのかを検討してもらいたい。そして、「高付加価値化」に取り組むことで、しっかりと利益を出し、その利益の一部をスタッフに還元し、スタッフと共に商品・サービスをさらに磨き上げ、その価値を顧客に正しく伝えていく。この循環を実現することこそが持続可能な観光業の一歩になると信じている。

 

 


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