データインバウンド
サステナブル・トラベルへの関心、世界と日本の旅行者の違いは? ーブッキング・ドットコム2023年調査
2023.07.13
やまとごころ編集部ブッキング・ドットコムが毎年行っているサステナブル・トラベルに関する調査は2023年で8年目を迎え、過去最大規模となった。35の国と地域の旅行者約3万3000人を対象にした調査結果は「旅行者の悩み コスト削減か、サステナブル・トラベルを選ぶか―ブッキング・ドットコム調査」で紹介している。今回は、世界の旅行者と日本の旅行者を比較した日本語版が公開されたので見ていく。
(図版出典:ブッキング・ドットコム、2023年版「サステナブル・トラベル」に関する調査の結果を発表)
明らかになった旅行者のジレンマ
今回の調査では、世界におけるサステナブルな旅行に対する関心は依然として高いものの、生活費の高騰や気候変動への不安から、サステナブルな旅行を選択するか、それとも旅行費用を削減するかの間で板挟みになっている旅行者のジレンマが明らかになった。
それでも、「よりサステナブルな旅をすることは自身にとって重要である」とした日本人旅行者は80%となり、世界の旅行者(80%)と同じく高い水準に達していることがわかった。その一方で、「今後1年間、よりサステナブルに旅行したい」と回答した日本の旅行者は56%で、世界の旅行者(76%)と比較すると、いまだ20ポイントの開きがある。とはいえ2022年の結果(46%)からは10ポイント上昇しており、日本においてもサステナブルな旅行への関心が年々高まっていることがうかがえる結果となった。

昨年以降の経済情勢の急変に伴い、生活費の高騰と気候変動という2つの問題が注目されている。こういった事態を受けて、世界の旅行者の74%(日本48%)が気候変動に関して「次世代のために地球を守るには、今すぐ行動し、よりサステナブルな選択をする必要がある」と回答した。
ただし、世界の旅行者の49%(日本43%)が「よりサステナブルな旅行はコストがかかりすぎる」と答え、また、世界の旅行者の76%(日本75%)が「世界的なエネルギー危機と生活費の高騰が支出計画に影響を及ぼしている」と回答していることから、旅行者はサステナブルな選択をしたいものの、旅行費用の削減も余儀なくされているため、どちらを優先するか決めなければならないというジレンマに陥っているいることがうかがえる。


求められるサステナブル情報の可視化
よりサステナブルな旅行のハードルとなっているのは、費用面だけではなく、限られた情報や可視化されている選択肢の少なさなども挙げられる。
実際、世界の過半数(51%)の旅行者(日本54%)が「サステナブルな旅行の選択肢の数が十分にない」と回答しており、世界の旅行者の74%(日本53%)が「よりサステナブルな旅行の選択肢を旅行会社に提供してほしい」と回答している。 これは2022年の結果である世界66%、日本43%と比較しても上昇していることがわかる。


しかし、サステナブルな選択をする意欲があっても、世界の旅行者の44%(日本の旅行者の53%)は「よりサステナブルな選択肢をどこで見つけたら良いのかわからない」と回答していることから、情報発信が不足していることは明らかだ。
サステナブルな未来への一歩
こうした様々な障壁があるものの、日本を含め世界の旅行者の5人に4人(80%)が「よりサステナブルな旅行をすることは自身にとって重要である」と答え、サステナブル・トラベルへの強い関心を示した。

実際に、世界の旅行者の68%(日本54%)がエコバッグを使用し、世界の旅行者の64%(日本50%)がごみをリサイクルし、世界の旅行者の58%(日本34%)がマイボトルを持ち歩いているという結果から、旅行者は、よりサステナブルな未来を推進するために、自宅や旅先で積極的に小さな一歩を踏み出すことで意思を行動に移していることがわかった。
以下のように、この1年間で旅先でも日常的な習慣を取り入れる旅行者の割合が増加している。ただし、日本はいずれも実施率が平均より低い。
・外出時に宿泊施設のエアコンを切る 世界の旅行者の67%(日本54%)
・持参したマイボトルを使用する 世界の旅行者の55%(日本34%)
・外出中に宿泊施設の照明と電化製品を消す 世界の旅行者の77%(日本25%)
・旅先でゴミをリサイクルする 世界の旅行者の45%(日本23%)
・宿での毎日のルームクリーニングを断る 世界の旅行者の40%(日本21%)
旅行業界に求められる信頼性
世界の旅行者の66%(日本56%)は「訪れた場所をより良い状態にして帰りたい」と回答しており、気候変動への不安が高まる中、宿泊施設から移動手段の選択にいたるまで、旅行者がより責任ある消費者になりつつあることは間違いない。
世界の旅行者の65%(日本52%)は「サステナブル認証などがある宿泊施設に泊まることができれば安心する」と答え、世界の旅行者の59%(日本35%)は「検索条件にサステナブル認証であることを求める」と回答。さらに世界の旅行者の43%(日本22%)は「サステナブルな認証を受けた旅行のために追加料金を支払うことをいとわない」と回答したことから、旅行者は信頼できる認証があることを重要視していることがわかる。
また今後は、「サステナブルなアプローチを積極的に行うブランドを常に探している」(世界30%、日本16% )、「環境に優しいLED照明やデュアルフラッシュトイレなど、特定の選択肢が他のものよりもサステナブルであると認識されている理由について詳しく知りたい」(世界69%、日本45%)と考えるサステナブルへの意識の高い旅行者の期待に応えていくことが大切となる。加えて、「サステナブルな旅のオプションに対して、それが本当かどうか信頼できない」と回答する人(世界39%、日本28%)に対しては、彼らからの信頼を得るために、旅行業界ではさらなる情報発信を行い、サステナブルへの取り組み全般を大きく前進させることが必要となる。
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