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アジア太平洋の富裕層旅行に見られる注目のトレンド、新しい3つのペルソナとは? ーマリオット調査

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アジア太平洋地域のラグジュアリー市場が成熟を続ける中、マリオット・インターナショナルがラグジュアリー・トラベルに関する意識調査を実施した。調査期間は2024年4月18日から5月13日まで、対象は主にレジャー目的で頻繁に海外旅行をするオーストラリア、シンガポール、韓国、日本、インドネシア、インドの6カ国、1202名の富裕層。これにより、アジア太平洋地域の富裕層旅行者の複雑な旅行パターン、嗜好などが明らかになった。

レポートは、富裕層旅行者の影響力は、今後も拡大する可能性が高いと伝える。その理由として、 回答者の68%が今後12カ月の間にラグジュアリーな旅行により多くの支出を予定しており、33%が2024年少なくとも7回の休暇を計画していることを挙げている。
(図版出典:New Luxe Landscapes-Emerging Luxury Travel Trends in Asia Pacific)

 

人気はオーストラリアと日本

アジア太平洋地域の富裕層はこれからの1年、どこへ行こうとしているのだろうか。

域内旅行の需要は依然として高い。回答者の10人中7人がアジア太平洋地域(APAC)内での休暇を計画しており、韓国人の85%がこの選択肢を選んでいる。ヨーロッパも引き続き人気の旅行先で、53%が今後1年以内にヨーロッパへのレジャー旅行を予定している。興味深いことに、インドネシア人はヨーロッパを好み、平均より多い68%がヨーロッパでの休暇を選んでいる。その他の需要の高い地域は、北米(38%)、中東(25%)、南米(19%)だった。

▶︎今後1年間にどこへ行きますか?

APACの中では、オーストラリアが富裕層旅行者の間で最も選ばれており、46%が今後1年以内にオーストラリアへの訪問を計画していると回答。日本は僅差の42%で2位、次いで香港(27%)、マレーシア、シンガポール(25%)、中国本土(23%)、タイ(22%)と続く。

彼らは主要都市だけに注目するのではなく、副次的な都市への訪問も計画している。たとえばオーストラリアでは、シドニーとメルボルンといった主要都市だけでなく、首都キャンベラやブリスベン、パースへの旅行も旅程に含まれている。同様に日本では、ほとんどの観光客が東京と大阪を訪れるが、福岡や長崎といったそれほど混雑していない観光地への旅行者も増えている。

 

ラグジュアリーな体験に安心感が欠かせない

また、贅沢な旅行体験という点では、富裕層の42%がプライベートホテルや高級ホテルを確保するためにより多くの出費を覚悟している。35%はユニークな料理体験に奮発すると答え、33%は一等地にあるホテルにもっとお金を払うと回答した。そして、ほとんどの回答者(91%)が、安心感や安全な環境は、ラグジュアリーな体験をする上で重要であると答えている。

旅行計画では、慣れ親しんだ場所に安らぎを見出しているものの、未知の目的地への冒険もいとわない。旅行者の6割は、人気のある、またはよく知られた目的地を訪れることを好むが、4割の旅行者は、足を踏み入れたことのない場所へ行きたいと考えている。富裕層旅行者の78%が、新しい目的地を発見することを贅沢な休暇の証とみなしていることもわかった。

旅行のペースについては、6割の旅行者が自由時間と企画されたアクティビティのバランスを取りたがる一方で、インド人とインドネシア人は、忙しく動き回るテンポの速い旅程を好むことがわかった。対照的に、オーストラリア人、日本人、シンガポール人の旅行者は、周囲の環境を楽しむために、よりゆったりとしたペースで旅行することを好んでいる。

 

富裕層旅行者のにみえる5つのトレンド

さて、このレポートでは、調査からわかった富裕層旅行者の動機、消費習慣、旅行パターンに関して、5つの主要トレンドを挙げている。

最新の富裕層旅行者は、新しい体験と深い文化理解を求める傾向が強まっている。ここでは、彼らの旅行に対する特徴やトレンド、そして新しい旅行者像について詳しく見ていく。

