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2024年世界の旅行トレンド予測、安眠対策からブレジャーまで。世代別の傾向の違いは?

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2023年もあと2カ月あまり。2024年のことが気になる時期になった。そこで、ヒルトンが発表した2024年のトレンド予測をご紹介したい。ヒルトンは今後1年間の旅行を決定づけると予想される消費者トレンドにスポットを当てるレポートを毎年公開している。3回目となる今回は、2024年以降の旅行に変化をもたらすと予想される4つのテーマ、「睡眠への投資」「コネクティビティとパーソナライゼーションの重要性」「文化と体験」「ビジネストラベルの進化」を挙げている。ここでは、その内容と世代別の分析をみていこう。

この調査は定量的、定性的な調査をもとにしており、前者は9カ国(アメリカ、ドイツ、イギリス、日本、中国、インド、メキシコ、シンガポール、UAE)の1万人以上の旅行者を対象として2023年7月にオンラインで行われたグローバル調査、後者は2023年の4月~5月にかけて60人のアメリカ人旅行者を対象として行ったビデオ・ダイアリーと数十人のヒルトン・トラベル・エキスパートへの詳細なインタビューによるという。

なお、ここで使っている世代分けは以下のとおり。
Z世代・Gen Z(1626歳)
ミレニアル世代・Millennial(2742歳)
X世代・Gen X(4356歳)
ベビーブーム世代・Baby Boomer(5772歳)
全世代・Global Travelers

 

旅先でも安眠が第一、そのためには

2024年に人々が旅行をしたいと思う理由の第1位は何か? 今回の調査では世代を問わず、それが休息と充電であることがわかった。特に、X世代とベビーブーム世代はではその考えが強いようだ。

▶︎2024年に旅行する理由は休息と充電である

中でも、旅行中の睡眠を重視する人は多く、世界の旅行者の20%近くが、安眠のために好みの枕を持参するとしている。

▶︎旅行に枕を持参する

また、リラックスするために、客室でホワイトノイズ*を流すことが新たなトレンドとなっている。それを牽引するのが、世界の旅行者の約10%。彼らはホワイトノイズマシンと共に旅行すると答えた。
(*様々な周波数の音を同じ強さでミックスして再生したノイズ。具体的には 換気扇やテレビの砂嵐のような「サーッ」「シーッ」「ゴーッ」のような雑音を指し、安眠効果、集中力アップなどの効果があると言われている)

また、Z世代は睡眠の質をより重視しており、より良い睡眠を取るために旅先でもワークアウトを欠かせないと答えた人が21%、寝る前にアルコールは飲まないと答えた人が25%いた。そのため、ノンアルコールドリンクの需要が増えている。

旅行者がリラックスして睡眠をとろうとする場所は、60%がリゾート地で、40%が都市部を選んでいる。ヒルトンでも今年は、世界中の人々が特定の目的地でユニークな、あるいは最上級の睡眠体験を求めて旅行するスリープ・ツーリズムを予約する客が増加したという。

 

コネクティビティとパーソナライゼーションに価値を見出す旅行者

旅行者は、自分たちのニーズに合わせた一貫性のある体験を求めるようになる。テクノロジーが発達した世界では、あらゆる年齢層の旅行者が、旅行体験全体を簡素化し、滞在をパーソナライズするための革新的でシームレスなデジタルソリューションを求めているということだ。今回の調査でも、80%の旅行者が全ての旅行予約をオンラインですませることが重要だと答えた。

▶︎旅行予約はオンラインで完了できるのが望ましい

また、世界の旅行者の76%が、旅行の摩擦やストレスを軽減する旅行アプリを高く評価しており、特にミレニアル世代では84%がアプリの重要性を認めている。

▶︎旅行アプリが重要

各ホテルが提供するロイヤルティ・プログラムもまた、全世代にわたって旅行を計画する際に考慮する事項となっている。5人に3人の旅行者が、特典を最大限に活用するために、1つのブランドまたは1つのクレジットカードで一貫して予約している。ミレニアル世代は予約時に最も特典の最大化を考えており、67%が旅行計画時にロイヤルティ・プログラムを優先している。

