データインバウンド
世界で最も住みやすい都市ランキング2024 ウィーンが3年連続首位、大阪9位。都市の住宅供給不足が課題に
2024.07.04
やまとごころ編集部英国の政治経済誌エコノミストの調査部門エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)が、2024年の「住みやすさ指数」を発表、ウィーンが3年連続で「世界で最も住みやすい都市」に選ばれた。
この調査は、世界の173都市を対象に、安定性、医療、文化・環境、教育、インフラの5つのカテゴリーに分け、30の指標で数値化し、住みやすさを評価するもので、2020年をのぞき、毎年ランキング形式で公表されている。2024年の調査は2月12日~3月17日に実施された。
2023年と比べると、EIUの「住みやすさ指数」はこの1年間でわずかに上昇したことになる。先進国の多くの都市で安定性とインフラが低下したものの、発展途上国のいくつかの都市で見られた医療と教育の構造的改善によって相殺された形だ。
最も住みやすい都市はオーストリアのウィーン、大阪9位に
3年連続で1位となったウィーンは安定性、医療、教育、インフラの各項目で100点満点を獲得。ただ、文化・環境については、大きなスポーツイベントがなかったため、93.5点と満点には届かなかった。
なお、ウィーンに続き、コペンハーゲン、チューリッヒがトップ3に入り、さらに5位のジュネーブを加えて西ヨーロッパ4都市が、昨年同様トップ10入りを果たし、住みやすい地域としての地位を確固たるものにしている。
なお、深刻な住宅危機によって、都市のインフラスコアを引き下げたのが目立つ。オーストラリアの主要2都市、4位メルボルン(2023年3位)と7位シドニー(同4位)は、住宅供給が大幅に不足する中、いずれも順位を下げている。同様の理由で、カナダのバンクーバー(カナダ)は昨年5位から7位に順位を下げ、トロントは2年ぶりにトップ10から脱落した(12位)。
アジア太平洋地域ではオーストラリアの2都市に加え、大阪とニュージーランドのオークランドがトップ10に入った。昨年と比較して評価スコアはそのままで、共に2023年は10位だったものの、今年は9位と順位を1つ上げている。

西ヨーロッパと北米は住みやすい地域も、住宅供給不足の懸念
次に地域別に見ていこう。このレポートは世界を(下の図版の上から順に)、アジア太平洋、東ヨーロッパ、ラテンアメリカ、中東・北アフリカ、北米、サハラ以南アフリカの6つの地域に分けている。そのうち、トップのスコアを記録した西ヨーロッパは、安定性、医療、文化・環境、インフラという4つのカテゴリーで1位の座を占め、世界で最も住みやすい地域であることを証明した。今年の「世界で最も住みやすい都市」ランキングでも、西ヨーロッパの30都市が100点満点中92点という高い平均点を記録している。ただし、ドイツ、アイルランド、ベルギーは、抗議行動や犯罪が増加する中、安定性のカテゴリーが悪化したため、総合スコアとしては昨年より低下している。
一方、教育のカテゴリーで首位だった北米は、25都市の平均スコアは90.5で、地域別では2位だが、カナダでは住宅危機が続いているため、インフラのスコアが昨年より低下している。
このように、西ヨーロッパと北米の平均スコアは昨年より低下くなっているが、他の5地域(アジア太平洋、東ヨーロッパ、ラテンアメリカ、中東・北アフリカ、サハラ以南アフリカ)はすべて平均スコアが上昇している。3位のアジア太平洋地域は0.1ポイントとわずかな改善にとどまったが、4位の東ヨーロッパは、医療と教育の改善を背景に、0.4ポイントと最大の伸びを示した。ラテンアメリカ、中東・北アフリカ、サハラ以南のアフリカも、医療と教育のスコアが上昇した。ただし、サハラ以南のアフリカは依然として世界で最も住みにくい地域となっている。
▶️地域別のスコアの変化(2023年比)