1. 美食旅行
富裕層旅行者は、食体験を旅行の主要な要素として捉えている。調査では、88%が新しい食やグルメの冒険を重要視しており、82%が新しいレストランの体験を「重要」または「非常に重要」と考えている。食のトレンドに敏感な富裕層は、美食目的での旅行を計画し、その目的地を選定している。

▶︎新しい食やグルメの冒険を重要視しますか? (グレイ=重要、黒=非常に重要)


(上から、日本、オーストラリア、インドネシア、韓国、シンガポール、インド、APAC平均)

2. 多世代旅行
多世代の家族旅行が増加している。特に、節目となる誕生日や結婚式、スポーツイベント、宗教的祝日などの重要なイベントを祝うために大勢で旅行する傾向がある。このような旅行は、家族間の絆を深め、安心感を提供するものとなっている。

▶︎
誰と旅行しますか?
 (左から家族、親戚、友人、お祝いのため、カップル、一人)


(上から、シンガポール、韓国、日本、インド、インドネシア、オーストラリア、APAC平均)

3. インドにおける旅行熱
インドでは、観光旅行の需要が過去最高の水準に達している。インド人旅行者の89%が今年のレジャー旅行に多くのお金を使う予定であり、特に海外旅行の人気が急騰。インドでは富裕層が増加しており、この傾向を後押ししている。

4. 深い文化体験
アジア太平洋地域の富裕層旅行者は、訪問先のコミュニティに深く関わることを重視している。単に観光名所を訪れるのではなく、地元の人々と交流し、その文化を深く理解しようとしている。真の贅沢とは、長期的な思い出を作り、地元の文化とのつながりを築くことである。

5 新しい旅行者ペルソナ (顧客像)
アジア太平洋地域で中間所得層が急増し、休暇を過ごすための可処分所得が増え、高齢化した旅行者の人口が増加するなか、新たな旅行者カテゴリーが出現している。本調査では3つのペルソナが明らかになった。いずれも富裕層に対する一般的な固定観念を覆すものであり、独立心が強く、知識が豊富で、豊かで多様な旅行体験を求めている姿が浮かび上がった。

注目される3つの新しいペルソナ

1. ベンチャー旅行者
ビジネスチャンスを求めて休暇先を選ぶ「ベンチャー旅行者」が増えている。彼らは未発展の場所や新しいデスティネーションを発見することに積極的で、家族や恋人とともに豪華な旅行を楽しむ傾向がある。根っからの起業家精神を持ち、新しいビジネス機会を探求しながら旅行を楽しんでいる。目的地で一番人気なのはオーストラリア(60.16%)、ついで東京(44.53%)、中国(35.16%)、シンガポール(33.59%)、香港(31.25%)となっており、都市では、東京が最も人気が高かった。

2. エクスペリエンスの目利き
「エクスペリエンスの目利き」は主にミレニアル世代で構成されている。彼らは、豊かで多様な旅行体験を求めており、独立心が強く、知識が豊富で、旅行を通じて新しい文化や体験を求め、その地の真の魅力を探求する。人気の旅行先トップ5はオーストラリア(60.71%)、日本(41.96%)、中国と香港(共に33.93%)、マレーシア(33.04%)だった。

3. 時代を超越した冒険家
65歳以上のシニア世代の旅行者といえば一定のイメージがあるかもしれないが、その固定観念を打ち破るのが、「時代を超越した冒険家」だ。観光名所にはあまり興味がなく、訪れた地元の人々と個人的なつながりを持つことを重視。旅行を通じて自分自身を豊かにすることを求めている。このタイプの旅行者は全市場で見られるが、先進国市場である日本、オーストラリア、韓国、シンガポールで特に多い。彼らの旅行先としては、日本(50%)とオーストラリア(45.95%)が高い人気を集めた。

 
ここまで見てきたように、最新の富裕層旅行者は、新しい体験や文化理解を求め、深い人間関係を築くことを重視している。美食旅行、多世代旅行、インドの旅行熱など、さまざまなトレンドが見られるなか、新しい旅行者像も登場した。独自の価値観を持ち、旅行を通じて自分自身を豊かにすることを追求しているこの層を取り込むのであれば、彼らの特徴を認識し、彼らのニーズを予測し、彼らの期待に応える体験を創造することが必要であるとレポートは結んでいる。

 

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