データインバウンド
アジア太平洋の世代間旅行、ミレニアル世代がリード。家族旅行で重視することは? ーブッキング・ドットコム調査
2024.10.16
やまとごころ編集部アジア太平洋地域では、多世代世帯が世界平均より43%多いというデータがある。このような大家族での生活を重視する文化は、家族の旅行への取り組み方にも大きく影響し、家族の価値観の共有や緊密な関係が休暇のあり方に反映される。これに注目したブッキング・ドットコムは、世代間旅行に関する調査を行い、その結果を発表した。対象となったのは、同地域の11市場(オーストラリア、中国、香港、インド、日本、ニュージーランド、シンガポール、韓国、台湾、タイ、ベトナム)で、8000人を超える旅行者から回答を得た。
思い出を共有し、絆を深める家族旅行を重視するアジアの旅行者
訪日観光客の中にも家族連れを見かけることが多くなった。街頭でベビーカーを押す夫婦や、高齢の両親を含めた大家族が、観光地を巡っている姿も目にする。
調査ではこうした世代を超えた旅行は家族の絆を深めることに繋がり、47%の旅行者が愛する人との絆や永続的な思い出を作る喜びを重要視し、39%が旅を通じて、普段会うことのない家族との再会を大切にしていることがわかった。また、27%が異なる世代の視点から学ぶことを楽しみ、26%が異なる家族のロールモデルから子供が学びを得ることを大切にしている。
ただし、そうした旅における優先事項にも地域差がある。たとえば、ニュージーランドでは遠く離れた家族との再会が最も重視され、インドでは伝統や文化の継承に重点が置かれている。
国・地域によって異なる、旅へのニーズ
高齢の祖父母から元気いっぱいの子供たちまで、すべての人が満足する家族旅行を計画することは容易ではない。安全や健康への懸念(30%)、興味の違い(30%)、食事の好み(28%)が主な課題となっている。体力の差(27%)、家族内の力関係の調整(25%)も旅行体験を複雑にする要因だ。
それでは、こうした旅行を成功させる秘訣はどのようなものか。それは、世代を超えて共感できる体験をすることだ。4組に1組以上の家族(27%)が、同窓会や特別な日のための旅行を楽しんでいる。親戚を訪ねること(21%)も、家族の絆を深め、現地の文化を感じるために好まれる。また、食の体験(21%)や観光(20%)も、家族で新しい文化や料理を探求する機会として人気のアクティビティとなっている。
旅行者の好みも地域によって異なる。タイ人旅行者はビーチや海岸沿いの旅行を好み、台湾のファミリーは食の体験を中心に休暇を過ごす傾向が強い。ベトナムの家族はクルーズに関心が高く、地域平均の2倍以上の割合でクルーズ旅行を計画している。一方、インドの家庭はスポーツイベントやコンサート、音楽祭に強い関心を持っている。
旅行計画の主導権はミレニアル世代
家族旅行の計画を立てる際、主導権を握るのはミレニアル世代ということもわかった。彼らがテクノロジーを活用して旅行の手配の48%を担当している。ただし、Z世代も47%が旅程を共同で計画し、ミレニアル世代と協力して旅行をカスタマイズしている。一方で、ベビーブーマー世代は計画に積極的に関わることは少なく、23%はまったく関与していない。
Z世代(1996~2012年生まれ)
ミレニアル世代(1980~1995年生まれ)
X世代(1966~1979年生まれ)
ベビーブーマー世代(1945~1965年生まれ)
旅行期間に関しては、ほとんどの家族が4~6日間の旅行を好んでいる。これはリラックスするには十分な日数であり、旅行疲れを引き起こすほどの長期間ではない。また、旅行予約に関しては、意見を調整するのが難しいかと思われる家族旅行にしては計画から予約までの期間が短く、半数以上(51%)が出発の1カ月以内に旅行を予約している。
一方で、宿泊施設の選択肢は、家族そのものと同じくらい多様である。49%の家族がホテルを選び、36%がリゾートを選んでいる。約25%の家族は旅館や民宿、ツリーハウスなど、滞在先の文化に浸れる施設を好んでいる。どのタイプであっても、手頃な価格(41%)、観光地への近さ(29%)、施設内での便利な食事(27%)が重要な選定基準となっている。
宿泊施設の選好も地域によって異なる。中国では伝統的な民家や歴史的建造物を利用した宿泊施設が人気であり、タイの家族連れは海辺での豪華なヴィラやリーズナブルなビーチハウスを好む傾向がある。韓国では、友人や家族の家に滞在したり、地元の生活様式を体験できるゲストハウスが選ばれることが多い。
表は、11市場の家族が最も好んだ宿泊施設を並べたもので、日本は平均よりもホテルを選んでいる家族が多く、ニュージーランドやオーストラリアはモーテル(自動車運転者向けの廉価な宿泊施設)、インドやベトナムは船を好んでいる。
家族連れの旅行で重視されることは?
家族が旅行先を選ぶ際に重視する項目には、安全性(46%)、手頃な価格(39%)、あらゆる年齢層が利用しやすいこと(30%)が挙げられる。環境の持続可能性(13%)や文化的な体験(13%)も評価されるが、優先順位は低い。
42%の旅行者が国内旅行を好み、移動距離が短く現地の文化に精通していることを利点として挙げている。一方、39%の旅行者は新しい体験や異文化との出会いを求めて海外旅行を望んでいることもわかった。
最後に、家族連れに注目の旅行先を紹介する。海外の人気旅行先については、ブッキング・ドットコムでの検索ボリュームに基づき、2024年に最も人気のある場所として特定された場所。海外のトレンド旅行先は、2023年と2024年の検索ボリュームの前年比変化を分析して決定している。
人気とトレンドの旅行先、双方の1位となっているのが日本であることに注目したい。
人気の旅行先1位は東京で、5位にも大阪が入った。豊かな文化とエンタメの融合が日本を代表するこの2都市の魅力となっている。オーストラリアのゴールドコーストとシンガポールは、家族向けの多様なアクティビティが楽しめる。バリ島からは、スミニャック、クタ、ヌサドゥアの3カ所が選ばれ、いずれもラグジュアリーなリゾートを提供する。一方、ドバイはその未来的なアトラクションが旅行に変化を加える。ロンドンやパリのような古典的なヨーロッパの都市は、その豊かな歴史と近代的な利便性で家族を惹きつけ続けている。
また、トレンドの旅行先では浦安が1位に入っている。これはもちろん没入型テーマパークとして人気の東京ディズニーランドと東京ディズニーシーがあるからだ。トレンドの2位には、今年初めに落成式が行われ、世界的な注目を集めたヒンドゥー教寺院のラム・マンディールがあるインドのアヨーディヤが入った。バリのウルワツは、その絶景で家族連れを魅了する。一方、アゼルバイジャンのバクーは、F1グランプリなどのイベントを通じて、歴史ある街並みと現代的な興奮が融合した場所となっている。
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