出典:EIU The Global Liveability Index 2024
世界で最も住みにくい都市はシリアのダマスカス
住みやすさランキングの下位は、サハラ以南のアフリカと中東・北アフリカの都市が占めている。
ダマスカス(シリア)は、依然として世界で最も住みにくい都市と評価されている。最新の調査では100点満点中わずか30.7ポイントで、次に悪いトリポリ(リビア)よりも10ポイント近く低い。なお、長年にわたる内戦で経済が壊滅的な打撃を受けた両都市は、安定性の点数が非常に低く、住みやすさの改善は見られない。さらに心配なのは、下位4都市のいずれも、昨年から総合スコアが改善されていないことだ。

インフラ改善により、アジア太平洋の都市は軒並みランクアップ
昨年から最も順位を上げた都市は香港だった。安定性と医療のスコアが向上し、ランキングは61位から50位に上昇した。シンガポール、ホーチミンシティ、バンガロールなど、他のアジアの都市も医療や教育のカテゴリーで改善し、順位を上げている。
一方、テルアビブ(イスラエル)は、安定性、文化・環境、インフラのスコアが悪化し、92位から112位に後退、今年の指数で最大の下落都市となった。これは、2023年10月にハマスがイスラエルを攻撃し、その後ガザでハマスとの戦争が起きたことによる。
都市の住みやすさを脅かす3つの要素とは?
今回の調査結果を受け、レポートは以下のように締め括っている。
全体として、調査対象173都市の平均スコアは100点満点中76.1点に上昇したが、地政学的紛争、市民不安、住宅危機が調査対象都市の多くで足かせとなり、改善はわずかだった。中東の紛争はテルアビブの順位を下げ、ロシアとウクライナの間で続く戦争はキーフを下位10都市にとどめている。
ヨーロッパでは、農業から移民政策に至るまで、さまざまな理由で抗議行動が増加しており、この地域の都市の安定性スコアが低下した。
一方、生活費の危機は多くの国で長引いており、住宅費はインフレの最も厄介な要素のひとつとなっている。特にオーストラリアとカナダでは、賃貸物件の供給が史上最低水準にあり、金利上昇にもかかわらず購入価格が上昇し続けているため、反移民感情をさらに煽っている。
ニューカレドニアのヌメアで起きた暴動や米国全土のキャンパスでの抗議デモなど、調査を実施した後でも、世界各地で内乱やデモが多発。近い将来に住みやすさに対する圧力が緩和される見込みが低いことを示唆している。
▼昨年のランキングはこちら
世界で最も住みやすい都市ランキング2023、1位ウィーンは2年連続。日本の都市の順位は?
▼EIUによるこちらのランキングも興味深いです
2023年版生活費の高い都市ランキング、1位になったアジアの都市はどこ? トップ3にスイス2都市
最新のデータインバウンド
-

2025年1月〜9月の国際観光客数 11億人を突破、前年同期比5%増 ― UN Tourism (2025.12.04)
-

2025年9月の訪日宿泊 外国人宿泊数は微増、地方が堅調に伸長。三重・新潟・鳥取で大幅増 (2025.12.01)
-

香港からの海外旅行が過去最高に、訪港客は依然として回復途上 ー2024年年間統計発表 (2025.11.27)
-

旅先で調理、デリバリーする人が増加、アジア旅行者の食スタイル多様化 ーBooking.com (2025.11.25)
-

2025年10月の訪日客数389万人、累計は3500万人突破。紅葉シーズン需要が各市場を押し上げ (2025.11.19)
-

スマホ完結・顔認証が広がる一方で、課題も。IATA2025年調査が示す旅行者の意識変化 (2025.11.18)
-

2026年の旅行予測、個性・内面を映し出す「10のトレンド」ーBooking.com調査 (2025.11.17)
-

2026年の旅は“自己表現”が主流に、ミレニアル・Z世代が旅行支出押し上げ ーSkyscanner調査 (2025.11.13)
-

2026年の旅は“生き方”を映す Z世代がけん引する5つの変化 Trip.com×Google調査 (2025.11.11)
