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2023年夏 世界の旅行トレンド、出入国数ともトップのアメリカが回復を牽引

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日本では、2023年8月の訪日客数は215万人と、6月から3カ月連続で200万人を超え、2019年同月比でも85.6%まで回復している。一方、出国する日本人の数は、訪日客数の回復に比べると戻りが遅いものの、7〜8月の夏休みシーズンにはようやくコロナ前の半分を超える数字にまで戻っている。

世界全体では今夏の旅行動向はどうだったのか。スペインの旅行調査会社ForwardKeysが世界の航空予約数をもとに分析・発表した今夏の世界旅行トレンドについて、「大きくリードするアメリカの回復」「完全回復に至らぬ旅行状況」「急復活の東アジア」「回復力が高いビーチリゾート」「猛暑の影響」という4つのキーワードをもとにお伝えする。
(図出典:ForwardKeys)

 

大きくリードするアメリカの回復ー今夏の訪問者数トップに

7月1日~8月31日までの世界全体でのフライト予約数は、パンデミック前との比較では23%減、前年同期比では31%増という結果だった。また、旅行先として、最も多くの人に訪問された国はアメリカで、世界の旅行者の11%が同国を訪問。2位以下の国に大差をつける結果となった。2位はスペイン、3位はイギリス、4位イタリア、5位日本で、6位以下はフランス、メキシコ、ドイツ、カナダ、トルコが続いた。

旅行先ランキング(訪問者数)(2019年比/2022年比)

5位にランクした日本は、前年同期比では569%の伸び。10位までのランキング国のうち3ケタの伸びを示したのは日本だけだった。もっとも、日本はようやく2022年秋になって渡航規制が解除されたことを念頭に置く必要がある。

 

出国者数でも大きくリードのアメリカ

アメリカはアウトバウンド市場においてさらに勢いがある。同国は世界の航空予約の18%のシェアを占め、出国人数を示すランキングでも1位となった。2位はドイツ、3位はイギリス、4位カナダ、5位フランスで、6位以下は韓国、中国、日本、スペイン、イタリアが続いている。

出国者数ランキング(2019年比/2022年比)

米国以外の海外旅行はいまだ回復途上

出国する旅行者数は、ほとんどの国において前年比で増えている。しかし、パンデミック前の水準と比べた場合、アメリカを除くと、これまで海外旅行へ出かける人の数が多かった国々の回復ペースが鈍い。2019年比でわずか1%減のアメリカと比べ、ドイツは21%減、イギリス(同20%減)、フランス(同17%減)、韓国(同28%減)、中国(同67%減)、日本(同53%減)、イタリア(同24%減)という結果で、アメリカに大きく差をつけられている。

アメリカの旅行者について、ForwardKeysのインサイト部門長のオリビエ・ポンティ氏は「パンデミックの間、多くのカリブ海諸国にとって、アメリカ人旅行者の訪問は経済的に頼みの綱だった。ほかの地域で入国規制が緩和されると、彼らは、そうした国、地域に出かけたため、今夏はヨーロッパの多くの旅行先を救う形となった」と話している。

 

急回復の東アジアー韓国、中国、日本の出国者数は前年から大幅増

次に、東アジアの状況を見てみよう。前年との比較で大きな違いは、韓国、中国、日本の東アジア3カ国のアウトバウンド市場での数字だ。往来が制限されていた昨夏と比べると、日本は219%、韓国は241%と3ケタの伸び率を示している。中国のアウトバウンド市場はいまだ回復が遅れているものの、人口規模の大きさから7位にランクした。

 

回復力が高いビーチリゾートーパンデミックでの誘客奏功

パンデミック前の2019年との比較でインバウンド旅行者数が大きく成長した国はどこか。その答えは、ビーチリゾートで有名な国々だ。1位はコスタリカで、2019年比で19%増を達成した。2位はドミニカ共和国(2019年比18%増)、3位以下はコロンビア、ジャマイカ、プエルトリコと続く。

パンデミックの間、ビーチリゾートへの旅行は最も回復力が高いことを証明してきた。カリブ海やメキシコ湾周辺の観光依存度が高い国々は、国境を閉ざさず観光客を呼び込もうと力を尽くしてきたが、その努力が実を結んだ結果と言えよう。

旅行先ランキング(成長率)(2019年比/2022年比)

猛暑の影響ー旅行キャンセルは限定的

この夏は世界各地で異常気象が起きたが、観光にはどの程度影響があったのだろう。猛暑に見舞われたギリシャとポルトガルで発生した山火事の様子は、衝撃的なニュースとして報道されたが、ほとんどの旅行者はすでに予約を入れたあとだったため、観光への影響は限定的だった。ギリシャのロードス島ではキャンセルが相次いだが、フライト予約は数週間で通常に戻った。また、北ヨーロッパおよび北欧地域における予約は、2019年比で16%減、17%減を示したが、おそらく猛暑を避けた旅行者の影響を受けたもので、夏の後半は予約数が増え好調ぶりを示した。

オリビエ・ポンティ氏は、今後の見通しについて「2023年10月~12月までの世界のフライト予約状況は、2019年同期比わずか4%減、2024年1月~3月では同3%減となっており、今後についてより楽観的に考えている。特に、アメリカと並び、もうひとつの観光大国である中国が復活をし始めている。今年第4四半期に最も有望な地域は、フライト予約が2019年比37%増の中東だ。その後に中米、カリブ海諸国と続いている」と語っている。

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