データインバウンド
2023年旅行トレンド「ロケ地巡り」「食」が行先選びの基準に-アメリカンエクスプレス・トラベル調査
2023.04.06
やまとごころ編集部アメリカンエクスプレス・トラベルでは、旅行トレンドに関する2023年版レポートを発表した。グローバルな旅行者を旅行に駆り立てる、今年のトレンドを示す4つのキーワードは、「隠れた名所スポットでの地域貢献」「ロケ地巡り」「食」「ウェルネス」。それぞれのトレンドについて詳しく見ていこう。
なお、調査は、世帯年収が7万ドル(1ドル133円換算で約930万円)以上で、年に1回は飛行機を利用した旅行をしている、日本、オーストラリア、カナダ、インド、メキシコ、イギリス(各1000名)、アメリカ(2000名)の世界7カ国の旅行者を対象に、2023年2月3日から11日にオンライン形式にて実施された。また、本文中のZ世代とミレニアル世代は、1981年から2012年に生まれた回答者を指している。
(図出典:アメリカンエクスプレス・トラベル「2023 Global Travel Trends Report」)
トレンド1:隠れた名所スポットの発見と、地域コミュニティ支援に関心
旅行者が価値を見いだしている1つ目のトレンドは、隠れた名所スポットを発見し、そこで本物の体験を行うことで地域コミュニティの支援に貢献すること。
調査によると、まだあまり知られていない場所を、人気が出る前に見つけ出すことに価値を感じている旅行者は、全体の68%にのぼった。友人が知らないような隠れた名所スポットを見いだし、そこで地域の文化に触れる本物の体験をしたいと望む傾向は、Z世代とミレニアル世代にはとくに強く、旅行中に一日は、地元民と同じ生活体験をしてみたいという声は79%にのぼっている。
地域コミュニティの支援につながる休暇旅行についても、昨年に引き続き高い関心が寄せられている。そうした休暇旅行に出かけることに、「とても」、もしくは「やや」関心があると答えた者は全体で78%。下のグラフは、その質問についての国別の結果を表したものだ。日本は「関心がある」と答えた割合が最下位の48%で、半数を下回ったのは日本だけだった。
▼地域コミュニティの支援につながる休暇旅行をしたい回答者の割合
(左から、インド、メキシコ、オーストラリア、アメリカ、イギリス、カナダ、日本)
地域コミュニティへの支援を行うための具体的な行動として、地域の飲食店での食事を挙げた者は75%。続いて、地域の店での買い物が63%。そうした地元の店での食事や買い物が本物の体験につながると考える人は88%にのぼっている。
下のグラフは、旅のスタイルを上からひとり、家族、友人、グループ、カップル、ブレジャーと分けた上で、3つの項目(地域の店舗で買い物、地域のレストラランで食事、地域の観光スポットまで歩く)について行動すると答えた人の割合だ。地域コミュニティに貢献する行動をすると回答した割合が最も多いのはグループ旅行だが、いずれの旅行スタイルでも50%以上と意欲的なことが伺える。
▼旅行中に地域コミュニティを支援する方法
(項目は左から地域の店の買い物、地域の飲食店での食事、地域の観光スポットまで歩く)
トレンド2:SNSとポップカルチャーが旅行先選びの決め手に、ロケ地巡りのブーム到来
旅行先の決め手に家族や友人からの口コミを挙げる回答者は47%と、すべての年齢層で相変わらず根強い影響力をもっている。一方、次世代の旅行先選びを大きく左右しているのが、SNSとポップカルチャーだ。
SNSに影響を受けて旅先を選んだことがあると答えた人は75%、テレビや映画による影響を受けて選んだことがある旅行者も64%いた。Z世代とミレニアル世代に限れば、70%と比率はさらに高く、映画やドラマの舞台となった「ロケ地巡り(英語ではSet-Jettingと呼び、ロケ地巡りをする人をSet-Jettersと呼ぶ)」が若い世代の間でブームとなっている。
▼ポップカルチャーが旅行予約の決め手となる割合
(グラフ左はZ世代とミレニアル世代、右はX世代。項目は左からTV番組や映画、TikTok、インスタグラム、フェイスブック) *X世代は、1965年から1980年ごろに生まれた世代を指す