▶︎ロイヤルティ・プログラムを優先

 

旅行への支出最優先、世代別で異なる食へのニーズ

パンデミックを経て、世界中が再び旅行熱を取り戻す中、世界の旅行者の64%が、2024年には個人支出の他の分野を減らしてレジャー旅行を優先したいと回答している。特にZ世代とミレニアル世代の回答率が高い。

▶︎旅行への支出を最優先する

旅行者が目的地に到着したときの関心も、おいしい食事や飲み物、探検や冒険、人々や地元の文化とのつながりに重点を置くようになっている。

まず、食事に関して言えば、2024年は世界的に、また世代を超えて食の体験が優先され、食いしん坊の天下になるということだ。さらに、X世代とベビーブーム世代はグルメ体験に予算を割くと予想されるが、Z世代とミレニアル世代は地元のバーに最も関心があり、MZ世代の約4分の32024年の旅行中に地元のユニークなバーを体験することに関心を持っていることもわかった。

さらに、旅先でのテイクアウトに関しては、ミレニアル世代は注文アプリをスマホに入れており、ミレニアル世代の65%が旅行中に定期的にテイクアウトを注文しているのに対し、ベビーブーム世代でそれをするのはわずか29%に過ぎないこともわかった。

 

文化・体験が旅行の決め手

パンデミック後の旅行需要の高まりは、旅行者が大切な人たちとの絆を取り戻すにつれて落ち着いてきてはいるが、こうした絆を強化したいという願望は2024年以降も続くだろう。と同時に、人々は異文化を学び、自国の文化を知り、他者とつながるために旅をするようになるという。アジア太平洋地域では、77%の旅行者が、自分の文化的または先祖伝来の遺産をより深く理解できる旅行先を探すと回答している。

旅行者が友人や家族とつながる上でもうひとつの方法としているのが、エンターテインメントやスポーツのような文化的体験を共有することだ。2023年を通じて、旅行者は世界中のスタジアムやコンサートホールを埋め尽くし、記録的な数の文化イベントやスポーツイベントに参加した。2024年には、こうした情熱はさらに強まり、世界の旅行者の24%がコンサートやスポーツイベントなど、他では味わえない体験を目的とした旅行を計画していることがわかる。

▶︎コンサートやスポーツイベントのために旅行をする

このように、旅行先で現地の文化を体験することが重要になっている一方、旅行者の3分の2は、休暇の計画を検討する際に環境変化についての問題を目にする可能性があることを認めている。そのため、旅行者はこれまで以上に、人や環境に配慮した旅行プランや滞在先を求めている。特にミレニアル世代ではその意識が強いようだ。

▶︎旅行計画の際に環境問題に配慮する

 

ビジネストラベルの新トレンドとは

世界がパンデミックから脱却するにつれ、新たなビジネストラベルのトレンドが形成された。人々がいつ、どこで、どのように働くかが劇的に変化し、その結果、ビジネスとレジャーが合体した「ブレジャー」旅行が台頭した。平均滞在日数が増え、リゾート地のみならずこれまではそれほど注目されていなかった地域、加えてオールインクルーシブ施設への関心が高まった。これらのトレンドは今後も続き、さらに強まることが予想される。

2024年に会議やイベントに申し込む参加者は、開催地の変化に気づくかもしれない。2023年、多くの大規模な会議やイベントの開催地は、大都市中心部から二次的な市場へとシフトした。たとえばアメリカ大陸では、ウィスコンシン州ミルウォーキー、ニューメキシコ州アルバカーキ、フロリダ州フォートマイヤーズが、1年後の予約で需要の伸びの上位を占めた。

