データインバウンド
2024年以降の旅行業界が注目する3つのトレンド、今後急成長するカテゴリーとは?ーユーロモニター社
2024.09.20
やまとごころ編集部英国の市場調査会社ユーロモニターインターナショナルが、2024年から2029年までの旅行業界の変化を予測し、そこから見える3つのトレンド予測を発表した。
2024年は旅行業界が活況を呈しているが、人気観光地では観光客の増加によるオーバーツーリズムなどの問題も深刻化している。こうした状況の中、今後旅行業界では、ソースマーケットの変化、デジタル化の加速、そして環境に配慮した持続可能な観光の推進といった戦略が注目を集めるだろうと予測されている。
(図版出典:Euromonitor International)
観光支出の多い市場の多様化
2024年は特にミレニアル世代やZ世代を中心に、旅行への意欲が高まっている。経済状況や世界の情勢が不安定な中でも、旅行は人々の優先事項であり、特に西ヨーロッパ、中東、アフリカ地域では、コロナ禍以前の水準をすでに超えるほどの回復を見せている。
そんな中、旅行支出の大きい、アメリカ、ドイツ、中国、イギリス、フランスなどが依然として世界の旅行市場を牽引している。上位5カ国だけでも2024年の海外旅行支出額は、合計で6620億ドル(約93兆円)に達する見込みだという。また、2029年までの予測では、インドが新たな注目市場として浮上している。
多くの観光地は、高額な支出をする観光客の誘致に力を入れている。これは、中国のアウトバウンド旅行支出が、物価の高騰や航空券の入手難などにより回復が遅れているため、コロナ禍以前の水準に戻るのが2026年頃と予想されているためだ。
一方で各地の国内旅行市場も、2024年は支出額が3.4兆ドル(480兆円)で過去最高を記録するなど好調であり、今後5年間では年間5%の年平均成長率が見込まれている。しかし、国内旅行の場合は旅行の回数自体は多いものの、海外旅行と比較すると、1人当たりの支出額は低い傾向にある。
▶︎海外旅行支出額の上位国(2024年と2029年)
左より、イタリア、オーストラリア、オランダ、カナダ、香港、インド、フランス、イギリス、ドイツ、中国、アメリカ
加速するデジタル化、オンライン予約が占める割合は69%から73%へ
旅行業界はますますデジタル化が進み、生成AIの登場により、そのスピードが加速している。
技術革新によって旅行の予約方法は大きく変化しており、2019年には60%弱だったオンラインの旅行予約は、2024年には69%となり、2029年には73%に達すると予測されている。その中でもスマートフォンを使った旅行予約は、安全で手軽なモバイル決済の普及により、2024年には全体の37%、2029年には44%に達する見込みだ。
また、旅行予約市場では現在、OTAなどの仲介業者が、ホテルや航空会社などの事業者よりも大きなシェアを占めている。しかし、AI技術の進化によって旅行者が自分だけのプランを簡単に作れるようになり、将来的には仲介業者を介さずに直接予約する人が増える可能性も示唆されている。
▶︎旅行予約チャネル別、利用割合の変遷(2019年から2029年)
黒=オンライン、水色=モバイル、オレンジ=オフライン
持続可能な旅行トレンドと鉄道利用の拡大
2024年は旅行者の環境問題への関心の高まりから、持続可能な旅行への注目が集まっている。
旅行者が、単に観光地を巡るだけではなく、地元の文化や自然に深く触れ、地域社会に貢献したいという意識を持つようになっている表れだという。同傾向を反映し、2024年から2029年の間、ガイド付きツアーの年平均成長率は8.8%と予測されている。他にも、博物館や文化遺産への訪問(同8.1%)、国立公園や自然保護区への訪問(同7.5%)など、体験型の旅行の急速な成長が見込まれている。また、スポーツイベントをきっかけとした旅行も急速に成長し、年平均成長率は6%と予測された。
企業もまた、環境問題への取り組みを強化しており、社員の出張にも環境に配慮した選択肢を求めるようになった。航空機の利用を減らし、鉄道の利用を推進するなど、輸送手段も環境に配慮したものへとシフトしている。
鉄道は2024年から2029年にかけての年平均成長率が12.7%で、利用者が大幅に増えることが予測されている。2029年には、鉄道での移動がすべての移動手段の約4分の1を占める見込みだという。
▶︎売上高が急成長している旅行カテゴリー(2024年から2029年の年平均成長率%)
(1ドル=141円計算)
▼訪日客の消費額も上昇
2024年4-6月期インバウンド消費額2兆1370億円、上半期で4兆円目前。8兆円も視野に。1人当たり23.9万円で大幅増
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