データインバウンド

2022年の世界観光動向、コロナ前比約半数回復。今後の予測 欧米とアジアで大きな差 —UNWTO

印刷用ページを表示する



UNWTO(国連世界観光機関)は最新の「世界観光指標」で、2022年1月~5月の世界の観光動向を振り返り、今後の予測を発表した。政治、経済に関わる課題が山積する中、力強く回復の道を歩み続ける国際観光産業。ここまでの状況を分析し、2022年後半のシナリオを伝える最新レポートを見ていく。

 

2022年1~5月の旅行者数は前年同期比の3倍以上

レポートによると、2022年1月~5月までの世界の旅行者数(国際観光客到着数)は2億5000万人。7700万人を記録した前年同期の3倍以上になる。パンデミック前と比較すると、2019年のほぼ半数(46%)まで回復した。

なかでもヨーロッパの旅行者数は、前年同期の4倍以上(350%増)。域内需要の伸びと、渡航規制を解除する国の増加に後押しを受けた。北中米は2倍を超える112%増を記録。しかし、ヨーロッパも北中米も、低調だった昨年と比べれば大きく伸びたものの、2019年の水準と比較すると、それぞれ36%、40%下回ったままである。

中東とアフリカも同様の傾向で、前年同期比では157%増、156%増を記録したが、2019年の水準からは54%減、50%減。アジア・太平洋地域は前年同期比では約2倍の94%増だが、2019年と比べると未だ90%減という状況だ。

地域別データによると、カリブ海、中米を筆頭に、南・地中海ヨーロッパ、西ヨーロッパ、北ヨーロッパが、パンデミック前の70~80%まで回復している。

 

観光消費額も着実に増加

ヨーロッパや北中米では、旅行者数の着実な回復に呼応し、旅行先での支出額も増加している。フランス、ドイツ、イタリア、アメリカからの観光客による支出は、パンデミック前の70~85%のレベルに達している。インド、サウジアラビア、カタールからの支出は、2019年のレベルをすでに突破した。

国際観光収入面では、パンデミック前の水準にまで回復した国はメキシコ、クロアチア、ポルトガル、トルコなど。回復した国の数は徐々に増えている。

 

景気後退など、旅行需要回復を阻む不安要素

現在、北半球は夏のホリデーシーズンに入っていることに加え、アジアの国でも渡航制限の緩和が進み、旅行需要の増大が見込まれている。国際民間航空機関(ICAO)によると、航空座席数の減少は2019年の20~25%程度にとどまるという。航空業界での回復ぶりはホテルの稼働率にも表れ、世界の客室稼働率は2022年1月の43%から、6月には66%に伸びている。

しかし、予想を上回る需要回復を契機に、運営面や人員の確保で課題が生まれている。ロシアによるウクライナ侵攻、インフレと金利の上昇、景気後退の懸念も、回復へのリスクとなり続ける。国際通貨基金では、世界的な景気減速を2021年の6.1%から、2022年には3.2%、2023年には2.9%になると指摘している。

 

アジア・太平洋地域の回復は2019年の30%程度と予想

2022年の今後について、UNWTOが5月に発表したシナリオでは、2022年の国際観光到着数はパンデミック前の55~70%になると予想する。旅行規制の変更、インフレの進行、エネルギー価格の高騰、経済全般の状況、ウクライナ侵攻の行方、パンデミックによる健康問題といったさまざまな事情が、結果を左右するのはいうまでもない。人手不足による空港の混乱やフライトの欠航、遅延など、ここ最近の課題も、最終的な旅行者数に影響を与えるだろう。

地域別の予想では、ヨーロッパの旅行者数は2019年の65%、ないしは80%、北中米では63~76%に達し、パンデミック以降で最高の実績を残すと見込まれる。アフリカと中東では50~70%。一方、アジア・太平洋地域は入国規制などで後れをとり、最大限に回復したとしても2019年の30%にとどまると予想される。

 

最新のデータインバウンド