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2023年スマートシティ指数、スイス・チューリッヒが1位。日本の順位は?

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スイス・ローザンヌに拠点を置くビジネススクール、国際経営開発研究所(IMD)がこのほど、2023年版のスマートシティ指数(Smart City Index)を発表した。世界の主要141都市を対象に、生活の質を向上にあたって直面する課題に、各都市がどの程度テクノロジーを使って対処しているかを、AAAからDまでの格付けで示した指数だ。首位は、前回に続きスイスのチューリッヒだった。上位に並ぶ都市とともに、日本で調査対象となった東京と大阪の結果を見ていこう。

 

上位20都市はヨーロッパとアジア太平洋が中心

本調査は、上述したハードデータに加え、「構造」と「テクノロジー」という2つの分野において、「健康と安全」「移動」「活動」「就労と学習の機会」「ガバナンス」という5つのテーマで、約2万人の市民に対して都市生活に関する聞き取り調査を行い、その結果も考慮している。

今回は、前回調査の2021年から2年ぶりの発表となるが、調査対象となった都市の数は141で、前回の118から20%増加。また、2023年の指数には、これまでの国レベルでのデータから都市レベルでのデータが活用されるようになるなど、新しい手法が使われた。それによって、2019年から実施されている本調査の過去の順位も見直されている。

下記は、2023年版の結果と、見直しを行った過去の順位を示した表である。

調査手法が新しくなった2023年版では、第1位のスイス・チューリッヒ、第2位のノルウェー・オスロはいずれも評価AAAで、本調査が開始した2019年から連続で12位をキープ。第3位のオーストラリアの首都、キャンベラは今回から本調査に加わった都市で、評価はAAだった。

4回連続1位のチューリッヒは、交通量に応じて明るさが変わる街灯を試験的に導入し、最大70%のエネルギー使用量の削減を実現したことを受け、市街地全域にこのスマート照明を設置。これが環境データの収集、交通量の測定、公衆無線LANのアンテナとしての機能などを果たしている。また、市内のすべての暖房、冷房、電気をつなぐスマートビル管理システムも導入していることなどが、スマートシティと呼ばれる一例として挙げられている。

上位20都市のうち注目すべきは、13位のアブダビ、17位のドバイを除いて、すべてヨーロッパとアジア・太平洋の都市が占め、南北アメリカとアフリカは全く入っていない点だ。アメリカで最も上位にランクされた都市は22位のニューヨークである。

今回のランキングには、各都市において住民が期待する生活の質に対する関心の高まり度合いも反映された。そのため、都市の規模が大きいことがハンデとなり、たとえば、ボストン(34位)やパリ(46位)のような大都市はサステナビリティやモビリティ(移動)の面での発展は目覚ましいものの、上位20位には入っていない。

 

アジアのトップ都市は7位のシンガポール。東京は72位、大阪は98位

アジアでトップにランクした都市は、先ほど紹介した7位のシンガポール。ほかには北京(12位)、ソウル(16位)、香港(19位)が20位以内にランクインした。この4都市は、2019年から毎回ランクアップを示している。

一方、日本からは東京と大阪が本調査対象となっているが、141都市中、東京が72位(BB)、大阪は98位(B)という結果だった。スマートシティ化は東アジアの主要都市から後れをとっていることが示されている。

最後に、スマートシティであることは、人々が住む場所を選択するのに、どれだけ重要な役割をもっているのだろうか。

本調査を支援するSmart City Observatoryのブルーノ・ランヴァン氏は、「いつでもどこでも情報にアクセスできる環境を求める優秀な人材や、絶えず出張を伴うビジネスパーソン、企業の拠点選定にあたっては、ブロードバンドな都市に住むことは絶対条件だ。しかし、市民の多くが居住先を選ぶ際には、それよりも医療や教育といったサービス機能の充実や生活の質に左右される。そのため、今回の調査では、交通の便の良さや防犯カメラによる近隣の安全性といった要素について、都市生活者がどのように感じているかを尋ね、これを指数に反映している」と語っている。

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