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中国の旅行会代理店への調査から見る、急速に回復が進む中国海外旅行の最新トレンドは?

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パンデミックで大きな打撃を受けた中国旅行市場が加速度的に復活している。中国を本拠とするマーケティング・ソリューション会社、ドラゴン・トレイル・インターナショナルの最新レポートによれば、2025年末までに市場は完全回復すると予想されており、旅行業界関係者にとって朗報といえるだろう。

今回のレポートは、中国の旅行代理店465社(旅行会社67%、OTA13%、カスタム旅行オペレーター19%、MICE旅行オペレーター1%)を対象に、2024年12月に実施された調査を基に作成された。ここでは、中国旅行市場の「現状」と「未来」を示す8つの重要な洞察を解説する。
(図版出典:Dragon Trail International, Chinese Outbound Travel Trade Survey)

 

1. 2025年末、アウトバウンド市場完全回復へ

調査データによると、66%の旅行代理店が2025年末までに中国の海外旅行市場がパンデミック前の水準に戻ると予想している。ただし、地域によって回復速度は異なり、アジア(中東を除く)が最も早く回復し、次いでヨーロッパ、北米が続く見通しである。

北米については航空便の回復が限定的であるものの、中国人旅行者による観光消費が堅調に推移しており、慎重ながらも楽観的な見方が示されている。

▶︎中国のアウトバウンド旅行市場全体が2019年の水準に戻るのは?(N=465)

(左より、すでに回復している、2025年前半、2025年後半、2026年、2027年、その他)

 

2. 中国経済・旅行者の購買力に期待、それでも価格は重要

回答した旅行代理店の71%が2025年の経済環境、68%が消費者信頼感が、中国の海外旅行に好影響を与えると考えている。ある旅行代理店は、「国内経済は徐々に回復しており、人々はより多くの遊休資金を持っている」と語り、彼らの購買力に期待しているという。

一方で、45%は旅行コストがマイナス要因になると回答し、競争力のある価格設定や割引の必要性を強調する。

また、51%が国際政治の不安定さを最も大きなマイナス要因に挙げており、紛争や緊張が安全志向の旅行者を遠ざけているとしている。

「国際関係の発展に伴い、多くの国が中国人に対するビザ手続きをさらに簡素化し、手続き時間や必要書類を減らすなど、ビザ申請の敷居を下げる可能性がある。これは中国人観光客の海外旅行意欲を大いに刺激するだろう」と指摘する回答者もいた。

 

3. 若い世代、クルーズやラグジュアリー市場で存在感

調査対象となった旅行会社の43%が、2000年代以降の世代を中核顧客層の一部と捉えており、90年代以降の世代(68%)や80年代以降の世代(49%)とともに市場を牽引するとしている。若い旅行者は、島への旅行やラグジュアリートラベル市場において重要な役割を果たしている。特にクルーズへの関心が高まっており、タイや日本が人気とのことだ。

▶︎現在のアウトバウンド旅行顧客の年齢層は?(N=465)
(赤紫=2024年12月、ピンク=2024年7月)

 

4. 高まるシルバー世代の旅行需要

中国のシルバー旅行市場は急速に成長しており、退職者や高年金受給者を対象とした高付加価値商品が注目されている。この層は価格にはそれほどこだわらず、安全性や快適性を重視した質の高い体験を求めているため、こうした観点から特別な配慮を施したツアー商品を提供することで、この市場を開拓できる可能性があるという。

ある旅行代理店は、シルバー旅行世代について、「アウトバウンド観光市場が注目すべき新しいセグメントだ。この層は定年退職を迎え、黄金期を謳歌している。現在、高齢者グループ向けの観光は、広大な未開拓市場といえる」と話した。

 

5. 中国での見本市・FAM旅行が効果的

中国の旅行代理店は、海外での展示会に比べて中国本土や香港で開催される旅行見本市への参加率が高く、旅行代理店の多くが重要な情報収集とネットワーク構築の場として活用している。また、FAMトリップを通じて商品を深く理解することの重要性を強調する。

▶︎2024年に参加した見本市(左)と2025年に参加予定の見本市(右)(N=465)
 (上から広州国際旅行見本市、上海旅游産業博覧会、北京国際観光博覧会、中国出境旅游交易会、中国国際旅游交易会など中国国内で開催される旅行博が並ぶ)

 

6. ラグジュアリー旅行、世代でニーズ多様化

中国のラグジュアリートラベル市場は一枚岩ではない。主に60年代以降、70年代以降、90年代以降という3つの世代別グループに分かれており、それぞれ異なるニーズを持っている。例えば60年代以降の退職者層は「ワンストップ型クルーズ旅行」や文化体験を好む一方、70〜80年代以降の高所得層はゴルフや温泉を求め、90年代以降の若い世代は北極・南極ツアーなどを好む。

旅行代理店の担当者からは、「観光客があまり訪れない、自然が美しく、独自の文化を持つ国々の人気が高まっている」「富裕層の旅行者は、個別のニーズに応じた旅を求めるようになっている。旅行のテーマを深掘りしたり、あまり知られていない特別な場所を目的地とした旅行商品を開発するのが良いだろう」といった声が聞かれた。

 

7. SNSなど新しいプラットフォームが、旅行商品の販売チャネルに

旅行代理店によれば、「抖音(Douyin)」(69%)、「小紅書/RED(Xiaohongshu)」(56%)、「Ctrip」(56%)の3つが、アウトバウンド旅行商品で最高の販売転換率を提供しているとしている。Ctripは57%が利用する最も人気のある販売プラットフォームで、さらに半数近くはOTAの「同程旅行(Tongcheng)」とソーシャルメディアプラットフォームの抖音(Douyin)と小紅書/RED(Xiaohongshu)で販売している。また、WeChatのグループと個人アカウント(47%)、オフラインのイベント(45%)も販売転換率が高い。

▶︎アウトバウンド旅行商品販売チャネル(青)と販売転換率が高いチャネル(赤)(N=465)

 

8. 中国語サービスはホテル選びで依然として重要

中国の旅行代理店がパートナーホテルを選ぶ際、ホテルの環境(59%)と特色(58%)に最も注目するが、次に重要なのは中国語のサービスで、46%が考慮し、25%が決定的な要素だと回答している。ちなみに、Dragon Trailが2023年4月に実施した顧客調査によると、消費者が海外のホテルを選ぶ際、中国語を話すスタッフは(立地に次いで)2番目に重要な要素であり、51%が選択していた。

 

中国旅行市場は、パンデミックの影響を乗り越え、力強い復活を遂げようとしている。ここで示された洞察を活かし、変化する市場のニーズを捉えた商品開発や販売戦略を展開することで、旅行業界はさらなる成長を遂げることが期待できるだろうと、レポートは結んでいる。

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