出張を計画している人たちは、仕事のみならず、家族や友人との時間、レジャーの機会を取り入れることで、移動中の時間を最大限に活用することに全力を注いでいる。旅程にミーティングやイベントを追加する人もいるだろう。また、旅行に1日か2日プライベートな日を組み込むという人もいる。世界全体では、Z世代とミレニアル世代の出張者の3分の1以上が、2024年には出張期間を延長し、仕事の前後に余暇を楽しむ予定だと回答している。

また、世界の出張者の24%、ミレニアル世代では特に多く29%が、2024年は友人や家族を出張に同行させる予定だと答えた。

▶︎来年の出張に友人や家族を同行する

 

世代別で異なる旅行トレンドやニーズ

最後に、今回の調査からわかった世代別のトレンドを紹介する。

Z世代(1626歳)
大人になりはじめ、冒険や経験を求めているZ世代。多くの人が、旅行は自己発見と成長の道だと考えている。5人に2人は、旅行で新しい体験をすることがとても重要だと答え(43%)、旅行予算の最優先事項は探検と冒険(52%)。旅行が予算上の優先事項であり、2024年には旅行にもっとお金をかける予定(72%)なのだが、まだキャリアが浅く、予算や時間に制約があるかもしれない。

Z世代にとって旅行の計画や予算管理が面倒なので、テクノロジーはこの年齢層の旅行の将来に重要な役割を果たすだろう。彼らは、旅行をすべてオンラインで予約でき(83%)、予約やサービスをホテル予約と一緒にできる(74%)ことが重要だという。旅行中に個人所有のデバイスをシームレスに使えることも重要だ(84%)。また、4人に3人のZ世代が、QRコードで予約や決済の確認ができることで、食事体験が向上したと答えている(74%)。

ミレニアル世代(2742歳)
ミレニアル世代は、旅先でお客様として大切に扱われているということが重要で(83%)、旅行中の快適さや利便性のためなら、より多くの出費をいとわない。旅行の予算を決める際、ミレニアル世代の5人に2人は、贅沢(36%)とウェルネスに焦点を当てた体験(37%)を優先する。

ミレニアル世代が求める体験は実に多様で、約3人に1人は、旅行予算の中で文化イベント(33%)やライブ音楽体験(30%)を優先し、約4人に1人はスポーツイベント(26%)を優先している。ミレニアル世代は、ハイキングやビーチなど、アウトドアを楽しむ方法も探している。

多くのミレニアル世代は、キャリアを確立し、家庭を持つ段階に達している。家族向けのオプションがあることは、ミレニアル世代の両親が旅行する際(91%)に特に重要だ。

X世代(4356歳)
多くの点で、X世代はベビーブーム世代とミレニアル世代の中間に位置する。ミレニアル世代やZ世代と同様に、旅行先では何か新しいことを体験したいと考え(84%)、世話をしてもらったり、甘やかされたいと感じている(78%)。一方で、団塊世代と同様、レストランや料理体験を優先し(45%)、旅先では地元料理や郷土料理を求める(87%)。また、ホテルのレストランが充実していることを好み(81%)、ユニークなホテルのバーを楽しむ(65%)。X世代は、食事場所について地元のアドバイスを得られることを高く評価している。

ベビーブーム世代(5772歳)
この世代にとって、食は旅行体験の重要な一部。レストランや料理体験は旅行予算の最上位にあり(45%)、旅行中は地元料理や郷土料理を求める(86%)。特筆すべきは、テイクアウトよりも、対面式の食事を好む点。また、若い世代に比べてQRコードを受け入れる傾向が低い。テクノロジーの利点を認識する一方で、ホスピタリティの「人間的」要素を高く評価。テクノロジーが旅行のストレス軽減に役立つというよりも、ホスピタリティの「人間的」要素が旅行体験を豊かにすると答える傾向が2倍以上ある。彼らにとってはサービスが最も重要だ。

 

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