インバウンドコラム

2024年 世界の消費者トレンド6つの注目トピックス、生成AIやサステナブル懐疑、広がる分断など

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英国を拠点とする国際的な市場調査会社のユーロモニターインターナショナルが、2024年版の「世界の消費者トレンド」を発表した。これは世界情勢の変化やテクノロジーの発展などに影響される消費者の生活スタイルの変化・動向を計測し、分析と考察を加えたもの。企業がビジネスチャンスの参考にするレポートとして毎年、世界から注目されている。

2024年の消費者嗜好は、6つのトレンドとして予測、紹介されている。2023年に引き続き、サステナビリティに関する課題や、AIなどの急激なテクノロジーの進歩がもたらす日常生活の劇的な変化に加え、消費者と企業の関係を左右する社会政治的な問題、世情を反映した消費者の創造的な倹約方法、などのトピックが挙げられた。それでは、一つ一つの消費トレンドを解説していこう。

(図版出典:ユーロモニターインターナショナル)

 

AIに聞け(Ask AI)

生成AIを用いたアプリやツールを用いることで、自分のニーズに最適化されたサービスが受けられることに、消費者は満足している。例を挙げると、42%の人がボイスアシスタントが提案するオススメ情報に抵抗がない、と回答。しかしチャットボットの利用では、複雑な質問を投げかけた場合の回答内容に満足する人は20%以下となり、消費者の期待にまだ十分対応しきれない能力への不満が表れている。

企業は、消費者の日常に深く浸透しつつある生成AIの強化・的確化に注力し、パーソナライゼーションによる顧客体験を向上させるべきだという。実際、自身の企業が今後5年間に生成AIに投資するだろう、と答えた業界関係者は53%に上っている。このことから、消費者の意思決定とAIの関係性を重大視している企業が増えているのは明らかだ。企業がAIに期待する具体的な内容としては、顧客データの分析から的を絞ったショッピングの提案やキャンペーン、人間的なやりとりを模倣したチャットボットの構築などが挙げられた。

企業は生成AIによる顧客体験の向上をどのように期待しているか(業界関係者)

上から順に
・顧客データを分析の上、よりインテリジェントな買い物を提案​​(49%)
消費者データに基づく、よりターゲットを絞ったマーケティング キャンペーンの作成(44%)
人間のやりとりを模倣する顧客サービス、チャットボットの構築(43%)

・商品ページの画像とコピーを作成、最適化し改善した商品ページの画像とコピーの作成(43%)
・旅行計画や買い物への統合(42%)

 

一瞬の気晴らし

日常のストレスから少しでも解放されたい消費者は、短い時間内でも感じられる小さな喜びや、心配事から解放されるひとときを探している。ドキドキ、ワクワクといった肯定的な感情をもたらしてくれる商品や、一時的な現実逃避ができる娯楽などに惹きつけられる人が増えている。

体験型の店舗で買い物したことがある人は55%、ブランドが自分の感情を計測することでユーザー体験が向上することに抵抗がない、とした人は29%となった。消費者はブランドや企業が提示する「幸せな瞬間」を、商品であれ娯楽であれ、肯定的に受け入れて楽しむ準備があることが示されている。このような消費者の訴求を反映させ、顧客のポジティブな体験の実現に繋げるブランドが、これから強くなると予想される。

 

サステナブルな生活を続ける消費者、企業の取り組みには懐疑的

気候変動に危機感を覚え、サステナブルな生活にシフトする努力を続けてきた消費者。2023年には64%の消費者が、日々の生活で環境によい変化を与えようとした、と回答した。環境改善への個人的な取り組みとして、食材の無駄を省く・プラスチック使用を減少する・リサイクルをするなどに努力したと答えたのは、全体の半分以上という結果になった。

その反面、企業や政府の環境問題への取り組み方に、懐疑的な思いを抱く人も増えている。組織は、地球温暖化にストップをかける真摯な行動や態度を、消費者に明確に示さなければならない。実際、業界関係者の45%が「今後5年以内にグリーンウォッシュのレッテルを避けるため、サステナブルの認証を取得する投資を計画している」と回答している。

