データインバウンド
2023年世界平和度指数、首位は16年連続でアイスランド、日本は9位。国際紛争への関与国が増加
2023.07.10
やまとごころ編集部オーストラリアのシドニーに本社を置く国際的なシンクタンク、経済平和研究所(IEP)は、世界各国の平和度を測定する「世界平和度指数(GPI)」2023年版を発表した。世界全体の平和レベルは9年連続で悪化。上位国と日本の順位のほか、平和レベル悪化の背景、中国による台湾封鎖が発生した場合の経済的影響についてもお伝えする。
最も平和な国はアイスランド、欧州・アジアが上位。日本は9位
世界平和度指数は、2008年から毎年発表され、今回で17回目を迎えた。世界人口の99.7%にあたる163の国と地域を対象に、23の定性的、定量的指標を用いて、「社会の安全・安心のレベル」「進行中の国内・国際紛争の程度」「軍事化の度合い」という3つの領域に関し、平和の状態を分析している。
▲平和度指数の高い順に濃い緑から変化、赤が最も低い(灰色はランキングに含まれていないところ)
(図版出典:Global Peace Index2023)
総合ランキングトップは、2008年から首位をキープしているアイスランド。以下、2位デンマーク、3位アイルランド、4位ニュージーランド、5位オーストリアと続く。6位はアジアトップのシンガポールで、日本は9位だった。ランキングを見るとわかるように、スコアの数字が低いほうがより平和であることを示す。
領域別の結果を見ると、日本は「社会の安全・安心のレベル」でフィンランドに続く2位のランクが最高で、「進行中の国内・国際紛争の程度」が33位、「軍事化の度合い」が13位だった。
ランキングトップ10のうち、7カ国がヨーロッパ、3カ国をアジア・太平洋地域が占めている。ヨーロッパは、ロシアによるウクライナ侵攻により、軍事費と近隣諸国との関係の点で悪化したが、依然として世界で最も平和な地域だ。
地域別で最も向上したのは、北米と中東・北アフリカ地域だった。北米は、カナダが向上したためで、アメリカ合衆国では殺人率が西ヨーロッパの6倍のレベルに達し、むしろやや悪化している。中東・北アフリカ地域は2016年以降、向上の幅が最も大きい地域だが、依然として、平和から最も遠いエリアだ。
ワースト10の国々では、最下位は6年連続でアフガニスタン。そのあと下からイエメン、シリア、南スーダン、コンゴ民主共和国と続いたあと、ロシア、ウクライナと並ぶ。
163カ国中157位のウクライナは、前年から14ランクダウンし、2023年版で最も順位を落とした。難民、または国内避難民となったウクライナ人は、紛争前の1.7%から30%に増え、なおも増加している。最新のデータでは、ウクライナの20-24歳の男性の65%が国外へ避難、もしくは紛争で命を落としたとのことで、紛争に関連した死者は推定8万3000人にのぼる。また、暴力による経済的影響はウクライナのGDPの64%に相当する。
世界的な二極化進む、非軍事化の流れの一方で国際紛争が増加
今回の報告で注目された点の1つは、世界全体での非軍事化への傾向と、それと対照的な国際紛争の数の増加である。軍事費用を、医療、教育、インフラ、パンデミックからの復興といったほかの優先事項に充てる国が増えている傾向が、どの地域においても見られる。その一方、対外紛争に関与している国は、2008年の報告開始時には58カ国だったのに対し、2023年には91カ国に増加。また、世界の紛争による死者数は、2008年比96%増の23.8万人だった。これは1994年に80万人以上の死者を出したルワンダ虐殺以来の多さだ。
また、紛争による世界経済への影響も大きい。その金額は、2022年に過去最高となる17.5兆ドルに達し、世界のGDPの13%、一人当たり2200ドルに相当する。これはウクライナ紛争による軍事支出の増加によるもので、影響を受けた国と受けなかった国の差が大きい。影響の大きかった10カ国はGDPの平均34%だったのに対し、影響が少なかった10カ国はわずか3%だった。
中国による台湾封鎖発生時の経済的影響とは?
報告の中では、中国による台湾封鎖についても推定を行っている。中国は現在、対外紛争に直接関わってはいないが、南シナ海での存在感を強め、台湾付近での航空作戦を強化している。こうした点から、中国による台湾封鎖が起こった場合の影響、とりわけ世界経済と貿易への影響についてシナリオを示している。
実際に台湾封鎖が起こった場合、世界のGDPは初年度だけで、2.7兆ドル、2.8%減少すると推定。これは2008年の世界金融危機の損失のほぼ2倍だ。2.7兆ドルの損失の60%は中国と台湾で起こる。しかし、世界第2位の経済大国である中国と、テクノロジー製造と貿易の主要拠点である台湾での有事となれば世界経済に壊滅的な打撃を与えることは必至だ。また、紛争の脅威によって、地域の軍事化や緊張が強まり、貿易、観光、地域協力に影響を及ぼすことから、中国と台湾での紛争の可能性がもたらす経済的影響を理解する必要性を、報告書では強調している。
最新のデータインバウンド
【宿泊統計】2024年8月外国人延べ宿泊者数2019年比39.5%増の1324万人泊。石川県で159.4%増を記録 (2024.11.01)
世界一の美食の街・東京の星付き店 世界トップの170軒、ミシュランガイド東京2025発表。デザートレストランも新掲載 (2024.10.30)
2024年8月までの世界の旅行者数 前年比16%増。アジア太平洋の旅行需要拡大、アジアの波及効果は年5兆円規模に (2024.10.28)
経済的に豊かなミレニアル世代が求める旅、主役は「行先」から「体験」へ ーARIVAL調査 (2024.10.25)
アジア太平洋旅行者の宿泊施設の嗜好・消費調査、リピーターを獲得し収益拡大へつなげるゲスト体験とは? (2024.10.22)
2023年世界のEC市場860兆円、日本引き続き成長。シェア率トップ中国市場の状況を深掘り (2024.10.21)
2024年1-9月のインバウンド消費額5.8兆円、2023年合計を上回る。Q3の1人当たり消費単価22.3万円に (2024.10.18)
【訪日外国人数】2024年9月訪日客数287万2200人、累計2688万人で2023年超え (2024.10.17)
アジア太平洋の世代間旅行、ミレニアル世代がリード。家族旅行で重視することは? ーブッキング・ドットコム調査 (2024.10.16)