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旅行・観光開発ランキング 2024年版発表、日本は3位「文化資源」高く評価 ―世界経済フォーラム

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世界経済フォーラム(World Economic Forum:WEF)が2024年版の「旅行・観光開発ランキング(Travel & Tourism Development Index)」を発表した。この調査レポートは「旅行・観光競争力ランキング(Travel & Tourism Competitiveness Index)」として2007年から作成されている世界経済フォーラムの旗艦指数を発展させ、前回(2021年版)より「旅行・観光開発ランキング」として公開されているもので、今回が第2版となる。

指標の変化については前回のレポートに詳しい。 なお、今回の発表では、新たに入手可能となったデータと、旅行・観光が環境と社会に与える影響に関する最近開発された指標に基づき、いくつかの改良が加えられているため、2021年版とは単純に比較はできないとのことだ。実際、2021年版発表時に1位だった日本は、本レポートの2021年の記録では2位(スコア5.16)で、アメリカが1位(5.25)となっていることに留意されたい。


トップ10にアジアから日本と中国


2024年のランキング首位はアメリカで、ついでスペイン、日本とトップ3の顔ぶれは2019年版、2021年版と同じだった。さらに、フランス、オーストラリア、ドイツ、イギリス、中国、イタリア、スイスがトップ10内に顔を揃えた。上位30カ国のうち26カ国が高所得国で、19カ国が欧州、7カ国がアジア太平洋、3カ国が南北アメリカ、1カ国(アラブ首長国連邦)が中東・北アフリカ地域となっている。

アジアでは他に、シンガポール(13位)、韓国(14位)、インドネシア(22位)、マレーシア(35位)、インド(39位)、タイ(47位)が上位50位に入っている。

今回のランキングは、一般的に高所得国が旅行・観光の発展にとってより有利な条件を持ち続けていることを浮き彫りにしている。ビジネス環境、ダイナミックな労働市場、開かれた旅行政策、強力な交通・観光インフラ、整備された自然・文化・非レジャー資源などが旅行・観光の発展を後押ししているのだ。

また、開発途上国では、近年で最も大きな改善が見られた。上位中所得国の中では、中国がトップ10入りを果たし、インドネシア、ブラジル、トルコの主要な新興旅行・観光地が中国とともにランキングの上位4分の1に入った。

より広範に見ると、2019年以降スコアが向上した国の70%以上を低中所得国から高中所得国が占め、中東・アフリカ地域とサハラ以南のアフリカは最もスコアが向上した地域の1つだ。サウジアラビアとアラブ首長国連邦は、2019年から2024年の間に最も改善した上位10カ国にランクインした唯一の高所得国となっている。


このような躍進にもかかわらず、同レポートは、開発途上国と高所得国の間にある基盤状況や市場シェアのギャップを埋めるためには、多額の投資が必要であると警告している。そのための1つの道筋として考えられるのは、自然・文化的資産を持続的に活用することだ。自然・文化的資産は、他の要因に比べて国の所得水準との相関が低く、開発途上国に観光主導の経済発展の機会を提供することができるからだ。

 
日本の強みは「文化資源」

次に、日本のカテゴリー別のスコアを紹介する。

「環境整備」(2021年12位→18位)、「旅行・観光政策と実現条件」(82位→54位)、「インフラとサービス」(9位→14位)、「旅行・観光の需要喚起」(3位→3位)、「旅行・観光の持続可能性」(12位→51位)の5つのカテゴリーのうち、「旅行・観光の需要喚起」は2021年に引き続き、高い評価を得た。「旅行・観光の需要喚起」とは、いわゆるその国・地域に「旅行したい理由」があるかどうかを示す指標だ。

この5つのカテゴリーはさらに、下の表のように、17の項目に細分化される。ここでは日本の順位とスコアの変化を見てみよう。カテゴリーで高い評価を得た「旅行・観光の需要喚起」の項目である「自然資源」は2021年の12位から11位へ1つ順位を上げ、非レジャー資源は4位を維持した。「非レジャー資源」とは、レジャー以外のビジネス、教育、医療等を目的とした旅行需要があるかどうかを示す指標だ。そして、「文化資源」は4位から2位へランクアップし、17項目中最も高い順位をつけている。

「インフラとサービス」では、「航空輸送」が14位、「陸上・港湾」が4位にランク。ただし、宿泊施設やレンタカーなどの「観光サービスとインフラ」に関しての順位は交通インフラと比べるとかなり低い。ほかには、「健康・衛生」「ICTの準備」のスコアが7点満点で6点台を超え評価されているのがわかる。

また、順位やスコアが低い、いわゆる「弱点」の項目に関しては、前述の「観光サービスとインフラ」に加え、国境開放度や価格競争力が4点台に過ぎない。また、「旅行・観光需要に対する圧力と影響」は106位(スコア3.02)と際立って低い。これはいわゆる目的地の分散化やオーバーツーリズムの問題への対応を示すスコアだ。旅行者と地域住民の双方が満足できる持続可能な観光への取り組みは引き続き、日本の課題となると言っていいだろう。

 
これからの旅行・観光業の課題


パンデミック後の観光産業の成長は続いているが、世界的にはまだ複雑な課題に直面しており、回復の度合いはまちまちだ。ランキング119カ国中71カ国が2019年版から2024年版にかけてスコアを伸ばしたものの、平均スコアはパンデミック前のレベルをわずか0.7%上回ったに過ぎない。

また、成長と持続可能性の両立は旅行・観光業にとって依然として大きな問題となっている。2019年から2024年にかけて、「環境の持続可能性」や「旅行・観光の社会経済的インパクト」といった項目の平均スコアが上昇しているが、これはエネルギーの持続可能性や高賃金雇用への貢献といった分野での幅広い進展を反映している。一方、日本でもそうだが、「旅行・観光の持続可能性」(2021年以降)のスコアが低下しているのは、旅行需要の回復が続く中、高い季節性やオーバーツーリズムといった持続可能性に関する過去の課題が再燃していることを反映している。さらに、観光業は発展途上国における比較的高賃金の雇用の主要な供給源である一方で、中東・北アフリカや南アジアなどの地域にとってジェンダー公正は大きな問題のままだ。

観光業は、新型コロナウィスにより危機は乗り越えたものの、地政学的リスクや環境リスクの高まりから、持続可能性の実践に対する監視の強化、ビッグデータや人工知能などの新しいデジタル技術の影響に至るまで、さまざまな外的課題に引き続き取り組む必要がある。

加えて、労働力不足が続いており、航空路線のキャパシティや接続性、設備投資、生産性、その他の部門の供給要因が需要の増加に追いついていない。その結果生じた需給のアンバランスは、グローバルなインフレによって悪化し、価格競争力の低下とサービスの混乱につながっていると、レポートは指摘する。

▼旅行・観光開発ランキング全順位はこちら 

*スコアは1~7の7段階評価(7が最もよい)

*表内は2019年との比較


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