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海外旅行者に聞く訪日中の滞在パターン、情報収集アジアと欧米豪で差。持続可能な観光への意識は?

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訪日客の旅マエ、旅ナカでの行動を知り、誘致のヒントを探るため、マーケティングテクノロジーカンパニーのCint Japan株式会社と株式会社JTB総合研究所が、共同で「旅マエ~旅ナカにおける訪日旅行者の行動変化と持続可能な観光への意識調査」を実施。その結果から、旅行者を取り巻く時間の流れによって生じる情報収集や行動パターンの変化、持続可能性に関する意識などが浮かび上がった。

調査は2023年9月7日~19日の期間、以下の13カ国に在住している人を対象にインターネットで行い、過去1年以内に海外旅行経験のある18~79歳の男女5991名。内訳は、韓国(471)、台湾(457)、香港(463)、中国(524)、タイ(435)、シンガポール(445)、ベトナム(459)、インド(482)、イギリス(447)、フランス(446)、ドイツ(438)、アメリカ(473)、オーストラリア(451)となっている。
(図版出典:Cint Japan株式会社・株式会社JTB総合研究所 共同調査「旅マエ~旅ナカにおける訪日旅行者の行動変化と持続可能な観光への意識調査」)

 

旅程決定は「旅マエ」が8

まず、海外旅行に出かける人が旅程をいつ決めているかについては、旅行日数や旅行形態に関わらず、「ほぼすべて出発前に決めていた(40.1%)」「大体決めていた(41.2%)」合わせて81.3%が、旅マエに旅程を概ね決めていることがわかった。旅行日数が長いほど、旅程の決定割合は下がる傾向にはあるものの、概ね決めている割合は31日以上でも約7割弱で、旅行日数による違いは大きくなかった。

旅行形態別では、ツアーを利用しない個人の旅行者でも、出発前に概ね決めていた人が82.9%あり、むしろ「ホテル+交通手段のみのパッケージツアー」の利用者よりも、きっちりと旅程を組み立てている様子がうかがえる。

訪問先として、しっかりと旅程の中に組み入れてもらうためには、旅行に出発する前の計画段階で情報をいかに伝えられるかが重要であることが改めてわかった。

 

アジアと欧米で差が出る旅先でしたいこと

次に、「旅行先でしたいこと」について、海外で話題になっている情報を重視するのか、時刻や家族友人など身の回りの情報を重視するのか(海外志向vs身近志向)、その場所を体験したいのか、土産物を買ったり食べたりしたいのか(コト志向vsモノ志向)を組み合わせ、意識を聞いた。

国・地域別にみると、欧米の旅行者は比較的、「海外で話題になっているモノ」、アジアの旅行者は「身近で話題のコト」に惹かれる傾向があることがわかった。

例えば、身近なところで話題になっているコトに惹かれるアジアの旅行者に対しては、SNSなどで普段からやり取りしている、あるいはフォローしている人からの発信、海外で話題になっているモノに惹かれる欧米の旅行者には、海外のメディアなどを通じた土産物や地産品、行先の紹介など、それぞれの国や地域の特性に合わせた旅マエの発信が効果的と思われる。

 

国内の移動・滞在パターン

続いて、訪日経験がある人に対して、日本国内滞在中の移動・滞在パターンを尋ねた。日本滞在期間を序盤・中盤・終盤の3つに分けたときに、最も多かったのは、全体を通して首都圏にずっと滞在する「首都圏滞在型」の13.7%、次いで「近畿滞在型」の8.1%だった。

国、地域別にみると、タイや台湾の旅行者は「北海道滞在型」、韓国は物理的に近いこともあり「九州滞在型」が多い傾向だった。インドは東北や中部なども訪れている。また以前は、いわゆるゴールデンルート(首都圏⇔中部⇔近畿)を旅行しているイメージがあった中国からの旅行者は、今回の調査結果では、他の国と比べて訪問する地域に偏りが少なく、万遍なく訪れている様子がみられた。

 

旅ナカ情報の収集法

旅ナカで必要とする情報収集については、旅の序盤から行程が進むにつれ、変化することがわかった。調査結果をみると、旅の序盤には、「朝食を食べる場所」「ランチを食べる場所」「夕飯を食べる場所」「飲み物や軽食など日用品を購入する場所」「滞在場所から徒歩圏内で行ける場所」について調べており、まずは、旅行先での生活を整えたい、という意識が垣間見られる。

旅行の中盤に差し掛かると、少し余裕が出るのか、「スポーツ観戦やイベントなどの参加」「数時間程度で体験できる現地ツアー」「滞在場所から3時間程度以内で行ける場所」といった、数時間で体験できることの情報を探している。

そして、旅の終盤では、「土産物を購入する場所」、改めて「食事をする場所」や「滞在している場所から飛行機で移動する範囲」の情報を探す傾向があるようだ。「飛行機で移動する範囲」については、旅の終盤であることを前提とすると、滞在場所から帰国するための空港の近くで軽く訪問できる場所を知りたいと考えていることが推察できる。

 

旅行先でも「食品ロスの削減」を心がける

次に、日常生活や旅行先で実践している環境保護活動について尋ねると、旅行者全体として、「日常生活、旅行中どちらもできている」ことの1位は、「食品ロスの削減」だった。ついで、「テレビ・照明等のこまめな消灯」「節水への取り組み」「ゴミの分別・リサイクルや持ち帰り」「マイボトルの持参」と続く。

一方、「スプーン、フォーク、箸など自分で使うカトラリーを持参する」は日常生活では比較的できているのに、旅行先では最もできていなかった。

「食品ロスの削減」について、日常生活でできているのに、旅行中にできない理由としてあがったのは、「提供される食事の量が選べない」だった。旅館などでは、多くの料理でおもてなしの心を表すこともあるが、個々の旅行者のニーズに応じて、食事量を選べるようにする、好きなものだけを選べるブッフェ、アレルギーやヴィーガン対応などの選択肢を用意することも必要だ。

 

持続可能な観光のために

最後に、持続可能な観光のために気をつけたことを聞いた。現在意識的に実践していることは、「歯ブラシ・ブラシ・化粧品はなるべく持参する(41.5%)」だった。旅館やホテルなどではアメニティが用意されていることも多いが、よりサステナブルに行動しようという意識が感じられる。

また、現在は実施していないが、今後実施意向が高いと考えられる項目(意識的に実践していることよりも、これから実践したいこととの割合の方が高い項目)をピックアップしてみると、「レンタカーはEVやハイブリッドを指定する」「二酸化炭素を排出する自動車や飛行機での移動の取りやめ」「環境保全に取り組む宿泊・観光施設等を利用するツアーの選択」があがった。旅行中にも環境保護への意識が高まる中で、移動手段や宿泊施設、ツアー等が選ばれる基準として、今後はこれまで以上に環境保護への取り組みが求められそうだ。

 

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