データインバウンド
2022年10-12月の旅行動向予測、ドル高・ユーロ安が欧州の旅行市場回復に貢献、都市部が人気
2022.10.28
やまとごころ編集部2022年も残すところ2カ月余りとなった。インフレ、景気後退、原油価格の高騰、ウクライナ侵攻と、暗いニュースに事欠かない中にあっても、第4四半期(10~12月)もヨーロッパの旅行回復は続きそうだ。日本での入国規制の大幅な緩和と、時ほぼ同じくして規制を緩和した香港など、アジアの動きはヨーロッパにとっても朗報で、回復のさらなる追い風となるだろう。スペインの旅行調査会社ForwardKeys(フォワードキーズ)が発表した、航空券の予約状況をもとに分析した第4四半期の展望を見ていこう。
(図表出典:ForwardKeys)
ヨーロッパの都市部への旅行回復に勢いがつく
ForwardKeysの航空券発券データによると、2022年後半は大幅な改善が見られ、第3四半期(7~9月)はヨーロッパ全体では、パンデミック前の2019年レベルの29%減まで回復。ヨーロッパ以上に回復が進んでいるのは、中東・アフリカ(19%減)と南北アメリカ(24%減)だ。
下の図の色がついた数字(%)は、第4四半期(予約状況)のヨーロッパの国際線到着者数を、2019年と比べたものである。カッコ内(Q3)の数値は第3四半期と2019年との比較だ。マイナスの数字が低いほど回復していることを示す。
▶︎2022年第4四半期のヨーロッパの国際線到着者数(2019年比)
ビーチが人気の南ヨーロッパでは、早い段階からすでに回復が進んでいたが、ここにきて数字は横ばい。一方で回復が進むのが、北欧、そして、都市部への旅行だ。
下のグラフの青い軸が都市部への国際線到着者数を示している。10~12月は現在の予約者数をもとにした数字だが、2019年との比較で、マイナスの数字が月を追うごとに小さくなっている。
▶︎2022年ヨーロッパの国際線到着者数の推移(2019年比)
赤=ビーチ、青=都市部
ドル高・ユーロ安でアメリカからヨーロッパへの旅行者が増加
都市別に見てみよう。9月28日時点での第4四半期の予約状況では、イスタンブール、リスボン、マドリードへの旅が、夏休みシーズンを過ぎてもなお好調だ。特にイスタンブールは、ヨーロッパ域内と長距離路線ともに回復し、現在の予約は、2019年の水準を超えている(6%増)。
欧州都市が旅行先として好調な要因のひとつが、ドル高・ユーロ安だ。第3四半期にすでにアメリカからヨーロッパを訪れた旅行者の数は、2019年レベルのわずか6%減。都市によっては、リスボン(47%増)、アテネ(27%増)、ミラノ(12%増)と、2019年レベルを大きく上回る都市もある。
リスボンは、第4四半期にはさらに多くのアメリカ人を受け入れることになりそうだ。2019年との比較で、サンフランシスコからの旅行者数は2倍以上、ワシントン、マイアミからも2倍近い数となる見込み。アメリカ市場とリスボンを結ぶ新路線開設の戦略が実りを見せ始めている。
アジアの旅行再開でヨーロッパ便の予約も増加
ロシアによるウクライナ侵攻に航空運賃の値上がりと、旅行業界の今後にとって不安材料は多い。しかし、第4四半期の予約状況を見る限りでは、懸念をよそに、強い旅行需要が続いている。
好調なアメリカーヨーロッパ便に加えて、主要なアジア市場で往来の足かせとなっていた制限が大幅に緩和され、旅行が再開した。香港では9月26日から帰国後のホテル隔離が撤廃され、日本も10月11日から入国者数上限が撤廃されるなど、旅行しやすい環境が整った。下のグラフは日本(赤線)と香港(青線)からヨーロッパへの到着者数を2019年と比較した割合だ。10月7日時点での予約状況を示しているが、制限撤廃前は20%を下回っていた到着者数が、撤廃後は着実に伸び、ヨーロッパは今後、アジアからの恩恵を受けることになりそうだ。
▶︎2022年アジアからヨーロッパへの国際線到着者数の推移(2019年比)
グレー=アジア全体、赤=日本、青=香港
旅行需要回復の一方で、懸念があるとすれば、クリスマースシーズンを迎えるホリデーラッシュだ。ヨーロッパの空港や航空会社にとっては、この夏に起こったような混乱の再発防止へのプレッシャーがかかる。
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