データインバウンド

世界の航空利用客への調査、8割がコロナ感染への不安感じる 乗客全員のPCR検査は安心材料に。収束後には旅行意向も

2020.07.06

刈部 けい子

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IATA国際航空運送協会)が今年2月、4月、6月に、新型コロナウイルス感染症の意識調査を行なった。近い将来に対する乗客の旅行への考え方を知ることで、航空業界の回復へのガイドラインになればとのことで実施されたものだ。2019年7月以降に旅行をした4700人(オーストラリア、カナダ、チリ、フランス、ドイツ、インド、日本、シンガポール、UAE、イギリス、アメリカ)を対象にした。回答者の旅行形態はビジネスと観光が50%ずつだった。

まず、「新型コロナウイルスに感染する不安」について尋ねたところ、感染の拡大を示すように、2月と比べて4月は90%が「不安を感じている」と回答し、「非常に不安」を感じている人も53%と最も多くなった。一方、感染が収まった地域も徐々に出てきた6月は「非常に不安」を感じている人が41%とわずかだが減少している。

 

手洗いの意識高く

「新型コロナウイルス感染を防ぐためにどのような対策をとっているか」についての質問には、「以前よりも頻繁に手を洗う」「大勢の集まりを避ける」が共に70%台で、「マスクをつける」「外出を避ける」が60%台で続いた。また、収束後も「手を洗う」は73%の人が続けていくと答え、あとの3つも過半数が続けると答えた。

上記質問に対する回答で「航空機での移動を避ける」と答えた人が58%いたが、「空港で感染の不安を感じる」のは、「混雑したバスや電車の中」と回答した人が59%、「チェックイン時などの行列」が42%、「トイレの使用」が38%となった。こうした不安要素をできるだけ少なくすることも、旅行需要の回復時には望まれることだ。また、「機内では隣に感染者が座るかもしれないことへの不安」を感じている人が65%いた。

 

収束後、旅行再開は半年後

「感染収束後の旅行再開の見込み」に関する質問について、4月と6月の回答結果を比べると、6月のほうがより消極的になっているのがわかる。これは当初の予想よりも収束に時間がかかっているのが心理的な影響を与えているのではないか。それでも6月の時点では「収束後半年で再開したい」との回答がもっとも多いのは希望の持てる数字といえるだろう。

 

「PCR検査」「防護装置着用」「定期的消毒」が望まれる

「どのような対策を講じていれば安全と感じるか」という質問には、「乗客全員がPCR検査を受けている」(とても安心41%、やや安心43%)、「空港や航空機のクルーがマスクや手袋など防護装置をつけている」(とても安心38%、やや安心46%)、「空港や航空機が定期的に消毒されていること」(とても安心36%、やや安心48%)が上位3つとなった。

また、「旅行再開に際し新しい対策を講じること」について、「出発・到着時の検温」(43%)、「機内でマスク着用」(42%)、「空港へ着いてから出るまでのマスク着用」(41%)、「オンライン、または他人との接触を最小限にしたチェックイン」(40%)、「出発時のPCR検査」(39%)、「搭乗後に除菌シートで自分のまわりを拭く」(38%)には比較的協力的な意見が多かったが、「14日間の自主隔離」は17%しか望んでいないことがわかった。

 

UNWTOのグローバルガイドライン

なお、国連世界観光期間(UNWTO)のグローバルガイドラインでは、「安全な空の旅」の項目として以下が提案されている。

1. リスク評価に従い、必要に応じて、適切な衛生診断手順を実施する。
2. 機体や客室の清掃の頻度を増やし、より一層丁寧に行う。
3. 乗客と乗組員へのマスクの提供と、飛行中の確実な使用について検討する。
4. 身体的距離の確保に関するルールに従い、他の乗客や乗務員との接触を減らすための乗降手順(前方及び後部のドアを使用)を実施する。
5. 飛行中は客室内の移動を制限する。
6. 機内食及びその他の手順を簡素化し、乗組員の移動や乗客との接触を減らす。
7. ロードファクターの視点から、可能であれば、乗客が隣り合わせにならないように促進する。
8. 乗客や乗組員に機内用の消毒ウェットティッシュを提供する。
9. 機内に持ち込む荷物(印刷物・お土産)の数を減らし、手荷物を制限する
10. 国の財政支援を含む空港に係る費用の軽減を推進する。
11. 国際民間航空機関(ICAO)のプロセスだけでなく、国内での調整メカニズムを含めて、政府、空港、その他関係者との協調体制を確保する。

 

 

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