データインバウンド
2024年1-9月の国際観光客数11億人突破、観光収入も大幅増。欧州などで2ケタ成長
2024.12.09
やまとごころ編集部UN Tourism(国連世界観光機関)は最新の「世界観光バロメーター」で2024年第3四半期(1~9月)の世界の観光動向を発表した。それにると、2024年1月から9月までの間に、約11億人の観光客が海外旅行に出かけ、観光業はコロナ禍前の水準の98%まで回復した。観光業は依然として経済、地政学、気候変動などの課題が存在する中で、年末までに歴史上最大の危機からの完全回復が見込まれる。
世界の旅行者数、中東、アフリカ、欧州で2019年水準超え
北半球の夏季シーズンは総じて好調だった。ヨーロッパをはじめとする主要市場での需要回復、アジア太平洋地域の観光地での継続的な回復、航空便の増便やビザ手続きの簡素化に支えられ、2024年第3四半期には世界の国際観光客到着数(以下、到着数)はコロナ禍前の98%に達した。
中東は2019年同期比で29%増と引き続き記録的な成長を遂げ、ヨーロッパ(1%増)やアフリカ(6%増)も2019年の水準を上回った。アメリカ大陸はパンデミック前の97%(2019年比3%減)まで回復した。
また、アジア太平洋地域は2019年同期比85%(15%減)の水準に達した。2023年に中国で海外旅行が解禁されて以来、着実な回復を見せているものの、到着数の戻りにはまだばらつきがある。
世界全体では、111のデスティネーションのうち60カ所が2019年の到着数を上回った。 この期間の到着数で最も好調だったのは、到着数が2倍以上になったカタール(対2019年比141%増)、アルバニア(77%増)、サウジアラビア(61%増)、キュラソー(カリブ海に浮かぶ島 48%増)、タンザニア(43%増)、コロンビア、アンドラ(ともに36%増)だった。
国際観光収入は大幅増、日本は59%増、欧州など2桁成長を記録
国際観光収入の面でも、データが得られる43カ国のうち35カ国がコロナ前の水準を上回り、多くの国で2019年比で2ケタ成長(現地通貨ベース)を記録している。この成長率は、ほとんどのケースでインフレ率を大きく上回った。
特に顕著な成長を見せたのは、セルビア(99%増)、パキスタン(64%増)、ルーマニア(61%増)、日本(59%増)、ポルトガル(51%増)、ニカラグアとタンザニア(いずれも50%増)だった。
観光収入が世界的に多い国では、日本(59%増)、トルコ(41%増)、フランス(27%増)などが2024年9月までに2ケタ成長を記録した。スペイン(36%増)、イタリア(26%増)も8月までに好調な成績を示した。また、6月までの数字ではイギリスが43%増、カナダ35%増、オーストラリアが18%増となっている。世界最大の観光収入国であるアメリカでは、2024年9月までに7%の伸びを記録した。
重要性が増すインドの国際観光支出、81%増
観光支出データにおいても、主要市場での成長が目立ち、特に、ドイツ(2019年同期比35%増)、アメリカ(33%増)、フランス(11%増)といった大規模な旅行の発地市場(ソースマーケット)で顕著だった。また、イギリス(46%増)、オーストラリア(34%増)、カナダ(28%増)、イタリア(26%増)が2024年6月までのデータで力強い成長を記録している。インドでは、2024年6月までのデータでアウトバウンド支出が81%増加し、重要性を増す市場としての存在感を示している。
2024年末までに、完全回復への見通し
国際観光客到着数は、2024年末までには、2019年の水準(14億6100万人)に達する見込みである。デスティネーションの多くでは2023年中に、あるいは2024年になってコロナ前の入国者数をすでに上回ったが、 北東アジアと中東欧の一部ではまだ回復の余地がある。
2023年と同様に、2024年も国際観光による輸出収入(観光収入と旅客輸送)が好調だ。これは、1回の旅行あたりの平均消費額(インフレの影響を除く)が増加したためであり、滞在期間が長くなったことも一因となっている。
ただし、観光業全体では、いまだ課題は残っている。輸送・宿泊料金の高騰や原油価格の変動は避けられないし、 世界各地の大きな紛争や緊張は引き続き消費者の信頼感に影響を与えている。また、異常気象や人員不足も観光業の業績にとって重大な課題となっていることを忘れてはならない。
UN Tourismのズラブ・ポロリカシュヴィリ事務局長はこの結果を受け、「観光収入の力強い成長は、世界中の経済にとって朗報である。到着数を上回る観光消費額の増加は、多くの雇用や中小企業に直接的な影響を与え、多くの国で経常収支や税収にも寄与している」と述べた。
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