データインバウンド

2022年1-7月国際観光動向、コロナ前比で約6割。世界情勢悪化により回復鈍化と予測 ― UNWTO

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UNWTO(国連世界観光機関)は「世界観光指標」で、2022年1月~7月の最新データを発表した。世界全体でパンデミック前の約60%の水準を取り戻した国際観光産業だが、コロナ関連の制限撤廃が進むヨーロッパと中東がけん引する7月までの動向と、専門家委員会による9月以降の見通しをお伝えする。

 

ヨーロッパと中東では70%以上の回復

UNWTOの最新データによると、2022年1月~7月の世界の旅行者数(国際観光客到着数)は推定4億7400万人。昨年同期のほぼ3倍(172%増)で、パンデミック前の2019年との比較では6割近くまで回復した。このうちの65%にあたる3億900万人が訪れた先はヨーロッパだった。

旅行者数が特に伸びたのは6月と7月で、この2カ月で44%にあたる2億700万人が国外に出かけた。

 

地域別に見ると、ヨーロッパと中東の回復が最も好調だ。パンデミック前の2019年との比較で、ヨーロッパは74%、中東は76%まで回復が進んでいる。ヨーロッパは力強い域内需要とアメリカからの多くの訪問客、さらには域内の大多数の国で渡航制限が解除されている点が追い風となり、特に7月の旅行者数は2019年の約85%に上った。

1月~7月の対前年同期比で到着者数が約4倍を記録した中東では、7月にはパンデミック前の水準を3%超える数を記録した。これは、イスラム教徒による年1回の大巡礼(ハッジ)が2022年は7月にあたり、3年ぶりに外国人の巡礼も受け入れたため、高い数字となった。

ほかの地域では、アメリカがパンデミック前水準の65%、アフリカが60%まで回復。アジア太平洋の回復率は遅々として進まず、14%にとどまっている。

 

国際観光支出も好調だが、回復は鈍化の兆し

好調な回復ぶりはアウトバウンドの旅行者の観光支出にも表れている。2022年1月~7月のフランスにおける海外旅行者の支出はパンデミック前の12%減、ドイツは14%減、イタリアは23%減、アメリカは26%減と、いずれも、コロナ前と比べて8割程度まで回復している。

ここまでの需要は予想を上回るものだったが、一方で課題も生まれている。観光に携わる企業やインフラ、特に空港ではオペレーション不全や労働力不足が発生。ロシアによるウクライナ侵攻で悪化する経済状況、金利の上昇、エネルギーや食料品の値上げ、世界銀行が指摘する世界的な景気後退は、2022年から2023年の国際観光産業の回復にとって大きな脅威となる。

UNWTOの最新の信頼指数の低下や、勢いに陰りが見える予約状況から、回復鈍化の兆しが見える。

 

専門家は今後2023年までを慎重ながらも楽観視

2022年も残り3カ月となったが、UNWTOの観光専門家委員会では、2022年9月~12月の見通しを200点満点中111点と予測。半分を上回る点数ながらも、前の4カ月(5月~8月)について評価した125点を下回る予想だ。前向きに予測する専門家は半数近く(47%)。変化なしが24%で、悪化するとの回答は28%だった。

2023年については、65%の専門家が2022年より良い数字になると答え、自信をのぞかせる。

国際観光客到着数が2019年の水準に戻る年はいつか。2024年以降と見る専門家は61%いる。5月の時点では2023年と答えた専門家は48%いたが、今回は27%に減少。回復の足かせとなる要因は引き続き経済環境である。

着実な回復を続けながらも、困難を抱える観光産業。UNWTOのズラブ・ポロリカシュヴィリ事務局長は「観光産業は世界中の人々に希望とチャンスを取り戻している。観光はどこに向かい、人々と地球にどのように影響を与えるか、今こそ観光を見直すときだ」とメッセージを送っている。

 

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