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欧州航空路線は相次ぐ欠航で大混乱、航空運賃上昇やインフレで旅行マインド低下の懸念

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夏休みシーズン真っ只中のヨーロッパ。人手不足が原因で、各地の航空会社や空港では、パンデミック後に急回復した旅行需要の対応に苦慮している。フライトの欠航や遅延に加え、チェックインの長蛇の列、さらにチェックインしたにもかかわらずフライトに乗れなかったという旅行者からの報告も相次ぐ。

航空業界で生じているこうした混乱の実態を明らかにしようと、スペインの旅行調査会社ForwardKeys(フォワードキーズ)が調査を行った。フライト欠航続出の実態を分析するとともに、この事態が消費者心理にどのような影響を与えたかについて報告している。

(図・表出典:ForwardKeys)

 

ヨーロッパの夏のフライト、900万席がキャンセル

まず、世界全体で7、8月に予定されていた国際線の座席数のうち、実際にどの程度減少したかを数値で確認しよう。5月30日と、その6週間後の7月11日時点で予定されていた座席数を比較したところ、世界全体では4%、座席数にして1430万席が減少していた。大陸ごとでは、減少率が最も高かったのはアジア太平洋で、10%減(460万席減)。一方、座席の数で比較した場合、最も減ったのはヨーロッパで900万席減(率にして5%減)。その他、南北アメリカが2%減(100万席減)で、アフリカと中東ではほぼ変化なし、という結果だった。

▶︎国際線到着予定座席数の変化(2022年5月30日と、7月11日時点の7-8月とを比較)

 

 

最も多い欠航は、アムステルダム行きの便

次にヨーロッパに注目してみよう。域内のフライトは全体で5%減っていたが、国別では、オランダが最も減少率が高く8%減。続いてイギリス(7%)、スウェーデン(7%)、ドイツ(6%)と続く。

都市別では、キャンセル率が最も高かったのはアムステルダムへ向かう便で11%減、アムステルダムは混乱が最も大きい都市となっている。以下、ロンドン、ミラノ(いずれも8%減)、フランクフルト(7%減)、イスタンブール(6%減)、コペンハーゲン、ローマ、ミュンヘン(いずれも5%減)と続いた。

▶︎欧州域内到着予定座席数の変化(2022年5月30日と、7月11日時点の7-8月とを比較)

 

 

多くの減便で旅行者の信頼感も低下

5月末から7月にかけて相次いだフライトの欠航によって航空業界に生じた混乱は、消費者心理にもマイナスの影響を与えた。下のグラフは、ヨーロッパ域内での7〜8月の航空券発券状況をパンデミック前の2019年と比較したものである。夏の旅行シーズンに向け4月後半の発券数は2019年を超える勢いがあったが、欧州各地の空港で混乱が始まった5月末から航空券発券は減り続け、7月10日までの1週間は、2019年の水準と比べ44%ダウン。アムステルダムからヨーロッパ各国都市に向かう便は59%減、ロンドンからは41%減となった。

▶︎7〜8月のヨーロッパ域内旅行の発券数の推移(2022年1月〜7月10日までに発券された分、2019年と比較)

 

航空業界に対する消費者の信頼感の低下は、予約変更数にも表れている。5月30日から7月10日にかけ、旅行者がフライトをキャンセル、または変更した数は急上昇。率にして、2019年レベルの3倍にものぼり、旅行業界の今夏の見通しに非常に大きなマイナス影響を与えることとなった。

 

懸念すべきは旅行者の旅行マインド低下

人手不足が原因で、航空会社によるフライトのキャンセルが相次いだ今回の事態だが、ForwardKeysのインサイト部門長であるオリビエ・ポンティ氏は、空港での人員確保はいずれ達成されると自信をもって答えている。

一方、ポンティ氏が懸念するのは、旅行需要に抑制がかかりつつある今の状況だ。ロシアによるウクライナ侵攻の影響で、原油価格の高騰から航空運賃が上昇する、また、インフレにより旅行者の大半が運賃を支払えなくなるかもしれない。そのうえ、航空チケットの検索や予約の低下、キャンセル数の増加は現在も止まらない状況で、この混乱ぶりに拍車がかかり旅行需要に抑制がかかる可能性を危惧している。

 

 

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