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2023年世界のビザ開放度はコロナ前水準へ、デジタルノマドビザ導入は50カ国に-UN Tourism

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2023年版の世界での観光ビザに関するレポートが、UN Tourism(世界観光機関:20241月に略称をUNWTOより変更)から発表された。前回の調査報告はコロナ前の2018年。コロナ禍で停止していたビザ免除システムが再開し、ビザ制度はコロナ前の水準に戻った。観光産業の成長にとって、ビザ制度の改善は重要な役割をもつ。コロナ以降導入が増える「デジタルノマドビザ」を含め、世界におけるビザ政策の最新レポートをお届けする。
(図版出典:UN Tourism

 

世界の「ビザ開放度指数」は上昇中、開放度が最も高い地域はアジア・太平洋

レポートでは、国や地域がどの程度観光を促進し、観光目的の旅行者に対するビザ緩和を進めているかを示すのに、「観光ビザ開放度指数(Tourism Visa Openness Index)」を用いている。0から100のスコアのうち、スコアが高いほど、その国のビザの開放度は高い。すなわち、ビザなしでの入国を認めていることを意味する。この指数によると、ビザ開放度の世界平均は40で、2018年の前回レポートの37から上がり、開放度は上昇している。

2008年には、世界人口の77%が他国への入国の際に従来型ビザを求められていたが、2018年には59%、2023年には47%と減少している。一方、ビザなし渡航は、2008年の17%から、2018年の20%、2023年の21%へと増加。また、電子ビザの適用も増加し、2013年の3%から、2018年の7%、2023年は18%まで増えている。また、現地に到着した際、空港で取得できる到着ビザは、2008年の6%から増加し、2023年は世界人口の14%に適用されている。

以下は、「観光ビザ開放度指数」を、地域ごとに示したものだ。アフリカ、北中南米、アジア・太平洋、欧州、中東の5つの地域うち、ビザに関して最も開放度が高いのは、アジア・太平洋である。より細分化した地域で見ると、東南アジア、東アフリカ、カリブ海での開放度が高い。一方、スコアが低く、開放度が低い地域は、北米、北ヨーロッパ、西ヨーロッパ、北アフリカ、中央アフリカである。

地域別観光ビザ開放度指数(2023年)*「観光ビザ開放度指数」は、「ビザなし」=1、「到着時ビザ」=0.7、「電子ビザ」=0.5、「従来型ビザ」=0として、ビザ取得を免除される世界人口の割合を合計して算出される

 

ビザ開放度が高い国は太平洋、カリブなどの島国

次に、国別の「観光ビザ開放度指数」ランキングを見てみよう。以下の表に上位20カ国が並んでいる。スコア1001位は、オセアニア地域に属するクック諸島、ニウエ、ミクロネシア連邦の3カ国。20カ国中15カ国は、国連が小島嶼開発途上国と認定する、太平洋、カリブ、アフリカ地域等にある、領土が狭い島国である。経済的に観光業への依存度が高い国々が多い。こうした15カ国以外では、9位にマカオ、10位にマレーシア、11位にエクアドル、16位にボリビア、20位にルワンダがランクしている。

観光ビザ開放度指数ランキング上位20カ国(2023年)

 

ビザなしの海外旅行が最もできる国民はシンガポール

次に、「モビリティ・スコア」を見てみよう。これは、各国の国民が海外旅行をする際、どれだけビザなしで国家間の移動ができるかを示す指数だ。0から215のスコアで表され、スコアが高いほど、その国の国民はビザなしでの移動性が高いことを示している。

2023年の結果は、1位がシンガポールで、2位以下はドイツ、イタリア、スペインと、12位までをヨーロッパの国々が占めている。14位がアメリカとスイスで、日本は16位にランクしている。

モビリティ・スコアランキング上位30カ国(2023年)
*「モビリティ・スコア」は、「ビザなし」=1、「到着時ビザ」=0.7、「電子ビザ」=0.5、「従来型ビザ」=0として、各国の国民が必要とする旅行ビザ制度を合計して算出される

 

デジタルノマドビザの導入は北中南米とヨーロッパが中心

最後に、新しいタイプのビザである、「デジタルノマドビザ」についてお伝えする。デジタルノマドビザは、リモートワークをしながら6カ月から数年間といった長期間、その国での滞在を許可するビザ。コロナ禍を契機にノマドワーカーの増加を背景として、各国で導入が進んでいる。観光ビザよりも包括的で、従来の就労ビザよりも柔軟性があることが特徴で、自国と異なる環境での生活を体験しながらキャリアを追求し続けたい人にとっては理想的な選択肢である。

デジタルノマドビザを発給している国は現時点で50の国と地域。下のグラフが示す通り、北中南米とヨーロッパが中心だ。国によって、ビザ取得期間や納税義務、保険の加入義務、宿泊施設の事前手配、収入要件などが異なる。最長期間のデジタルノマドビザを発給している国はタイ。収入要件が最も高いのは、ケイマン諸島、インドネシア、メキシコ。一方、ビザの申請に収入要件を設けていない国には、アルゼンチン、バハマ、モロッコなどがある。

日本は3月末にデジタルノマドの制度(年収1000万円以上の外国人リモートワーカーが対象で180日間滞在できる)を開始する予定とのことで、発表が待たれる。

地域別のデジタルノマドビザ発給国数

冒頭で述べた通り、ビザ制度の改善は、観光産業の成長に極めて重要である。ビザ戦略を観光の視点から推し進めること、リスクの低い旅行者市場に向けたビザ免除プログラムを実施すること、到着ビザ発給施設を拡大すること、幅広い層へのビザ制度に関する最新情報の提供のほか、ビザ申請手続きの合理化、手続きにかかる時間の短縮、入国手続きの最適化などが、ビザ制度の効率性を高めるだけでなく、観光地としての魅力の拡大のためにも不可欠であると、報告書は結んでいる。

 

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