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観光立国タイの新たな一歩、同性婚法制化が年3000億円の観光収入増と予測。雇用増への影響は?

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20251月、タイは同性婚を認める法律を施行する。アジアでは台湾、ネパールに次いで3例目、東南アジアでは初めてのことだ。この歴史的な動きは、観光業に多大な影響を及ぼすと期待されている。OTA「アゴダ」を運営するAgoda Company Pte. Ltd.の調査によれば、同性婚法制化によって施行後2年間で年間400万人の新たな外国人観光客をタイに呼び込み、観光収入は年間約20億ドル(約3000億円)増加する見込みだ。

タイはすでに世界有数の観光地であり、LGBTQIA+観光市場においても強い存在感を示している。LGBTQIA+観光客は全世界の旅行者の10%、消費額の16%を占め、年間2000億ドル(約30兆円)規模と推定される市場であるが、この法改正によって、タイは「すべての人を歓迎する国」としてさらに魅力を増し、同市場でのシェア拡大が期待されている。

なお、LGBTQIA+とは、レスビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、クェスチョニング(クィア)、インターセックス、アセクシュアルの頭文字にその他の多様な性を包含するという意味で+をつけたもの。

 

法制化がタイ観光業の旅行者数、消費額にもたらす影響は?

タイを訪れる外国人観光客は、2023年に2800万人(世界11位、東南アジア1位)だったが、2024年に3500万人、2026年には4000万人に達すると予測される。そして、同性婚法制化はそこにさらに年間400万人の観光客を追加でもたらすといわれている。

同様に、観光収入の増加も見込まれる。2023年のタイの観光収入は1.2兆バーツ(約5.2兆円)、2024年は1.8兆バーツ(推計値・約7.9兆円)とされているが、同性婚法制化から2年後には、通常の伸びに加え、年間670億バーツ(約3000億円)が増加すると予測される。この増収分は宿泊244億バーツ(約1084億円)、飲食156億バーツ(約693億円)、小売122億バーツ(約542億円)、国内交通68億バーツ(302億円)、娯楽・医療サービス88億バーツ(約391億円)に分配されると見られる。

さらに、152000人のフルタイム雇用が創出され、その半数は観光業界内、残りはタイ経済全体に貢献する形となる。この影響はタイの国内総生産(GDP)の0.3%押し上げに相当する。

 

LGBTQIA+観光市場へのアピール

同性婚法制化はまた、デスティネーション・ウェディングやプライドイベントの開催促進につながり、観光業をさらに活性化させるだろう。すでにタイは、LGBTQIA+コミュニティに対する寛容さで知られており、タイ人の68%LGBTQIA+であることをオープンにすることを支持している。また、調査によれば、LGBTQIA+観光客の43%は、彼らの権利を支持しない国への旅行を取り消しており、同性婚法制化が同市場でタイの競争力を高めると考えられる。

加えて、タイはワールドプライドのような国際的イベントをアジアで初めて招致することも視野に入れており、これが経済的利益とLGBTQIA+権利の認知向上に大きく寄与すると期待されている。

このように、タイの同性婚法制化は、観光業における重要な転機となる。LGBTQIA+コミュニティを受け入れる姿勢を明確にすることで、タイは包括性と平等を推進しながら、国際的な観光地としての地位をさらに高めるはずだ。同じアジアの日本としても、見逃せない動きとなるだろう。

 

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