航空券の比較サイトSkyscannerが今年のアカデミー賞授賞式の前に、ロケ地巡りについてアメリカ人1000人にアンケートをとったところ、6人に1人が映画やテレビを見てロケ地に行きたいと思ったと答えた。特に人気があったのは、映画『イニシュリン島の精霊』の舞台となったアイルランド、テレビドラマ『エミリー、パリへ行く』のパリなど。ともにこれまでも人気の旅行先ではあるが、これからますます注目されるだろうとしている。 また、アメリカの旅行サイトTravel Off Pathは、世界の旅行者の3分の2はロケ地巡りを検討していて、そのうち39%の旅行者が映画やテレビ番組で見た目的地への旅行を実際に予約したことがあるというExpediaの調査結果を紹介。その内容をもとに、人気の目的地として、映画『ロード・オブ・ザ・リングス』シリーズのロケ地となったニュージーランド、2022年に大ヒットしたテレビドラマ『ホワイト・ロータス/諸事情だらけのリゾートホテル シーズン2』の舞台となったイタリアのシチリア等を紹介している。ちなみに『ホワイト・ロータス』のシーズン3はタイが舞台になるようだ。 |
トレンド3:1回のディナー体験を旅行の目的にする時代に
映画やドラマのロケ地巡りと並び、旅行先選びで重視されるようになったのが「食の体験」だ。回答者の81%は、旅行中に最も楽しみなことは地元の食べ物や料理を味わうことだと答えている。一流レストランから、地域の人気店、料理教室に参加するという、食にまつわる体験を中心に据えて旅行をプラニングする時代となり、現に、Z世代とミレニアル世代の半数近くにのぼる47%は、特定のレストランで食事することを目的に、旅行プランを立てたことがあると回答している。
また、この世代はどこで何を食べるかのアイディアのほとんどをSNSから得ていると答えた人が66%にのぼり、ロケ地巡りのトレンドと同様、食体験でもSNSの影響力が行動を左右している。
▼食にまつわる体験アクティビティで、非常に興味があると答えた割合
(左より、地元レストラン、フードフェスティバル、地元の食巡り、ワインテイスティング、ライブ演奏付きの食事、醸造所巡り、シェフおすすめのテイスティングメニュー、料理教室)
なお、旅行者がレストランに予約を入れるタイミングとして一般的なのは、旅マエだ。ただし、その傾向が強いのはブレジャーや友人との旅行で、家族やカップル、またひとり旅では、旅ナカでの予約の割合のほうが多くなっている。
トレンド4:ウェルネスを目的に、心身の健康を回復させるリゾート地が人気
4つ目のトレンドは、ウェルネス、すなわち、心身の健康増進を目的とした休暇旅行だ。コロナ禍を経て、1年前よりもセルフケアに力を入れるようになったと回答した旅行者は72%にのぼり、心身の健康を最優先するようになっている。
ほとんどの旅行者は、休暇旅行をマルチタスクや過度な刺激にさらされた日常からの解放と位置づけており、旅行中は心の健康のためにスマホやコンピュータを見る時間を減らしたい(75%)、精神をとぎすますために自然に囲まれた環境に身を置きたい(68%)という回答が7割前後にのぼっている。
このように全体的に、セルフケアやウェルネスを目的とした旅への関心は高まっているが、どのようなアクティビティに関心があるかは国ごとに異なる。下のグラフは、プライベートビーチに行きたいと回答した旅行者の割合を国別に示したものだが、日本は14%と最も低い。ほかに、マッサージを受ける、SNSからのデジタルデトックス、プレミアムスパに行く、ヨガと瞑想という質問項目があるが、いずれも日本では関心があると答えた割合がほかの国と比べてもっとも低い結果を示している。
▼セルフケアやウェルネスに関する国別の嗜好の違い
プライベートビーチに行きたい
デジタルデトックスをしたい(2つとも左から、オーストラリア、カナダ、インド、日本、メキシコ、イギリス、アメリカ)
最後に、そのほかのトレンドとして、「旅とファッションの交わり」(旅行先で新しい服やアクセサリーを買う)、「空港のラウンジ利用」(早めに空港に着いてラウンジで過ごす)、MZ世代(ミレニアル&Z世代)では「ラグジュアリートラベル」(贅沢品を買うより夢のような休暇を過ごしたい)などが挙げられていた。
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