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中国のアウトバウンド旅行2023年4〜6月に大きく回復と予測、中東・アフリカ大幅増。人気の行き先1位は?

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中国のアウトバウンド旅行は2023年第2四半期(4月〜6月)に大きく成長すると、スペインを本拠にする旅行調査会社ForwardKeysが発表した。

 

中国の海外旅行先8割を占めるAPAC、トップ3はタイ、日本、韓国

現在、中国からのアウトバウンドの目的地としてはAPAC地域が81%と最大のシェアを占めており、タイ、韓国、香港、日本は人気の目的地となっている。この地域への第2四半期の航空需要の回復率は2019年同期の43%に相当する。

中でも、日本と韓国は、2023年初めに中国からの渡航者に対する水際対策強化を行ったにもかかわらず、中国人旅行者の間で高い人気を維持しているという。この結果は、同じように今年初めに行った水際対策の影響を懸念している他の旅行先にとっても安心材料になるだろうとレポートは伝える。

ForwardKeysでは、4月に中国本土の旅行者1012人を対象に海外旅行の計画について調査を行ったが、その結果は香港が中国本土の旅行者のトップチョイスであり、マカオがそれに続くことがわかった。また、中華圏以外では、タイが1位で、2位は日本、3位は韓国だった。長距離旅行先ではフランスとオーストラリアが上位にランクインした。

 

中国からの国際線座席数増強。アフリカ・中東大きく伸びる

航空業界は3月26日から夏期シーズンを迎え、中国からのアウトバウンドの座席数が増強された。下のグラフにあるように、最も増加したのはアフリカと中東で、2023年第2四半期には2019年同期の75%まで回復している。ただ国際線全体のキャパシティに占める中国発の割合は6%に過ぎないため、市場シェアは小さいといえる。

中東・アフリカ地域で最も便が多いのがアラブ首長国連邦で、シェアは44%、一方、中国とケニア間の座席数は、ケニア航空が牽引し、2019年から倍増。エジプトも、エジプト航空と中国の四川航空がともに座席数を増やしており10%増。これら3カ国は、中国の団体旅行先として承認された目的地に含まれており、「一帯一路」構想を通じて中国とは密接な関係にある。

▶︎2023年1月〜6月の中国からのアウトバウンドの座席数の推移
 水色=中東・アフリカ、オレンジ色=米州、黄色=アジア太平洋、青色=欧州

「ヨーロッパへの座席数回復は、中国の航空会社が牽引している。ヨーロッパの航空会社は、ロシアの空域閉鎖による遥かに長いフライトという大きなハードルに直面しているが、中国の航空会社はまだロシア上空を利用することができるからだ。また、ヨーロッパの航空会社の中には、人員不足、ストライキ、ハブ空港の制約などの問題を抱えているところも多い」と、ForwardKeysの中国市場専門家であるナン・ダイ氏は述べる。

また、2023年第2四半期の北中南米へのキャパシティは、パンデミック前の座席数の10%しか回復しない見込みだ。中でも主要な目的地であるアメリカでは、航空会社の多くで中国ーアメリカ市場の座席数が回復していない。

 

世界と中国人旅行者をつなぐソウル・仁川空港

なお、アメリカ便についていえば、現在、中国との直行便がないため、香港とソウルの仁川空港が乗り継ぎ客に人気が高い。また、中国と欧州を結ぶハブ空港の実績を見ると、下の表のように、(上から)アムステルダム、ドバイ、フランクフルト、イスタンブール、仁川の利用が多いが、中でも仁川は乗り継ぎ客が2019年同期比375%増と、大人気となっている。

ダイ氏によると、「フランスとイギリスへ行く中国人旅行者のほとんどは仁川で乗り継いでいる。というのも、この両国への直行便はそれぞれ85%減と58%減になっているからだ」。

▶︎中国と欧州を結ぶハブ空港の利用実績(対2019年同期比)

中国では、日本のゴールデンウィーク期間と一部重なる4月29日〜5月3日に労働節の休暇があり、国内外への旅行者が大幅に増加した。団体旅行が全面解禁されていないため、国際線は回復が遅れているものの、前述のようにAPAC地域、特に東南アジアや日本への旅行が人気だったという。

(図版出典:ForwardKeys)

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