インバウンドコラム

【徹底解説】2024年度観光庁予算決定、前年比64%増の503億円。前年比大幅増の施策は? ガストロノミーなど3テーマ新規計上

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観光庁はこのほど、2024年(令和6年)度の当初予算が決定したことを発表した。8月に発表していた670億4700万円に対して503億1800万円、前年比64%増となった。インバウンドの順調な回復を受けて、空港や公共交通機関を利用しやすくする施策や地方部への誘客施策が多く盛り込まれた。ここでは前年までとの違いを主軸に、主な内訳や、特に注目すべき項目などを詳しくみていく。

(図出典:令和6年度観光庁関係予算決定概要)

 

持続可能な地域づくり、地方誘致、国内交流拡大の3本柱

まず財源別にみてみると、一般財源は前年度109億円から約9億円減少の100億2500万円、国際観光旅客税財源はインバウンド客の本格的な復調を受けて前年度197億円から倍増の402億9300万円となった。東日本大震災復興予算では、福島県への支援事業とブルーツーリズム事業ともに前年と変わらず、合計で7億6500万円を充てる。2023年度の第2次補正予算として689億3000円も決定した。

前年度はコロナ禍が明けてすぐだったため、痛手を負った観光分野の基盤整備やインバウンド回復に向けた足がかりとなるような予算配分がみられたが、2024年度は8月の予算概算要求時と同じく、(1)持続可能な観光地づくり、(2)地方へのインバウンド誘客、(3)国内交流拡大の3つの柱に集約された。3本の柱の内訳をみてみよう。

 

持続可能な地域づくりに向けたインバウンド受け入れ整備に注力

(1)持続可能な観光地域づくり………51億6300万円

持続可能な観光地域づくりの実現に向けて、最も多くの予算を充てたのが、「地域における受入環境整備促進事業」の13億7400円だ。オーバーツーリズムの未然防止策に取り組む地域や持続可能な観光に関する国際認証等を受けた地域に対して、パークアンドライドなどの面的な設備導入や改修費の3分の1から2分の1を支援する。宿泊施設に対しては、多言語翻訳機やキャッシュレス決済を導入するなどしてストレスフリー、バリアフリーな環境を整備する場合に2分の1を支援する。

2022年から2023年度へは約4倍と大幅に増額された観光産業における人材不足対策事業は前年度比1.2倍の1億8000万円となった。8月の予算要求時には4億円を要求していたものの、結果的には半分程度の額にとどまった。具体的には、外国語人材の確保や観光人材の育成を支援するとともに、2024年度から新たに複数の事業者間で連携してバックヤード人材の共有を図り、省人化を目指す。

さらに、持続可能な観光地「持続可能な観光推進モデル事業」にも1億円を計上。DMOや地方公共団体を対象に、観光庁が提供する日本版持続可能な観光ガイドライン(JSTS-D)研修を受講した上で、地域の持続可能な観光計画を策定する場合、2分の1を補助する。既にJSTS-Dの認定を受けている、または認定に準じるDMOや地方公共団体に対してはマイカー規制や自然環境保護につながる観光GX(グリーントランスフォーメーション)を推進するモデル実証を直轄事業として行なう。

観光地、および観光産業のデジタル分野における変革については、「全国の観光地・観光産業における観光DX推進事業」として11億3000万円を充てる。旅行消費額拡大とリピーター獲得を図り、稼げる観光地を目指すために、地域全体でマーケティングデータを有効に活用し、観光DXを強力に推進する。

DMO関連では「世界に誇る観光地を形成するためのDMO体制整備事業」に前年比8倍の4億円と「DMOを核とした世界的な観光地経営モデル事業」に1億5000円を充てる。

そのほか、通訳ガイド、民泊、統計については前年度からほぼ横ばいとなっている。

 

地方滞在と周遊活性化に向け、観光資源の活用を促進、DMOへの支援も

(2)地方を中心としたインバウンド誘客の戦略的取り組み………439億4600万円

2本目の柱は内訳17項目に及ぶ。どれも、政府が掲げる2025年までにインバウンド客一人当たり、地方部での滞在日数を2泊とする目標達成に向けた施策となっている。

「地方部での滞在促進のための地域周遊観光促進事業」に5億6300円を充て、登録DMOを対象に、①調査・戦略策定、②滞在コンテンツの充実、③受入環境整備、④旅行商品流通環境整備、⑤情報発信・プロモーションまで総合的に支援する。

ほかにも全国各地にある文化資源の活用に81億1600万円、国立公園の活用に50億9900万円を充て、地方部への誘客を積極的に後押しする。

また、「新たなインバウンド層の誘致のためのコンテンツ強化等」に19億8600万円を計上。具体的にはサステナブルな観光コンテンツのモデル事業や専門ガイドの高度化などの取組に対して2分の1を補助する。また、古民家など歴史的町並みの保存・改修などにも2分の1まで補助する。

 

2023年度比で予算が大幅増となった事業は?

前年度との比較で突出して大きな伸びとなったのは、「空港におけるFAST TRAVELの推進」15億6000万円(前年比1217倍)と、「公共交通利用環境の革新等」の5億円(前年比500倍)だ。ほかにも、円滑な出入国、円滑な通関にそれぞれに72億円、25億円が計上されており、合計117億円にのぼる。顔認証システムなど、コロナ禍で重要視された非接触サービスをより一層浸透させ、出入国の迅速化を目指す。交通事業者向けには、訪日外国人旅行者のニーズが特に高い多言語対応、無料Wi-Fiサービス、トイレの洋式化、キャッシュレス決済の4つをセットにして整備することを推奨し、2分の1まで補助する。

2025年大阪・関西万博開催に向けた予算としては、「文化資源を活用したインバウンドのための環境整備」81億1000万円の中に盛り込まれている。そのほか、MICE誘致に前年度比4倍の9億円、スノーリゾートに前年度比10倍の17億5000万円が充てられる。

 

新たに決まった3つの予算は? 地方部の高付加価値化と消費増を目指す施策

今回新たに予算が決まった項目が3つある。いずれも、いずれもインバウンド客の地方誘致を目指したもので、高付加価値で旅行消費額拡大に資する施策となっている。

・地域一体型ガストロノミーツーリズム推進事業…20億円
・地域一体となったインクルーシブツーリズム促進事業…8000万円、
・ストーリーで繋ぐ地域のコンテンツの連携促進事業…2億5000万円

ガストロノミー事業は新規となっているが、前年度5600万円を計上した「地域の資源を生かした宿泊業等の食の価値向上事業」を引き継ぐ形で、対象を宿泊事業者だけでなく、地域の観光に関わる民間事業者全体に広げた。

インクルーシブツーリズムは、ベジタリアンやヴィ―ガン、ムスリムなど多様な食習慣を持つインバウンド客に対応できるように、メニュー開発や食のピクトグラム表示、礼拝所の設置など専門家による伴走支援を行う。

ストーリーでつなぐ地域コンテンツ事業は、例えば武士道をテーマに居合道や茶道を各地で体験しながら、武道、武家文化に息づく武士道精神を体感し、日本人が大事にする考え方について学ぶなどして、1週間以上の長期滞在につながるようなツアー造成を支援する。

 

(3)国内交流拡大…6億4500万円

なお、3つ目の柱である国内交流は、前年度比とほぼ同じ額で新たな交流市場・観光資源の創出事業に6億1500 万円、ユニバーサルツーリズムに3000万円を計上した。

令和6年度(2024年度)観光庁関係予算決定概要詳細はこちら

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