データインバウンド
ダイバーシティ・インクルージョンの未来へ向け、旅行体験のストレス軽減に必要なことは? ーエクスペディア調査
2024.09.12
やまとごころ編集部エクスペディア・グループは、『Journeys for All(すべての人の旅)』というタイトルで、「旅行におけるインクルージョン」に関する研究を発表した。これは、アメリカの人種、民族、性別、性自認、障害、経済状況、地理的な位置などの要因を持つ、あるいはその要因が重なり合う「インターセクショナル・アイデンティティ」を持つ個人やグループ(以下、十分なサービスを受けていない旅行者)が、旅行業界において直面する障壁を取り除くための重要な洞察と提言を提供する初めての調査となるという。
アイデンティティが旅行体験に与える影響
まず、アイデンティティの違いに関わらず、すべての旅行者はレジャー旅行に共通の目的を持っていることがわかった。アメリカの人口構成を反映した一般的な旅行者グループと、十分なサービスを受けていない旅行者グループの双方にとって、レジャー旅行の目的として「リラックス」「家族との絆」「冒険」がトップ3に挙げられているのだ。
では、今回の調査のテーマである、十分なサービスを受けていない旅行者は旅行体験全般についてどのように感じているのだろうか。
調査によると、十分なサービスを受けていない旅行者の42%が、旅行計画の段階で自身のアイデンティティに制限を感じていると答えている。具体的には、「旅行先の選択」にアイデンティティが大きく影響すると答えた割合は、一般旅行者の44%に対して、十分なサービスを受けていない旅行者では50%に上る。「宿泊先の選択」についても、一般旅行者の42%に対し、十分なサービスを受けていない旅行者の48%が影響を受けると回答している。また、ブラック及び障害のあるラティーノ(ラテンアメリカと文化的つながりを持つアメリカ大陸の人々)の旅行者では、その割合はそれぞれさらに高くなる(ブラック:69%、ラティーノ:67%)。「目的地までの交通手段」に関しても、45%の十分なサービスを受けていない旅行者がアイデンティティによる影響を感じており、一般旅行者の37%と比べても高い。
旅行計画にかかる時間的負担
旅行計画にかける時間は、一般旅行者と十分なサービスを受けていない旅行者では同程度、平均9時間だが、後者はさらに安全性や歓迎されるかを確認するために平均5時間を追加で費やしている。
特に、インターセクショナル・アイデンティティを持つ旅行者ではこの傾向が強く、LGBTQIA+のラティーノはプランニングに11時間、目的地が歓迎されていることを確認するためにさらに9時間を費やしている。同様に、LGBTQIA+の女性は通常14時間かけて計画を立て、さらに8時間かけて歓迎条件をチェックしていることがわかった。
旅行広告には自分たちが表現されていない
旅行広告やプロモーションで自分たちがどのように表現されているかも、十分なサービスを受けていない旅行者にとっては重要だ。70%の十分なサービスを受けていない旅行者が、広告で自分たちと同様の層が反映されていると感じた場合、旅行を計画する可能性が高くなると回答している。また、76%の旅行者が、広告で自身が表現されることを重要視している。しかし、広告で自分たちがよく表現されていると感じる旅行者はわずか16%で、改善の余地が大いにある。ただし、これは一般旅行者も同様に感じている点に注目する必要がある。すなわち、すべての旅行者の広告における表現を改善する必要があるということだ。
また、この点について、インターセクショナル・アイデンティティを持つ旅行者の場合を見ると、障害を持つLGBTQIA+の旅行者では平均より多い76%が、プロモーションで自分たちが表現されているのを見て、旅行に行く可能性が高まると回答しているにもかかわらず、5人に1人(20%)は旅行広告が自分たちを全く表現していないと回答している。
ダイバーシティとインクルージョン
次に、ダイバーシティとインクルージョンに関する質問の回答を見てみよう。十分なサービスを受けていない旅行者の73%、つまり約4人中3人が、ダイバーシティとインクルージョンに取り組んでいる企業を優先して利用する傾向があることがわかった。また、71%の十分なサービスを受けていない旅行者が、旅行会社のスタッフがダイバーシティとインクルージョンに関する研修を受けることが重要だと考えている。
さらに、十分なサービスを受けていない旅行者は、目的地までの移動中や滞在中に、通常の旅行ストレスに加えて特有の課題にも直面していることが明らかになった。
たとえば、ラティーノの旅行者は他の旅行者よりも、移動中や目的地でのカスタマーサービスに対して長い待ち時間が発生しやすい。ラティーノ旅行者の35%が移動中に問題が発生した際に、カスタマーサービスと話すまでに長時間待たされると答え、23%が目的地で問題が起きた際にも同様に待たされると回答している。この問題は、特にスペイン語を話すラティーノ旅行者に顕著だった。
障害を持つ旅行者も、旅行中に大きな困難に直面している。4人に1人(23%)が、目的地までの移動時にアクセシビリティの問題に遭遇し、約5人に1人(17%)が、旅行業界が障害者の権利を十分に理解していないことを問題視している。具体的には、過度に厳しいセキュリティチェックや、介助動物に対する不当な請求などが挙げられる。
ある旅行者は「補助犬を連れてチェックインすると、いつも嫌な顔をされ、時には犬の宿泊代を請求されることもあります。そのたびに『これは補助犬です』と説明しなければなりません」と話している。このような認識不足が、彼らの旅行体験に大きな影響を与えているのだ。
旅行業界に求められる努力
今回の調査で、旅行の計画、移動中、そして目的地での滞在というすべての段階において、十分なサービスを受けていない旅行者のニーズが評価され、安全性、アクセシビリティ、歓迎されるかどうかなど、旅行中に複数の懸念を抱いていることが明らかになった。
報告書は、十分なサービスを受けていない旅行者のニーズがしばしば見過ごされている現状を指摘し、これらのグループが今後さらに成長し、旅行市場への影響が大きくなると予測。旅行業界は、偏見や差別、個人の安全性の欠如といった障壁を取り除く努力が必要とした。
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