消費者の信頼に値する企業となるよう、目標への達成方法や時間など、根本的な見直しが必要な場合もあるだろう。また、個人の行動では改善できない地球的危機への対峙から無力感を覚え、今までの努力を放棄する人も出てくると予想。地球的危機回避のための企業や政府の決定が有力に働いており、組織レベルと個人レベルの双方において絶え間ない努力が必要だ、と認識してもらわなければならない。

左上から順に
・環境に優しいという主張(62%)         ・持続可能な調達への主張(56%)
持続可能な包装に関する主張(60%)       ・節水または水なしの主張(40%)
・低炭素またはカーボンニュートラルの主張(58%) ・廃棄物ゼロの主張(32%)

 

広がる分断

世界の政治的・社会的分断は広がる一方だ。2024年は米国などの主要国で大規模な選挙が予定されており、主張や価値観の溝が更に深まり、各国で緊張感が高まる可能性が高い。消費者の37%が、これから5年は自国の政治が落ち着かないだろう、と予測。

また自分は政治や社会的な問題に積極的に関わっている、と答えたのは32%となった。ブランドが企業方針として方向性を掲げてターゲットの客層にアピールすることは効果的だが、同時にそれが社会的・政治的なメッセージを持つものであれば、消費者の反応を予測するのは難しい。一つ言えるのはマーケティングのメッセージが、政治的・社会的に敏感な内容を含んでいると、消費者の反応は素早いということだ。

特に、搾取的な要素が感じられるものには敏感だ。自分の信念に呼応するブランドを選ぶと回答した人は30%強、信念を主張する全てのブランドを避ける、とした人は約25%だった。ただ、消費者が持つ個人の信念は、必ずしも行動に影響するわけではなく、買い物については信念の違いに拘らない、と答えた人もおり、ブランドへの反応は自身の信念のあるなしに関わらないことが見てとれる。ただ、企業は自社が打ち出すメッセージと繊細な消費者感情との関係に、十分に注意を払うことが必要だ。

▶消費者の政治的および社会的活動

左から順に
・自分の信念に呼応するブランドを選ぶ
・ブランドの社会的・政治的信条に基づいて購入を決定する
・社会的・政治的信条を共有できないブランドや企業をボイコットする

 

クリエイティブな倹約家

消費者の経済的価値観は、インフレにより大きく変動した。消費者は、物価高騰により消費パターンの変更・家計の見直しを余儀なくされ、生活費を切り詰める方法を編み出している。日用品の値上げが心配だと回答したのは74%にも上り、44%がこれまで以上に節約するつもりだと回答。経済不安がもたらした購買力の低下は、インフレの多少の減速では収まらず、節約優先の生活が続いているのが現状だ。

しかし、創造的な倹約方法でライフスタイルを刷新し、現況に対応する消費者の様々な工夫が見えてきている。例えば、クレジットカードやロイヤリティポイントの活用、ブライベートレーベル製品などの品質がさして変わらない代替品などで出費を抑えるなどだ。このような日々のやりくりを続けながら、お金のかからない娯楽も見出し、日々を楽しんでいる。企業には、お得感のある商品・娯楽に敏感になった消費者の心理を掴み、魅力的に映る新しい提案や商品を創出することが求められている。

 

お手軽ウェルネス

心と体の健康は、現代の消費者にとって重大な関心事であり、セルフケアの時間や手間を惜しまない。日常に取り入れられる簡単な方法で、効果的と感じられることに目を向けている。劇的な変化を求めているわけではなく、毎日の小さな努力を重ねることで、少しずつ効果が見えてくることに期待している。ウェルネス向上に貢献する商品に対する意識は高く、「効果が保証されている美容商品には投資する覚悟がある」と答えたのは85%となった。

また、美容・健康業界で目覚ましい発展を続ける革新的な科学技術にも注目しており、結果が得られるなら全く新しい解決策や、今まで試したことがなかったアプローチを導入したい、としている。心身の健やかさを意識し維持したい消費者に向け、企業は効果的で扱いやすく、質の良い商品を開発、提供することで消費者の心を掴むべきだという。

 

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