データインバウンド

欧州の小国アルバニア、コロナ禍でも観光業力強く回復「地中海観光のダークホース」と呼ばれる理由は?

印刷用ページを表示する



ヨーロッパの中で、かつては最貧国とも呼ばれていたのが、バルカン半島南西部に位置するアルバニア。この小国が、コロナ禍でも観光業が力強く回復しているのをご存じだろうか。スペインの旅行調査会社フォワードキーズ(ForwardKeys)がアルバニアについて「地中海観光のダークホース」と題したレポートを発表した。そこから、その理由を探ってみよう。
(図版出典:ForwardKeys)

 

GDPの2割を占めるアルバニアの観光業

パンデミック前の2019年、アルバニアの観光業はGDPの20.3%に相当する34億3000万ドルの貢献をしている。アルバニア経済にとっては、旅行・観光業は金額的にも雇用面でも最も重要な産業の一つなのだ。

ギリシャの北に位置するアルバニアは面積が四国の約1.5倍、城や遺跡が多く、手つかずの海岸線が残る場所として知られている。以前はギリシャやクロアチア、アドリア海を挟んで対岸にあるイタリアの影に隠れていた。ところが、近年、観光インフラや航空便の整備、マーケティング活動の強化といった戦略的な取り組みが功を奏し、地中海沿岸の観光地として知名度を高め、パンデミック前までは、外国人観光客数の伸び率が世界平均をはるかに上回る驚異的なペースで増加した。

2020年は、コロナ禍で前年比66%減と多くの観光地と同様に深刻な影響を受けることになったが、2022年の外国人観光客数は、前年比で43%増、2019年比でも5%増となり、ヨーロッパ地域の平均値を上回っている。

▶︎アルバニアを訪れた外国人観光客数の推移



その理由として、一つにはコロナ禍でビーチ人気が高まったことが挙げられる。特にアルバニアは人気のアドリア海沿岸の中でもまだそれほど混雑していない場所であり、人混みを避けたい観光客の需要が増加したのが大きい。

もう一つには、主に格安航空会社(LCC)によって、ヨーロッパおよび海外の主要市場との直接的な航空路線を確立、市場アクセスを拡大したことが挙げられる。実際、アルバニアは、ヨーロッパ内で、2019年比で国際線の座席数が2桁増となった数少ないデスティネーションの一つだ。


単一国への依存なし、多彩な顔ぶれの外国人観光客

際立っているのは、アルバニアの観光業の力強い成長とコロナ後の業績が単一のソース市場に依存することなく、複数の市場に分散していることだ。今回のような危機とそれに伴う国境閉鎖や渡航制限の可能性を考慮した賢明な行動だったと言える。イギリス、ドイツ、イタリア、フランスといったヨーロッパの主要市場に加え、アメリカや中東からの関心を集めることで、強固な市場の多様化を実現している。

 アルバニアの世界遺産の街、ジロカストラ

アルバニアの事例は、観光戦略やデスティネーション・マーケティングを見直し、空路でのアクセスを改善することで、あまり知られていないデスティネーションがいかに輝き、海外からの入国者数を増やすことができるかを示した。2023年の幕開けとともに、旅行市場のさらなる正常化が期待される中、この多様で手つかずのデスティネーションの展望は明るい、とレポートは結んでいる。

 

最新のデータインバウンド