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飲食店インバウンド対策の現状、ベジタリアン・ヴィーガン対応1割未満。今後への取り組み意欲も低め

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2023年5月、新型コロナウィルス感染症の位置づけが5類に移行し、6月以降は、観光庁が毎月発表する訪日外国人客数も200万人を超えている。それに伴い、各地の飲食店を訪れる外国人の数も増加しているが、各店舗でのインバウンド対策の現状はどうだろうか。外国語対応や、必要性が求められるベジタリアン・ヴィーガン対策、今後の対応策への取り組み意欲などについて、飲食店リサーチサービスが行ったアンケート調査結果をお伝えする。
※飲食店ドットコム(株式会社シンクロ・フード)調べ

インバウンド顧客、最も多いのが「インスタグラム」での店舗検索

今回のレポートは、飲食店に特化したリサーチサービス「飲食店リサーチ」を運営する株式会社シンクロ・フードが2023年9月に、飲食店ドットコムの会員である飲食店の経営、運営に携わる者を対象に行った調査で、370の回答を得た。なお、留意点として、回答者のうち、東京にある飲食店の割合は54.3%。また、回答者の68.9%が、運営する店舗数は1店舗のみである。

まず、新型コロナウィルス感染症が5類に移行した2023年5月8日以降、インバウンド客の「来店があった」と回答したのは、58.9%。そのうちの半数以上は、コロナ前から、週1回以上はインバウンド客が店に来ていたと答えている。

「来店があった」と答えた店舗に、どのメディアを通じてインバウンド顧客が来店しているかを尋ねたところ、半数以上が「わからない」と答えているが、把握している店舗で最も多い回答は、「Instagram(14.7%)」。続いて「トリップアドバイザー(9.2%)」。「その他(18.8%)」の中では、「Google」などを挙げる声が目立った。

 

受入対応、最大の悩みは「言語の壁」

インバウンド顧客の来店に対して抱える問題点の筆頭にあがったのは、「言語の壁」だ。外国語対応メニューがないため、説明が難しかったり、時間がかかったり、といった点が挙げられている。また、「食材制限がある方への対応」についても、食材の詳しい説明が求められたり、調理から提供までに手間がかかったりすることから、通常より時間がかかる点に苦労している。ほかに、お通し文化を知らなかったり、勝手に入って勝手に席に座る、勝手に持ち込みをして食べたり、といった「文化の違いそのもの」から生じる問題点も挙げられている。

ベジタリアン・ヴィーガン対応は1割未満、8割近くは今後も実施予定なし

インバウンド対応策について、現在実施しているものでは「WiFiの導入が」50.8%と最も多く、次いで、「モバイル決済・クレカ対応範囲の拡大(銀聯やアリペイ、WeChatPayなど)」が43.2%と続いた。

一方、インバウンド顧客をターゲットとした「集客」「外国語対応」「メニュー開発」に関する項目では、「多言語・写真付きメニュー(テーブルオーダー端末含む)の導入」が23.5%いるものの、それを除いた項目では、現在の実施割合はいずれも2割以下だ。

1~2割の店舗では、現在は未対応でも今後の対応を検討しており、前向きな姿勢も多少見られる。しかし、「インバウンド顧客向けのコース設定・メニュー開発」と「ベジタリアン・ヴィーガン等への対応」については、実施している店舗は1割に届かず、77.0%の店舗が「今後も実施の予定はない」と回答。インバウンド向けの食事対応は全体的に積極的とは言えない。

 

効果的なインバウンド対策は観光情報媒体掲載

インバウンド対策を実施している、もしくは検討している店舗に、「最もインバウンド対策につながると思う施策は何か」を尋ねたところ、最も多かった回答は、「インバウンド顧客向けの観光情報媒体掲載(27.3%)」だった。掲載情報を参考に来店する人が多いと感じていることや、身近に成功事例があることが理由に挙がっている。

次に回答数が多かったのが、「インバウンド顧客向けのSNS発信(20.2%)」。これも、実際にSNS情報を見て来店したインバウンド客が多い、といった実体験から選ばれている。

3番目に回答数が多かったのは、「多言語・写真付きメニュー(テーブルオーダー端末含む)の導入(18.9%)」だ。選んだ理由は、外国語が話せなくても注文を受けられ、注文の場面でつまずきがなくなることでサービスの向上につながるとの考えからだ。

また、先ほど、「ベジタリアン・ヴィーガン等への対応」には消極的な回答が多かったと伝えたが、ここでの質問でも、ベジタリアン・ヴィーガン等への対応が最もインバウンド対策につながると答えた回答はわずか1.7%だった。効果があるという認識が薄いことも、積極的な取り組みにつながらない理由と言えそうだ。

 

現時点でインバウンド客が来ていない店は今後の受け入れに消極的

最後に、インバウンド客が「来店していない」と答えた者に、今後、積極的にインバウンド客を獲得したいかを尋ねたところ、「特にインバウンド顧客を意識していない(国内顧客と同様に考えている)」という回答が6割だった。そもそも外国人観光客が来ない地域であることや、ターゲットは地元客で、インバウンド客をターゲットにしていないことをその理由に挙げている。

外国語対応の難しさや、常連客を大切にしたい、日本人の集客だけで売上的には十分だからなどの理由から、「できれば、インバウンド顧客は避けたい」との回答は32.2%。それに対して、「積極的に獲得したい」との回答は7.2%で、現時点でインバウンド客の来店がない店の傾向としては、今後もインバウンド客の受け入れには積極的ではないと言えそうだ。

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